第28話 帝国緊急会議

ゼア「はあ、はあ、はあ…」


私はモーテ君から逃げてから休まず帝国まで走り抜けていた。乗り物も使ってだがかなりの距離だ。流石に疲れた…がまだやることがある…


ゼア「はあ、緊急連絡。暗部所属、ゼアの名において緊急会議を開きます。指定の時間と場所に集合してください」


私は急ぎで暗部基地に入り魔法通信具を使って通信。あて先は情報部。ここに伝えれば勝手に該当者に伝えてくれる。

はあ…私も準備しよう。もたもたしてる暇はない。でもちょっとだけシャワー浴びよ…

私は温かいシャワーを浴びて汗を流した。


情報部「…ということで緊急会議が開かれます」


???「え~めんどくさいな~。暗部が緊急会議開くの珍しいね。誰?」


情報部「ゼアです。かなり息が切れていました」


???「ゼア!?ゼアちゃんのこと!?」


情報部「ゼア?」


???「カステにスパイしてた子?」


情報部「そうです」


???「そうか~!あの子の開く会議なら行かなくちゃね~。ロッティには言った?」


情報部「伝えてあります」


???「了解、連絡ご苦労様」


情報部「はい、失礼します。アルソ様」


通信が切れた。


アルソ「ゼアちゃんが緊急会議か…成長したねえ。でも…暗部の開く緊急会議か…また波乱が起きそうだなあ」


アルソは歩きながらほんの少し、不安と楽しみの入り混じった表情を浮かべた。



ゼア「ふう…行こう」


会議場に向かう…ん?

何か見られてる…でも、これは好奇心の目だな。私が察知できないってなると…

ロッティさんかアルソさんだな…


ゼア「もう…」


ただその瞬間遠くの建物の上が光った。


わざとだな…ロッティさんか。

そっちの方に走っていく。遠くはあったが向こうも来てくれたので時間はかからず合流できた。


ロッティ「久しぶり、ゼアちゃん」


ゼア「お久しぶりです。もっと普通に会えません?遠視スコープされる気になってください」


ロッティ「気づける時点ですごいんだよ。まあそれはそれとしてさ、どうしたの?」


ゼア「それは、会議で…」


ロッティ「まあそりゃそうだけどさ、てか…めっちゃ疲れてない?大丈夫?」


ゼア「ほぼ休みなしで帝国まで走ってきましたから…」


ロッティ「まじ?おぶってこうか?」


ゼア「遠慮します」


この人の身長で私をおぶっていくのは…


ロッティ「え~ゼアちゃんくらいかわいい子ならいいのに…」


ゼア「勘弁してください。緊急会議におんぶされた状態で登場するのは…辛いです」


ロッティ「そんな…まだ誰もいないって、アンジさんとか絶対おそ…」


ゼア「どうしました?…あっ」


ロッティーさんの目線の方を見ると…


アンジ「誰が遅いって?」


いつの間に…ふわふわ浮かびながらついてくる女性がいる。びっくりした。


アンジ「相変わらず小さいねえロッティ」


ロッティ「怒りますよ?アンジさん。ていうか早いじゃないですか。旦那さんはどうしたんですか?」


アンジ「結婚式の衣装の依頼でここ最近構ってくれない」


ロッティ「いい年してなにを…」


アンジ「…」


ゼア「え?え?」


突然、私の体が浮いた。


アンジ「ゼアちゃんは運んであげる」


ロッティ「え?うちは?」


アンジ「頑張れ」


ロッティ「え~!?そんなあ…」


アンジ「じゃあね、いこっかゼアちゃん」


抵抗する気力もない私はそのままアンジさんに運ばれていった。


ロッティ「くそ~まって~」


そして飛んでる私たちを見失わない位で走るんだからすごい。それでも差はついていったが。


アンジ「はい、到着~」


ゼア「ありがとうございます」


アンジ「い~よ。緊急会議なんて珍しいしね」


会場にはすでに人がいる。皇帝は来てないか。重役が揃ってる。


アンジ「まだアルソも来てないか」


それでも…この人は暇じゃないはずなのにな…もういるのか。


???「ゼア、わざわざ暗部権限の緊急会議をするほどなんだろうな?」


暗部責任者…オンブさん…いや、師匠。


ゼア「間違いなく」


オンブ「そうか、ならいい」


口数の少ない人だがまだ若い私に緊急会議を開く権限をくれたのもこの人だ。並の暗部はこの人を通さないと開けない。


アンジ「アッ来たね、お騒がせ2人組」


ロッティ「誰がだ」

アルソ「この子と一緒にしないでください」


相変わらずの仲が悪いのか良いのか…


アルソ「ゼアちゃんお久~」


ゼア「久しぶりです」


アルソ「お疲れ様。カラムはどうだった~?」


ゼア「仕事で行ってたので…いいシャンプーはありましたよ」


アルソ「相変わらず綺麗好きね」


他愛もない話。昔お世話になったから少し気が緩む。


アルソ、ロッティ、アンジ、オンブ「「「「!」」」」


4人が反応した。ってことは…

皇帝も来た。

みんなが頭を下げる。


皇帝「ああ、よいよい緊急なんだろ?座ろう」


威厳と圧がある。世界一の大国の頂点にいるだけはある。


皇帝「3帝が揃っているのは珍しいな。アンジ、アルソ、ロッティ」


アンジ「まあ緊急会議ですし…」


アルソ「ゼアちゃんの招集だからね~」


ロッティ「うちはなんだかんだ普段もちゃんと出てます」


皇帝「ふふ、では早速本題に入ろう」


ゼア「かしこまりました。本日の招集をかけた暗部所属ゼアです。よろしくお願いします」


皇帝「うむ、何があった?」


ゼア「手短に言うとカラム国において最大の障害とされていたグリレット大将の死亡を確認しました」


「「「「「「「「「!!!????」」」」」」」」」


やっぱ驚くよね…


アルソ「言い方的にゼアちゃんが仕留めたわけじゃないね。病死とか?」


ゼア「いえ、信じがたい話なのですが…」


私はシュラの森の調査のこと、モーテ君の存在、モーテ君がハイムの生き残りだったこと。森での戦闘から帰ってきたのがモーテ君でグリレット大将の首を持っていたことなどを話していった。


皇帝「…」


話が終わっても誰も何も声を発さない。それだけ異常事態だ。私も話してて未だに信じられない。


貴族「スパイがばれて我々を翻弄させるための自作自演…」


オンブ「ねえだろ、ゼアの仕事だ」


アンジ「グリレット大将をそのモーテって子が仕留めた瞬間は見れてないのよね?」


ゼア「はい、結果だけです。具体的な内容は見ずに他の兵と共に森の外に出てしまったので…というか正直な話、モーテ君が勝つとは思いませんでした」


アンジ「でしょうね。私もそうだわ」


皇帝「問題は我々帝国がどう動くかだな」


ゼア「はい、今すぐ帝国に害があるとは思えませんが…。モーテ君はこれからさらに力をつけると考えられるので…そうなると脅威です」


ロッティ「カラム国の戦力は超大幅ダウンだけど得体のしれない単体の別勢力が現れたって感じか。一番攻め落としたいタイミングだけど刺激はしたくない」


皇帝「ううむ…確かに一大事…」


貴族「オンブが潜入調査をするべきでは?」


オンブ「別にいいですけど、あのグリレット大将を倒した相手ってなると俺の腕じゃギリギリですよ。暗殺は得意ですが逆にそれが失敗したときの正面戦闘がしんどい。それこそ3帝レベルじゃないと」


確かに、師匠は相当強いが3帝はその上を行く。グリレット大将はその3帝に近かった人だ。リスクがある。


アンジ「モーテ君って剣を使うの?」


ゼア「そうですね、不思議な剣で変形したり消して取り出してとかできますが基本剣です。魔法も斬撃スラッシュファイアウィンドとか使います」


アンジ「う~ん、私が行ってみたい気持ちはあるけどそのスタイル相手なら…」


アルソ「私かロッティだね」


ロッティ「それもう調査じゃなくて戦闘じゃない?」


皇帝「いや、カラム国に手を出す前に最大の不安要素であるモーテを叩く。悪くないと思うぞ」


ロッティ「それはそうかも」


皇帝「どちらが行く?案内はゼアに頼もう」


ゼア「かしこまりました」


ロッティ「うち行きたい」

アルソ「行く」


ああ…これは…


ロッティ「忙しいでしょ。無理しないでいいよ」

アルソ「そんなことない。私の方が年も身長も上なんだし譲りなさいよ」

ロッティ「身長は関係ないし!」

アルソ「よしよし~」

ロッティ「撃ち殺してやる~!!!!」


ゼア「2人とも…ここで喧嘩は勘弁してください…」


オンブ「もうどっちも行けば?」


ゼア「さすがにそれは…」


アンジ「良いんじゃない?この作戦が成功した時点でカラムに打って出ることが出来るし。国1つ分の価値がある作戦だもん。そのまま潜入して戦いになったときに内部から襲ってもいいんだし。3帝を2人使うシチュエーションとしては間違ってないと思う」


ロッティ「え~」

アルソ「ロッティと一緒か~」


皇帝「いいだろう。アンジが取り仕切って軍をまとめとけ。いつでもカラムに出兵できるようにな」


アンジ「はい」


皇帝「ロッティ、アルソ、ゼアの3名にはモーテの抹殺任務を授ける。準備が出来次第実行しろ」


「「「はい」」」


皇帝「他に何かあるか?」


ゼア「ありません」


皇帝「良し、それではこれにて緊急会議を終了する」


――あとがき――

帝国動きます。

新キャラも盛りだくさんでした。3帝は前に少し出てきたけど覚えてるでしょうか?

オンブさんは結構好きなキャラ。


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