第16話 思惑
森での移動訓練。めんどくさいなあ…って思ったけど。
「遅いよ~」
みんなが思ったよりばてばてで疲れてるし、遅いので俺からしたら余裕だった。
アンコ「うわ、こう比べられるとマジで歴然とする…私たち全然だめじゃん」
コンパ「あいつはスルスルスルっていくよな」
ちなみに最初は木の上とかもひょいひょい飛んでたのだが…
インチェ「地面を移動する方向で頼む」
というわけで地面を進んでいる。それでもみんなは足取りが重い。
「やっぱ荷物降ろせば?なんでそんなに重いものもってるの?バカなの?」
コンパ「お前みたいに現地調達で生きれねえんだよ!!」
だそうだ。食料や水を荷物として持ち運ぶらしい。池の位置も教えるからいらないって言ってるのに…
ゼア「調査隊として行く時は多分、モーテ君も多少の荷物を持つぞ」
「え?嫌だ…」
ゼア「…美味しいご飯食べれなくなるよ?」
「あ!!?」
そういえば…こっちの飯はかなり美味しい…あれがなくなるのはつらい。
「そっか…」
アンコ「ゼアナイス!そうそう、だから必要なご飯とかを…」
「作り方教えて貰わなきゃ」
アンコ「持って行かなきゃ……なんて言った?」
ゼア「…現地調達、現地調理する気だねこれ」
アンコ「なんでそうなるの~!?」
考えなかったな。確かに森で食べる肉は美味しくない。美味しくする方法を聞かねば…
コンパ「やべえ、モーテの移動スピードが上がってる。なんでだ」
アンコ「でもなんか上の空じゃない!?」
インチェ「あの子…天然鬼教官か?」
食堂のおばちゃんに聞けばわかるかな…
そんなこと考えていたらゴールについていた。
「おっもう終わり?お疲れ~」
ゼア「はいストップ~まだほかの人たち来てないから」
確かにゼア以外ついてきてない。
「ゼアはよくこれたね」
ゼア「私は身軽だしこういうのは得意だ」
「ふ~ん、さすが」
ゼア「で、君はご飯のことを考えてたのかな?」
「うん、食堂の人に聞けば作り方わかるかな?」
ゼア「野生の状態からの処理方法は知らないんじゃないかな…」
「ええ!?どうすれば…」
ゼア「今度精肉店か猟師のところに行こう…教えてくれるよ」
「やった~!」
アンコ「行くのは良いけど…今日以外でお願いね」
コンパ「結構疲れたから…大福も行く予定だし」
他の兵士たちも追いついてきた。ほんとに疲れてる表情をしている。
「しょうがないな~」
とりあえず訓練はこれで終わりっぽいかな。
インチェ「よし、お疲れ様。本日は解散とするが初日は慣れなくて疲労がたまっているだろう。ゆっくり休んでくれ」
やっと終わり。森にいた頃より緊張感はないがそこそこ大変だな。
コンパ「は~疲れた。飯行こうぜ」
というわけで俺たちは食堂に向かう。
「今日何にしよう…」
アンコ「あまり食べすぎないようにね~この後おやつがあるから」
「無理そうだったらコンパに押し付ける」
コンパ「おまっひでえな」
アンコ「それがいいと思うよ」
「どうしよう…カレーかなあ」
アンコ「いいねえ、あたしもそうしよ」
ゼア「私も」
コンパ「俺はチキンカレーで」
みんなでカレーだ。
食堂ってすぐにご飯が出てくるのすごいな。
「美味いなあ…どう作るんだろ…うまから」
アンコ「モーテ君にとっては全てが新鮮だね。めっちゃいい顔してる」
その微笑ましい様子をインチェとプーゴも見ていたが、すぐにその場を去り誰もいないところへ…そして…
プーゴ「信用できると思うぞ、森に住んでたという点は。ありゃ人間社会にいたやつじゃねえ」
インチェ「そこは認めてますよ…」
プーゴ「それで、そのガキンチョの話だとエルタとかいうやつの領域があってそこは通れないと。で…それか」
インチェ「はい…ついさっき届きました。やっぱりシュラの森の開拓とこれは切り離せないと思います」
プーゴ「ふ~む…グリレットが行くなら大丈夫…と思うがあの子が絶対に無理、やめろと言った相手というのは怖いな」
インチェ「そうですねえ…あの子自身も思い入れがあるようで、もしかしたら敵に回ってしまう可能性も」
プーゴ「だからあの子にはエルタの領域前までの案内を頼んで一回引き返すんだろ?」
インチェ「はい…2回目の調査…いやもう調査と言っていいのかもわかりませんが…そこではモーテ君に同行してもらわず私たちだけで行きます。その前準備をモーテ君に協力してもらう形ですね」
プーゴ「別に悪いとは思わない、ディクトのやつが考えそうな策ではある…が、あんな子供を騙すのはちょっと気が引ける」
インチェ「そうですね。でも…」
プーゴ「わかっている必要なことだ。だからこそしっかり隠し通せよ」
インチェ「はい」
インチェの手にはある資料があった。それは極秘の試料。
『エルタ討伐作戦』
まだモーテはこのことを知らない。
「カレー美味しい」
コンパ「それな」
ただただカレーを満喫している。
全ては3か月後。
――あとがき――
軍の思惑…
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