第8話 森の侵入者

もう一体どれくらいの時間をこの森で過ごしたのだろう。

この森のほとんどを踏破した。入ってないのはエルタの領域と思われるところくらいか。思ったより色々な動物がいた。竜みたいなやつは早々いないだろうと思ったが意外といるもんだ。池の中にも化け物がいたしどでかく成長した蜂とかもいた。

それでも俺はもう普通に生きていけるほどにはなっていた。


そういうとき、慣れてきたときほど状況って言うのは変わるものだ。


「ん?なんだ?」


今までとは違う何かを感じた。初めての感覚。


感覚強化センスバフ超音波エコー


気配のする方を探る…


「これは…」


人か?まあまあいるな。


この森で生きた人を見るのは初めてだ。死体なら見たことあるが。


「行ってみるか」


俺はその侵入者たちの元へ急いだ。



一方、森の調査隊。


「良し、それじゃあ3人1組でお互いをサポートできるくらいに展開。何かあったらすぐ音響弾か信号弾撃てよ」


班長らしき人物が指示を出す。兵はテキパキと分散していった。


俺はその様子を木の上から見ていた。


「ふ~んあれがボスか。ボスを叩いてもいいけど…」


そしたら統率を失う。狩りやすい。しかし…


「狩りが目的じゃないからな…」


別に殺す必要はない。そうなると最も自分に危険のなさそうな…


「あれだな。動きが硬い」


新人らしきグループに目を付ける。

気配無く後ろに忍び寄り…


「!?」


「動くな」


真ん中にいる筋肉質な男に扇子型のゼーレの片方を突き付けた。

いや…それよりこの左のボブカットくらいの女…気づいたな俺に。

それどころかナイフを取り出して構えている。だから扇子型ゼーレのもう片方はその女の方に向けていた。


「っ!」


右のロングの女が動きを見せる。


「動くな」


少しゼーレを動かし男の体を薄く切った。

そうしたら流石に止まった。


「俺たちはカラム国の兵だ。このシュラの森の調査に来た。君は何者だ?」


中心にいる男が声をかけてきた。あまり怯えてる様子じゃない。驚いていると言った感じか。雑魚かと思ったが意外と強いかこりゃ。いや…狙う標的を間違えたのはもうわかっている。このボブナイフ女が強い。外れ引いた。カラムってどこ?


「質問は受け付けてない。何のための調査?」


「君…兵士相手に良くないよ。何してるんだ?こんなところで」


男の方が少し声を落として話す。圧がかかる。まあ少しだが…


チラッ


油断してないな…仕方ない…


「住んでる。この森に」


「「「!!???」」」


「住んでる!?ほんとに?」


ロングの女が驚いたように声を上げた。

男も硬くなったか?

ナイフ女にも動揺が見られる。そんなおかしいか。


「うん。ほんと。そっちは?調査って?」


(ここで戦争のための開拓の話は…こんな子供にするのは…)


「この森の中を安全に通れないかなって調査だよ」


正気か?

ムリに決まってんだろ。


「無理、諦めて帰って」


言い放った。


「いや…ムリじゃないかも…」


ナイフ女が話した。何気に初めてだな。


「どういうこと?」


ロングの女が聞く。お前が聞くんかい。俺に聞かせろよ。


「もしこの子がこの森に本当に住んでるなら、生き抜くノウハウを持ってるってことでしょ。連れて帰ろう」


ふうん…やっぱこいつ別格だろ。


「なるほど!どうかな?君。私たちと一緒に来ない?」


人間の世界に戻るか。もうほとんど忘れてしまったが…どうすればいいか…


「来てくれるなら美味いもん食わせてやるぜ?」


「嫌だ…って言ったら?」


「力づく」


別に構わないが…ナイフ女相手は危険か?


「ちっ。付いていくけど気に食わなかったら逃げる」


「いいよそれで」


仕方ない。


「あっでもエルタにだけ最後会いたい」


「エルタ?」


「ちょっとだけ待って。付いてきたら殺す。身体強化ボディバフ


「「「!!?」」」


俺はエルタの聖域まで走っていった。


「魔法使ったぞあいつ」


「すごい子ね…」


「森での移動…マジの本物かな」


3人は呆然としていた。でもすぐ後に信号弾が上がった。


「このあたり…入るよ、エルタ」


数歩入ったら…


「急にごめんねエルタ」


既に後ろにいた。


「森に入ってきた人間についていくことになって。しばらく会えないかもだから」


エルタは何も言わない。動じない。


「それでもまた会いに来る。じゃあねエルタ」


エルタが少し近づいてくれた。そして…


「ふふっありがと」


尻尾でなでてくれた。

普段は何をしてもいつの間にか、一瞬なのに。この時だけゆっくりだった。


「行ってくるね」


俺はエルタの聖域から出た。その時にはもうエルタはいなかった。


「行くか、感覚強化センスバフ超音波エコー


俺は元の位置に走…


「少し動いてるか?」


――――――――――――――――――


「本当なのか?ここに住んでる子供!?」


「俺も信じがたいですよでもゼアは信じるっぽいです」


「根拠は?ゼア」


ゼア「動き方、異常なまでの警戒心、気配の消し方、殺気の出し方、殺し、傷つけることへのためらいの無さ、そして…魔法。人間社会で突然変異によってあの化け物が存在することよりこの森で生き残った子供という存在の方がまだ納得できます」


「「「「「「「…………」」」」」」」」


「だそうです。俺は信じますよ。ゼアが言うならそうでしょう」


「私も」


「…はあ分かった。でもその子と再会できるか?お前ら少し動いちゃってるだろ?この森の中見つけ…

「いた」


全兵士集合っぽいな。


ゼア「ね?」


「はあ…総員帰還だ」


「俺はコンパだよろしくな!」


「あたしはアンコだよ~」


「私はゼア。よろしく」


男がコンパ、ロングの女がアンコ、そして…


この強いやつがゼアか。


――あとがき――

盛り上がってまいりました~!!


面白かったり次が気になる方は星やコメントやレビューお願いします。

カクコンにも出してるので応援してね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る