第41話 足りない1着

左腕を切り落としてきたとき…本当に驚いた。そんな判断がすぐできたのかと。

最善の動きだったと思う。やられたって思った。でも…次が遅かった。

そりゃそうだ…お前らに腹ぶち抜かれた俺は知ってる。

めっちゃ痛いだろ。

どうしてもそっちに意識が向く。だから俺への攻撃が遅れた。だから…痛む左腕を気にして、右への意識がおろそかになった。黒菊の残像へそのまま攻撃してしまうほど。防御ができないほど。


アンジ「ごめ…」


魂が入ってくる。


モーテ「ふ―――――――――!」


魂もかなり削られた。身体的なダメージも…。

本だけじゃ知らない、わからない世界を見せつけられた。


モーテ「ここに籠ってばっかじゃだめだな…」


実際に経験して得るものは大きい…

でも今は…休ませて…


血を洗い流すために俺は風呂に向かった。


モーテ「…人間世界に出ていく?怪しまれないか?」


休みながらも考える。世の中のこと、魔法のこと、剣術や体術…大体のことは図書館を取り込んだことで分かると思っていた。しかし…まだ全然読めてないのもあるが…思ったよりも感覚的に分かる必要がある。

学校…は絶対無理として…


モーテ「あ~どうしよう…っていうかまずはこの攻めまくられてる状況を何とかしたいけど…」


それは返り討ちにしまくってればいつか解決するか。エルタとか多分そうだし。


モーテ「ああもう無理…寝よ」


風呂から上がって俺はすぐに布団に入った。





その数日後…


デューエにて…


ソノ「アガンテ中将が帰ってこないと…」


部下「はい…」


ソノ「やはりカステの崩壊というのはそれなりの理由がありそうか…」


部下「どうします?ソノ大将が行きますか?」


ソノ「いや…情報を集めよう。そう簡単に手を出すべきではない」


この時のソノの判断は正しい。さらに数日後。驚愕のニュースが入る。



それは帝国にて…


皇帝「作戦に出た、アンジ、オンブ、ロッティ、ゼアが帰ってこない」


上層部は大騒ぎだった。少数精鋭としては最高戦力をたった1人のために派遣しその部隊が帰ってこないのだ。特に3帝が全員いなくなるというのは他国への抑止力がいなくなることに通じる。

現にカラム国が帝国に攻めようとしなかったのはアルソ、ロッティの遠距離組とグリレットの相性がかなり悪いからというのが理由としては大きい。3帝の不在はあまりにも大きい痛手である。それに加え暗部トップのオンブも帰ってこない。

頭が痛い事態である。


国民に話すか?不安を煽るのでは?他国に漏れたら?ここにきて帝国はモーテに構っていられなくなった。

その結果、カステから、モーテから手を引くことになる。


そして、上層部の迷いは無駄で3帝の不在は流石に隠せない。死は確認していないものもそこまで日を経たずに国民にも知られることとなる。他国にも当然漏れた。隠すなんて選択肢はなかった。


ソノ「帝国の3帝も死んだのか…これはいよいよ手を出せる話じゃない…」


デューエ国はこのソノの判断によりカステから撤退。アガンテを失ったとはいえ最小現の被害で済む。


帝国3帝の死とカステの崩壊についてはカラム国と隣り合っているインジオ国(モーテの故郷ハイムもこの国)も相当頭を抱えた。カラムには恨みがある。攻め入ってしまいたい。だが…3帝の身に何かあったというのは尋常じゃないことである。デューエほどの大国でもないインジオ国は動けなかった。何せモーテに関する情報も持っていない。カステが滅んで、3帝すら帰ってこない土地になったというくらいしか情報がない。兵を出し渋るのは当たり前だった。


そんな中…ノナイウ国ではある命令が下されていた。


ジェン少将にカステの調査を命じる







場面はとある家へ…


???「お父さん…」


???「…アンか久しぶりだな」


アン「うん…その…お母さんが…」


???「信じない。帰ってくる」


アン「私だって信じられない…でも…でも…何日も連絡なしに帰ってこない人じゃない…」


???「…」


視界にある服が飛び込んできた。


アン「お父さん…その服…新作?見たことないけど…」


???「ああ…」


アン「そのサイズ…雰囲気…お母さん用だよね…」


???「だったんだけどな…」


アン「…!」


アン(今の一言で分かった。多分、帝国民が知る前に、わかってたんだ…お母さんのことを一番知ってる人だから。帰ってきてないということが帰ってこないということだと…)


アン「ねえ…この服さ…私が着てもいい?多分サイズとかそんなに変わらないと思うし…」


???「どうして…?」


アン「その服見るたびに苦しくなるでしょ…私が着るから…辛くなくなるまで…」


???「そうか…いいぞ」


アン「うん…」


???「ありがとう」


アン「うん…ご飯食べてないでしょ?何か作るね」


???「ああ…」


アンがキッチンに向かう。

そして…残された俺はアンジの部屋に向かった。クローゼットを開ける。

とても丁寧に、皴一つない服がかかっている。全部…全部俺が作った。

だからわかる。わかってしまう。クローゼットの違和感に目がいく。


1つだけ、何もかかっていないハンガー


ぼやけてそれ以上見ることは出来なかった。


――あとがき――

(´;ω;`)


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