永遠

第26話 カウスト

???「なんだこれ…」


モーテによる大量虐殺とカステの崩壊が起こってまだ数時間。

俺は状況調査を任された。たまたま別地域にいたから無事だったのに。

ただ俺の目の前に広がる光景はあまりにも以前見たものとかけ離れていた。


カウスト「だめだ…脈を確認しなくても分かる…全員死んでる」


暗部として汚れ仕事もやってきた経験が告げる。生き残りはいない。

そうなると調査するべきは明確。


カウスト「なんだよ…あの城…」


以前カステに行ったときにはなかった巨大な城。

いや、最初から間違いなくあの城に犯人がいることはわかっていた。

それでも気が進まないのはプーゴの訃報、グリレットは未だ連絡がつかないということは聞いていたからだ。

あの2人の強さは知っている。だからこそ…


カウスト「あの2人を倒したかもしれないやつと戦うとか勘弁してくれ…」


出来れば侵入、潜伏調査で情報を持ち帰りたい。戦闘は避けたい。

そんなことを考えながら城の前までたどり着く。


カウスト「マジでデカいな…この位置…図書館やあの美味かった定食屋潰れてるな…」


思い入れのある場所が完全になくなってしまっている。そのことにダメージを受けつつ城の裏に回りこっそり忍び込んだ。と同時に悪寒がした。


カウスト(気づかれた…?感知か?嘘だろ?いや…この感覚間違いない…!)


すぐさま逃亡を図る。俺の直感が言っている。やばいと。しかし…


モーテ「付与エンチャント身体強化ボディバフ


カウスト「…遅かったか」


既に子供が目の前にいた。

何も言わなくても分かる。死臭がする。こいつだ…こいつが犯人だ。


カウスト「くそ…」


俺は武器を抜く。何とか逃げ切って…この城の感知機能だけでも…

それでも邪魔をする思考、疑問がある。


カウスト(本当にこんな子供が?)


目の前にしても信じられない。だがそんな疑問は次の瞬間、頭から飛んだ。


モーテ「いらっしゃい」


カウスト「っつ!?」


子供が俺を城の中に押し込んだ。そこも開くのかよ…


モーテ「もうちょっと休みたかったけど…歓迎するよ」


カウスト「もてなしはいらねえから帰してくれねえかな」


モーテ「それは…」


モーテが襲ってくる。


モーテ「無理です」


俺はその奇襲を防いだ。

それと同時に違和感を感じた。


カウスト(子供としたら破格だが…そこまで?か?)


少なくともプーゴを倒すほどの力は感じられない。


モーテ「ううん、思ったより手練れが来ちゃった?しかも1人?困るなあ…」


困るなあと言いながら攻めてくる。逃がす気はさらさら無いらしい。

だが俺は気づいてることがあった。


カウスト「おい、剣は使わないのか?」


今こいつは素手で戦ってる。だが、カステ中の死体ほとんどが剣で斬られていた。


カウスト「剣がメインだろ?死体を見てわかってる。奇襲にもなってねえよ」


逃げ切るのを目標にしていたが今は城の中。構造も分からない以上、目の前の敵を倒すのが一番確実。だからこそ不安を消したい。武器の位置が分からないのは厄介だ。

これは挑発じゃなくて武器を出させるための駆け引き…


モーテ「斬り殺されたいの?」


カウスト(そうじゃねえええぇぇ!)


口には出さないが突っ込んでしまった!子供じゃねえか本当に!


カウスト「おっと」


ほんの少しの気のゆるみを見逃さず攻撃してくる。連撃…心臓か!


モーテ「あらら…」


カウスト「ふうううぅぅ」


首に初撃、二撃目が心臓。踏み込むタイミングもほんの少し周りに目を向けた瞬間。

殺し慣れてる。こいつは子供じゃない。化け物だ。


カウスト「その動きができるほど殺した人間を…ほっとくわけにはいかない」


小さい剣を何本も取り出す。毒も塗ってある、掠れば…


モーテ「それはダメ、ファイア


カウスト「なっ!?」


別に魔法を使えることには驚いてねえ。驚いたのはあいつの狙い。完全に俺の武器を狙ってた。


カウスト「毒を熱で飛ばしたのか…どこでそんな知識…」


モーテ「とりあえずしっかり火を通せば大丈夫って食堂のおばちゃんが言ってたんで」


クソっ…

小刀を取り出す。一番得意な獲物…こいつはヤバいが…今のところ絶望的な差はない。どころか俺の方が強い。プーゴさんを倒したのは恐らく奇策でだ。シンプルな実力勝負で、殺す。


カウスト「身体強化ボディバフ


モーテ「うお」


斬りかかる、こいつ勘が良いのかよく避けるが…ギリギリだ、このまま攻める。


モーテ「っつ!」


掠りだした、血が飛ぶ。反撃の隙は与えない。小さい針を投げる。毒塗だが…


モーテ「シールド!」


致命傷への反応速度が尋常じゃない。


モーテ「ん?」


俺はシールドをそのまま突き破って刺しに行った。

心臓…とはいかなかったが腕!多分上がらない!こっからの展開が一気に組み立てやすく…


モーテ「いってえ…ウィンド


範囲攻撃…だが、魔法を使うまでもない。悪あがきだ。

俺はそのまま切り分けて突き進む。

こいつの危機察知能力は凄まじいが…しっかり組み立て、追い詰めれば…


モーテ「いま、周り見えてる?」


カウスト「は?」


モーテ「ここは俺の城だって話」


――あとがき――

新章突入。カステを滅ぼしたモーテの今後をお楽しみください。


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