第48話 演奏会

モーテ「こういう時にどこの国にも属さない土地があるって言うのは助かるな」


国同士の衝突ならなんやら、そこから態勢を立て直し機能している都市…そこを国境とするとどこの国にも属さない浮いた土地というのがかなり多く存在する。俺は今そこにいた。


モーテ「アイス衝撃ショック


俺はそこに連れていた竜の合成獣キメラを氷漬けにし、地面に衝撃ショックで穴をあけて埋めた。わかりやすいようにマーキングしておく。と言っても魔力を少し入れるだけだが。

そうして荷物を処理した俺は次の国に向かった。帝国に次ぐ大国。デューエ。あの人望の無いおっさんの国だっけか?

国境と思わしきところもあるが…こっそり忍び込む。大国なだけ一応ちゃんと警戒はされているがざるである。そこら辺の通る人に紛れるか夜に突破するか…いくらでも手段はある。今回は夜に忍び込んだ。ノナイウからほぼずっと移動しっぱなしで疲れていたので少し休みたかったのが本音だ。


モーテ「なんだ?」


忍び込んで思ったのは妙に都市が飾りつけされていることである。なんか祭り?

その謎は夜が明けて解けた。


モーテ「演奏会…こんな大々的にやるのか」


かなり有名なところが演奏会でデューエの各地を回るらしい。それでか…

ちょっと聴いてみたい…音楽というものがあるのは知っていたが実際に聴いたことはアンコに聴かされた時くらいだ。今日の演奏会の開催地や時間をそこら辺の人の会話から盗み聞きして向かった。結構遠かったが何とか…いや本当に何とか着いた…大きい国だ。


モーテ「ここか…ローシェス音楽隊演奏会」


人がごった返している。相当な規模だ。会場も大きい。一応人の流れに沿っていると…


「はい、チケットを見せてくださ~い」


チケット?持ってない…みんな見せている。


「あれ?僕はチケットない?両親はいる?」


話しかけられてしまった。


モーテ「はぐれちゃって…」


適当に誤魔化すことにしたが…


「ああ、この人混みだからなあ…迷子用の場所があるからそっちに行こう。すいません、この子送ってきます」


なんか連れていかれた。逃げるかしようと思ったのだが…


「じゃあここで待っててね」


そこには同じように子供がいた。年下くらいの子が多いが俺より年上だろうなという子も多少いる。


「うえ~ん!」

「まま~」


泣いてる子もいた。

どの子も年に関わらず寂しそうだ。係員がそれを宥める。


弱い…


こういう普通の子を見ているといかに自分が化け物か思い知る。既に…親の死も乗り越えている。あまりに共感できない。

ここにいても時間の無駄だな。


俺は気配を消して迷子の待機所を抜け出した。


「あれ?あの子どこいった?」






モーテ「忍び込めはするが…席も決まってるのか」


みんなが自分のチケットを見ながら座っていくのを見て察した。当然俺の席はないだろう。どっかで一人襲って人形ドールで操ってそれに隠れるか。

そのためにしばらくは壁際、トイレ近くに潜むことにした。

潜みながら本を読みながら観客の様子を見ながら…としていると会場が暗くなった。それと共に客が静まり返る。


それと同時にこみ上げるような音色が鳴り響いた。


モーテ「おわ…すげえな」


まさに圧倒された…体の底から響く。

聴き惚れていたらそれなりの時間が経っていたらしい。休憩時間となった。


モーテ「やば、ずっとここにいるのは不自然だ」


急いで動く、どこか…適当な席…


これだけ人がいるところだからだろうか。無意識に人への警戒心が薄れていた。

だから不用意に近づいてしまった。


モーテ「!?」


???「!」


今すれ違った人…つい振り向くとあっちも俺の方を見ていた。


???「君…」


中性的で細身…だが明らかに

強い…なんでこんなところにいるんだ?こんな奴が。


???「名前は?」


モーテ「なんですか?いきなり」


疑われまいと言い返した瞬間…


???「音撃サウンドショック

モーテ「黒菊」


ヤバい気がしたのでとっさに手の部分を弾いた。持っていたのは…笛?


モーテ「しゃあない…ファイア


多くの観客に向けて火の弾を無差別に放つ。


???「響殺インヴァースフェイズ


俺の放った火の弾がまとめて消された!?

だが…


???「クソ」


俺は逃げ切って既に会場を後にしていた。





???「皆さん怪我はありませんか!?」


警備員が集まってきた。


「なにがありましたか?…ってソノ大将!?」


ソノ「ちょっとね…侵入者がいた。しかも僕のことを知らない。相当世間に疎いか…国外の人間か」


「…すいません我々がいながら」


ソノ「いや…気づかなくて良かったよ」


「?」


ソノ「とてつもなく強かったからね」


「ソノ大将が言いますか…」


ソノ「実際逃げられてるし。特徴だけ伝える。9~11歳ほどの子供、黒い剣を持っていて黒髪。服装も黒っぽい上着に紺のズボン。着替えられるかもだけど。あと…」


「あと?」


ソノ「いやなんでもない。軍の方にも言っといて」


「わかりました」


異常なほどの死臭がする、体の使い方が常人とは違う。雰囲気や目つきが違うって言っても分かる人ほとんどいないよなあ…


ソノ「クソ、せっかく演奏会を楽しんでたのに嫌なもの見た」





モーテ「あんなのがざらにいる国とは思いたくないんだが…3帝ほどじゃないけど…変わった魔法使うし。なんだったんだあれ?」


――あとがき――

魔法の漢字と英語はかなり雰囲気です。元の英語とは違うとか結構ざらです。

インヴァースフェイズとか本当は逆位相ですから(笑)。

ソノ大将登場。この人も好き~。って言うか名前がちゃんとある登場人物はみんな好き~。


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