第44話 故郷参り

1年と少しが経った。その間はほとんど城で過ごした。カステは既にどんよりとした空気となっていてかつての国の首都があったとは思えない。

使える魔法も増えた。料理も上達。国の関係とか位置とかもわかった。

じゃあまずどこに向かうか?

ゼアたち、あの化け物が生まれた帝国…と思ったがまずは故郷に顔を出してみたくなった。俺に人として残っている最後の感情かもしれないし感傷かもしれない。


モーテ「けりをつけに行く」


そのためには普通に行ってもいいのだが…ルートも少し遠回りをする。

というわけで…


モーテ「シュラの森。久々に来た」


ここを通る。かなり久々だ…かといって危険かと言われるとそうでもない。

今なら竜にも勝てるだろう。

シュラの森を走っていると…軽く異変に気付いた。


モーテ「これ…生態系が少し変わったか?気配が少ない」


そう思った瞬間に気づいた。前まで安全だったエリアに何かいる。


モーテ「人間なんかより遥かに読めない、そして強靭な肉体。新顔がでかい顔してるのか」


現れたのはワニ?トカゲ?のような…水辺が近いわけでもないのだが…突然変異か?口を開けば俺を飲み込めそうなほどだ。

鱗も堅そう。化け物だな。


モーテ「もうちょっと軽いやつで実践の勘を戻したかったけど…まあ…」


以前とは違う。逃げずに叩きのめす。

化け物が口を開けて飲み込もうとしてくる。


モーテ「黒菊」


躱して剣を振るが…やっぱ硬い。浅く傷が入っただけだ。

尻尾!ハンマー見たいな尻尾だな。


モーテ「黒百合」


尻尾を弾き返す。そして…


モーテ「黒蘭」


一気に切り刻む。それでも硬いって厄介だ。

化け物が押しつぶそうとしてくる。


モーテ「斬撃スラッシュ


魂を使わない魔法だが…十分斬れた。これだけの傷口が開けば…


モーテ「黒蘭」


一気に傷に剣戟を叩き込む。

出血で十分死ぬと思うが…


尻尾が俺を叩き潰そうとしてくる。


モーテ「やっぱ動くよね、身体強化ボディバフ


俺は黒百合で弾き返すのではなく純粋に受けきった。


モーテ「よしよし…完璧」


以前シュラの森にいた時は絶対勝てないだろうやつを今ではあしらえている。人間世界で培ったものは大きい。それでもこの森のひりひり感…これは味わえない…

そして化け物はさっきの傷が致命傷になったのか動かなくなった。


うず…


ちょっと解体したい…別に急ぎじゃないし…いいよね?


してみた。


モーテ「鱗は竜の方が硬いし魔力も流せない。ただ肉が分厚い。斬ったとき鱗が硬いと思ったが肉の分厚さもあったっぽいな」


あとは内臓が大きかった。ただデカかっただけっぽい。まあ動物としては十分脅威だな。


モーテ「さてさて…森の生態系一個ぶっ壊したけど…エルタはどうしてるかな?」


エルタの領域のある所に行く。

やっぱ一気に雰囲気が変わる領域がある。この感覚があるってことは俺も鈍ってないなと思う。


そして気づけば目の前にいる。


モーテ「久しぶり…」


俺は強くなった…でもエルタには勝てる気がしない。圧倒的な存在感…


モーテ「あっ……?」


エルタはすぐさま消えてしまった。でも消える直前…ほんの少しだけ寂しそうな顔をしたように見えた…


モーテ「エルタ?」


気になったが…戻ってくる気配はない。

仕方ないか…インジオに向かおう。


この森を抜けたらいよいよ故郷の国である。

あっという間に森を抜けれてしまった。朝に出発してまだ日が落ちてない。


モーテ「流石に明るいときに入り込むのはな…」


人目に付きやすい。夜まで待つか…

少し時間が出来たので持ってきておいた本を読んで時間を潰す。


そして…完全に夜になったときに侵入。そして…


モーテ「適当な家を襲って、風呂とか使わせてもらお」


さっくりと一家を滅ぼす。一首都を落としてるんだからこれくらい朝飯前だ。言うて男一人だけだったが。風呂に入って調理場をあさって…え?


モーテ「全然入っていない…」


全然食料が無い…これは困った…城で過ごしてるときは食料がなくなるたびに他の都市に行ってかっぱらっていたが…(そのために収納ボックスを死ぬ気で練習した)まさかここにきて…料理しないのか?こいつ。


モーテ「収納ボックス


森で少し狩りをしといてよかった。

収納ボックスから肉を取り出す。


調理器具…少ない…


モーテ「創造クリエイト


良し。まさかこんなくだらないことで魔法を使うとは…

次からは最低限を収納ボックスに入れとくか?


チラッ


さっき殺した死体…腐臭がする前に…


モーテ「アイス


凍らせる。だいぶましになるだろう。

さて…ここで寝てもいいけど…体力はまだ残ってる…動こう、夜のうちに。


モーテ「人通りは少ないってだけでないわけじゃない。気をつけないとなあ…」


この時間に子供が出歩いていたら流石におかしい。まあ見つかるほど間抜けじゃないけど。


さっさと行く。目的地はカラム国に滅ぼされたが俺がカステで暴れたことによるカラムの軍事力低下に伴い、インジオ国が奪還した俺の故郷。ハイム都市。

こうしてたどり着いてみると…


モーテ「廃れたなあ…」


カステを廃らせた俺が言うのもなんだけど…


歩き回ってみるが何も沸いてこない。潰れた自分の家を見ても…もう…


モーテ「あれは俺が弱かっただけ…仕方ない」


今はもう…割り切れてる。弱肉強食の世界で…恨み言は言えない。


モーテ「いいかな…少しこの国を見て回ろうか」


俺は故郷のハイムを立ち去った。


――あとがき――

少し平和な回(当社比)


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