第12話 人間的な生活
俺たちは軍の風呂の設備に向かっていた。が…
「お~い、コンパそれ誰の子だ?」
「お前の子か~?順番は守らなきゃだぞ~」
「コンパに似てねえな」
めっちゃ絡まれる。
コンパ「違いますよ!!!預かってるんです!明日にも通知来ますよ!」
先輩「軍で預かるのか?」
コンパ「はい、そう聞いてますよ」
先輩「ほ~じゃあよろしくな~坊主」
頭を撫でられそうになったがとっさに体を引いてしまった。
先輩「ん?」
コンパ「モーテ…この子は人見知りだから…」
先輩「この子…普通の子か?」
コンパ「え?」
先輩「見事な動きだった。バックステップ1つとっても」
おお…
コンパ「まあそれも明日にはわかります。とりあえず俺らは風呂行ってきますね」
先輩「そうか…またな!」
俺たちは人混みを抜けた。
コンパ「は~。やっぱいじられた。モーテも慣れろよあのおっさんたちに」
「いやだなあ…」
コンパ「おい!!」
そんなこんなで風呂場に着いたようだ。
コンパ「良し、入るか、服は適当なかごに入れてロッカーにつっこむ。鍵持っとけよ」
買ったばっかの服を脱ぐ。
そして風呂場に入った。
コンパ「良し、頭と体を洗う。これが頭用、これが体用で、タオルはこれ。とりあえず俺の洗い方見てたらいいよ。目に入らないようにな。」
コンパを参考に洗っていく。温かい水がこんなにあるのすごいな。
コンパ「そしたら湯舟に浸かってゆっくり!」
「「はあ~~~」」
気持ちいい!幸せだ…あったまる~!
コンパ「寝るなよ~寝たら死ぬぞ」
やば…ウトウトしてたか。
コンパに笑われた。
コンパ「気に入ってもらえてよかったぜ、あの生活じゃあ体洗うのだって大変だろうしな。今日で綺麗になってよかった」
それは思う。なんかスッキリした。
コンパ「風呂もできるだけ毎日入れよ」
「うん、風呂好きだ」
コンパ「はは、ゼアと気が合うかもな」
「そうなの?」
コンパ「アンコが言ってたぜ?お風呂好きだし髪の手入れとか丁寧にしてるってよ」
「ふうん…」
確かにいい匂いだった気がする。
コンパ「あとは歯磨いて寝る準備は終わりだな。歯磨きできるか?」
「多分覚えてる」
コンパ「おっけい、おれの部屋ここだから何かあったら来いよ」
「おっけ~」
コンパ「じゃあまた明日な、おやすみ~」
「おやすみ」
俺はコンパと別れ自分の部屋に向かう。
「なんか…落ち着かないな」
余りにも緩い空間。今までずっと張りつめて生きてきたから落差が酷い…
眠くならないな…
少し周りを歩いてみるか。
そう思い俺はパジャマのまま外に出た。
軍の中はぱっと見、そこそこ強い人が多い。もし全員敵だとしたら森よりしんどいかもだな。
ていうかすげえ見られる。なんだ?
「何?」
少し振り向いて聞く。
軍の人「いや…こんなところで…そんな恰好でどうしたの?」
「ちょっと周りを見て回ってた」
「「「「「「「………」」」」」」」」
軍の人「えっと…ちょっといい?」
「ん?」
なんか捕まってしまった。そこからはさっきのインチェと同じような質問が来た。名前やらなんやら…
「どう思う?」
「どうも何も…スパイじゃねえの?」
「だよなあ…」
という声が聞こえた。それで声を潜めてるつもりか?サルの方が静かだぞ。
ゼア「あれ?モーテ君?どうしたの?」
そこに風呂上りと思われるゼアが現れた。
「なんか色々聞かれた。アンコは?」
ゼア「私より先にお風呂あがってったよ」
ゼアの方が長風呂なんだな。
軍の人「ゼアか?この子知り合い?」
ゼア「あ~…あ~…大体わかって来たわ。知り合いって言うか拾ったていうか…とりあえずこの軍にいることになった子だから。大丈夫」
軍の人「いや…スパイの可能性も…」
ゼア「それも大丈夫。詳しくは…軍から発表があるけど大丈夫」
ゼアがみんなに説明してくれた。助かった。
ゼア「で?モーテ君は何してたの?」
「そこらへんを見て回ってた…」
ゼア「止めろ…とは言えないけど。今日くらいは部屋にいなよ」
「は~い」
仕方ない…
暇だが寝よう。
部屋に戻って結局、布団の中でもぞもぞしながら眠った。それでもいい眠りだったと思う。布団は温かかった。
次の日
コンパ「おはよう!起きてるか!?モーテ…っていない?」
ゼア「さっき軍の訓練場で子供が飛んでる鳥を落として騒ぎになってた」
コンパ「絶対モーテじゃん!!!なんで助けてあげないの!?」
ゼア「いや…助けたよ。ていうか1時間前の話だし」
コンパ「今5時半だぞ!?1時間前!?」
ゼア「森育ちは違うねえ」
コンパ「度が過ぎる…アンコは?」
ゼア「起きてるわけないでしょ。ギリギリまで寝てるわよ」
コンパ「じゃあいつも通り頼めるか?モーテも訓練場にいるなら丁度いい」
ゼア「ハイハイ」
コンパとゼアが訓練場に向かう。
コンパ「おーいモーテ!早速やらかしたらしいな」
「やらかしてない。糞を落とされたから躱して反撃しただけ」
コンパ(鳥の糞って躱せるのか…)
コンパ「そっか、もし暇なら少し見てけ」
「何を?」
コンパ「俺とゼアの立ち合い」
へえ…?
ゼア「私にコテンパンにされるところ見て欲しいんだって」
コンパ「今日こそ勝つ」
ゼア「じゃ、始めましょ」
2人が少し間合いを取って武器を抜く。コンパはでかい槍、ゼアは小型ナイフか。ただ刃が無い。模擬戦だから万が一があってもか。
コンパ「行くぞ!」
コンパが一気に踏み込んで槍を突き出す。パワーあるな~。
でも当然、ゼアはそれを躱す。それどころか一気に距離を詰めた。
コンパ「ほっ」
ゼア「あらら」
コンパは槍を引いて攻撃。それによってゼアが引いた。攻防一体である。
そんな使い方あるのか。突く、刺す、切るだけじゃない。
だがすぐに風切り音がした。
「おお、はやい」
コンパ「うわっ」
コンパも迎え撃つ。手数はゼアの方が多そうかな?でもコンパはパワーがあるから何とか押し返せてる。
「あっ」
俺はとっさにゼーレを出してしまった。
ゼア「ん?」
叩き落したのはさらに小さい…刃物?だが殺傷力はなさそう、これも模擬戦用か。
コンパ「うお、無理に入ってきちゃだめだ。怪我無いか?」
コンパが俺の心配をするがそんなヘマしない。
ゼア「逆だね、コンパが助けられた」
コンパ「え?」
ゼア「この手裏剣投げたの気づいてないでしょ?それに気づいたモーテ君が割り込んだんだよ」
正解。
コンパ「マジかよ」
ゼア「…モーテ君も少し戦ってみる?」
オッいいね
「やる」
ゼア「じゃあ怪我したら危ないから…これ、木刀ね」
ゼアから木刀を受け取る。ここで思った。
「重いな」
ゼア「重い?普段あの剣を使ってる君が何を…?」
「ゼーレのこと?ゼーレより重いよ、この木刀」
ゼア「そんな馬鹿な…ゼーレ?って剣貸してもらっていい?」
「はい」
ゼアがゼーレを受け取る。
ゼア「かる…比べるまでもなく軽い」
コンパ「まじ?俺もいい?」
「うん」
コンパ「うわ…ほんとに軽い。いくらでも振り回せるな」
楽しそうだな。でも…
「回収」
ゼーレを俺の手元に呼び戻した。
コンパ「うお!?」
ゼア「本当になんなの?その剣?武器?」
「いい剣でしょ?まあ木刀使うよ」
コンパ「そう…ルールは特にないけど目とか急所への攻撃はダメ」
「え!?」
コンパ「え!?とは…」
「じゃあどこ攻撃するの?」
コンパ「…いや胴体とか?」
ゼア「あ~そういえばさっきの鳥も森での蛇も首に一撃だった気が…」
人間世界に馴染む道は遠い。
――あとがき――
ほのぼのする。書いてても思う。
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