第6話 人と竜の違い

エルタが去った後、竜は俺を襲うでもなくそのまま飛んで寝床の方に帰っていった。


「はあ~もう竜にはちょっかい出さないようにしよう」


ほんとに死にかけた。


「疲れた…怪我が治っても…そこはしんどいなあ」


エルタが治してくれたのかはわからないがかなり助かる。

森に来てから怪我しまくり、そして竜との戦いでズタボロだった。

ていうか…


「怪我の直りが遅いんだよなあ」


他者からすれば薬とかもなければ傷を塞ぐことも、魔法で治癒することすらしてない、それでいて清潔とは言えない生活なので当然なのだがモーテからすれば謎である。


「困るなあ…今度からは怪我も少なくなるようにしないと」


木登り失敗とかしている場合じゃないなあ。

という反省をした上で…


「飯探さないとなあ…」


結局、竜を仕留めきれず、今日は池の中の水しか飲んでないから…しんど。

とりあえず、池の方に戻るか~。そこが一番よく知っている地形だし。


周りを警戒しながら森を移動する。慣れとは恐ろしいな。アッ鳥。


「ゼーレ」


鳥をすぐさま仕留める。


「良し、ご飯げっと~」


仕留めた鳥を見る。


「いいなあ…羽って便利だな」


竜と戦っても思ったこと。空を飛べるというアドバンテージ。

あの竜との戦い。死にかけたんだ。絶対無駄にしない。火も風も全部使いこなす。


「おっ、マーク発見。そろそろだな」


木に付けていたマーク。池の場所を忘れたら困るから付けておいた。これさえ見つければ戻れる。


「よしよし…竜のせいで少し変わってるけど見覚えあるとこ来た…」


大まかなところは変わらない、木が数本折れてるくらいだ。


でもそれ以上に目を引く…


「なんだこれ?魚が…死んでる?」


池に魚の死体が浮かんでいた。


「どうなってる?これも食えるよな?」


魚は食える。それは知ってるが捕まえる手段を持っていなかった。

でもこれは…久しぶりに…


「肉以外が食べれそう!」


ただこれを回収しないといけない。

そしてそこで考える。


「これだけ魚が死んでる池…入って大丈夫か?」


そう、そこ…なんかやべえやつがいるかなんかやべえのが入ってるかだろこんなの…

毒?化け物?なんかの予兆?


そう考えるとこの池に入るのも魚を食うのもリスキー。


ちなみにこれも神の視点ならてめえのサンダーのせいだよ!とつっこめる。

当然、そこまで考えてモーテはあの攻撃をしたわけじゃない。


そんなこと知らないモーテは…


「別の水場も探すか?いや…他の動物が飲んでるの見てから判断しよう」


魚には手を付けず鳥を食った。



次の日…


「良し…疲れ無し、怪我無し。すこぶる快調!」


寝たら回復した。


「今日は…やるか」


魔法の練習。火と風…それともう一つ…羽は諦めるとして…


「鱗に流す魔力。人の体なら多分肌?いや…」


ゼーレで突き刺したときに感じた。魔力の乗った肉って感じ。


「強化魔法?」


全てが違った竜。シールドも簡単に割る。その理由の一端はあの魔力…そう考えれる?俺もできるか?できるなら…


「どこまで動けるんだろう」


それもやっていこう。でもまずは火だ。池もあるここで練習する。池の水が安全なのはさっきイノシシが水飲んでるの見たから大丈夫。


口から吐くイメージ。そして…

溜め。


「竜は炎を吐く前に溜めがあった。口から火が少し漏れ出すほどの溜めが。自分の中で炎にする」


行ける!って思ったとき


「!????あっつい!!!」


体の中が燃える感じ。

俺は思わず池の水を飲んだ。


「あっつあっつ。やば…」


サンダーの時はこんなの無かった。尻尾が俺にはないけど手から電気を流すイメージで出来た。


本物と同じように口から吐くならできると思ったのに…

何が違う??なんでだ?

悔しいが…本能が告げていた。


「これはダメだ…続けたら死ぬ」


掴んでいるのに…掴んだものが違った。くそう…


「風の方は?」


ここで気づく。


「風ってどうやって起こすん?」


竜は羽を羽ばたかせて風を起こした。俺は?手であおぐか?バッタも飛ばねえだろそんなの。

実現できねえ。


「は~!?マジか…」


まさかここまで竜と人間が違うとは…

ん?風を起こす…手でじゃなくて扇子とかは?


「ゼーレ」


愛剣を出す。


「俺の中に…あるなら…消えたり出てきたり出来るくらいなら…」


頼む。





「変形出来るだろ!この剣」


次の瞬間、ゼーレは二つの扇子に変わった。


「分裂もできるんかい!!!」


それは知らんがな。

軽く振ってみる。やっぱこれならそれなりの風になる。


「いけ!」


魔力も乗せる。風で切れるように…


びゅうううぅ


「う~ん?」


魔力が乗ってそれなりに強い風になった。でも…


「枝一本切れてないな」


あの竜の起こした風とは別物。

でも火と違ってこっちは…


「できる気がする」


練習あるのみ。


「あと強化系…やってみるか」


体に魔力を巡らせるイメージ…

それで軽く走ってみた。


「何も変わらん。っていうか魔力が体を流れてるのは当たり前だ」


ただのランニングだった。こちらも要改善である。


「くっそ!火…火~!」


多少の希望のある風と強化はまだしも全く希望の無い火。

一番火が欲しかったのに…


火で焼いた肉まではまだ遠い…


――あとがき――

これはサバイバルパートじゃなくて特訓パートだと考えればいいのでは?


面白かったり、なにやってんだこれって思った方は星やコメントやレビューお願いします。

カクヨムコンに出してますので応援してあげてください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る