第20話 望まぬ帰還

やっぱ追ってきた。森は俺のテリトリーなのにだ。

だが…それでもこいつに勝てる気はしない。桁違いだ。今も身体強化ボディバフを使って追いかけてきてるが…早すぎる。あの大剣を持って走ってるとは思えない速度だ。


「追いつかれるな…でもまあここまで来れたら…」


俺はウィングを閉じてグリレットと向き合った。


「なんで追ってきたの?」


グリレット「お前は今後、我が国の脅威となる。しかもすでに我が同胞を殺している。生かす理由がない」


「復讐か…じゃあ同じだね」


俺は次の瞬間、踏み込んで間合いに入った。


グリレット「っつ!」


当然、反応してとめられ…


「は!?」


何故か斬りかかった俺の方が吹き飛んだ。


グリレット「粉砕スマッシュ


やば…


魂×1ワンソウル身体強化ボディバフ


何とか急加速で攻撃範囲からは逃げれたが…

斬るじゃなく…潰す…木の幹が見たことない形になって倒れていく…


「化け物め…」


俺はもっと下がる。力の差を感じる。それでも…

そろそろ…


グリレット「ふん!!!」


「ぐっ……」


木を蹴って丸ごとぶつけてきやがった。化け物すぎる。

やば、もうあいつの間合い…詰められてる!

大剣を振り下ろしてくる。ゼーレで止めるしかない…


グリレット「消し飛べ!!」


シールド


悪あがきでシールドも使う。

そんなものすぐ割られたが…

潰される!そう思った瞬間…

少し、ほんの少しだけグリレットの大剣を弾けた。


「あああああ!!!」


弾いた一瞬でターンして大剣を避ける。そのまま斬りかかったが…


グリレット「ふう…」


付与エンチャントされた腕に止められた。


仕方なく一旦距離を取る。


「剣で切れない肉ってのは新鮮だなあ…」


グリレット「ひき肉にしてくれる」


俺は少し後ろを見る…この植生、草の長さ…来た!!あとちょっと…

まだ身体強化ボディバフは切れてない…


「行くぞ」


グリレット「お?」


俺はグリレット相手に再度近づく。めっちゃリスキー…


グリレット「斬撃スラッシュ


急な方向転換で躱す。


後ろを取ったと思ったが手が伸びてくる。付与エンチャントがしっかりしてある…多分斬れない。


「ちっ」


俺は引いた。だがこれで位置が入れ替わった。それで十分。

最後の賭けだ。今までで一番近づいて…


魂×2トゥーソウル衝撃ショック!!!」


グリレット「ん?」


グリレットは剣でしっかり防ぐ。ただ吹き飛ばしただけ。ダメージはないだろう。

しかし…


「入った」


十分。これで十分なのだ。ここは…シュラの森だぞ?


「久しぶりだね…エルタ…」


グリレット「!?」


グリレットの背後に美しい銀の毛皮をたなびかせて…エルタが現れた。


「ごめんね、騒がしくして」


今はグリレットがエルタの領域の中、そして俺は外にいる。


グリレット「こいつが…」


グリレットが大剣を構える。

ああ…


「そっか…エルタを殺すつもりだったもんね」


グリレット「!?どこでそれを!?」


「盗み聞き。感覚強化センスバフ超音波エコーの二つでね」


グリレット「っつ!?」


「一応聞くけど、エルタを前にしてみてさ…倒せたと思う?」


グリレット「…」


グリレット(なんだ?この感覚…生物として格が違うような…)


「そういうことだから」


俺はグリレットから距離を取る。


グリレット「待て…」


グリレットが足を踏み出した瞬間、グリレットの右腕が飛んだ。

付与エンチャントされてたから俺は斬れなかったんだが…エルタはやはり別格だ。


グリレット「この…」


グリレットが片腕になってもエルタに向かっていく。しかしすぐさまグリレットの脇腹がえぐられた。


グリレット「がはっ…ぬううううううううう!!!!粉砕スマッシュ!!!」


腹えぐられてまだ動けるのか。とてつもない威力…エルタ!?

だがそんな心配はいらなかった。エルタが平然とそこにいる。

はは…


グリレット「バカな…」


エルタの領域の境目にグリレットが退き尻もちをつく。

俺はグリレットの首にゼーレを突き付けた。


「この森で…戦うのは間違いでしたね。そして…エルタを甘く見過ぎた」


俺はグリレットの首をはねた。


「ふう…ごめんねエルタ。汚しちゃって」


エルタはもう俺の前にはいなかった。


「よし…行くか」


俺はグリレットの首を持ってカラム国の方に向かった。









コンパ「はあっはあっはあ…」


アンコ「モーテ君…あれが?」


ゼア「…」


インチェ「なんで…気づかなかった…ディクト…」


生き残った兵士は既にシュラの森を抜けて待機していた。だがヴィナチに勤めていた兵は少なからずショックを受けている。森の方を警戒しているのはモーテと絡みの無かったカステの兵しかいない。


インチェ「悔やむのはあとだ…今はグリレット大将の帰りを待とう」


だがインチェだって冷静ではいられない。


インチェ(ディクト…まさかお前が…この国を本当に変えれるところまで行ったのに…。これからもっと…)


インチェはディクトとの日々を思い返す。今でこそ別れてしまったが定期的に連絡はとっていた。

その親友があまりにも…あっけない死を遂げた。

インチェはあの瞬間、モーテに飛びかかりたかった。しかし…兵を率いる立場が許さなかった。



ゼア「っ!?」


ゼアが森の方を振り向く。


インチェも少し遅れて気づいた。人の気配…これは…

何か丸いものが飛んできた。


インチェ「!!!!!!!!???」


コンパ「グリレット…大将…」


アンコ「うそ…」


ゼア「…」


絶望は終わらない。


――あとがき――

何も言わないよ作者は


面白かったり次が気になる方は星やコメントやレビューお願いします。

カクヨムコンにも出してますので応援してね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る