第16話:ゴブリン達の帰還
「これは、どういうことかな?」
俺が目を細めてゴブマルを見つめると、萎縮したように身体を縮こませていた。
そうなるのは仕方ないと思う。
何故か、戻ってきたら人数が増えていた。
それも4人も。
しかも、人間……
とりあえず、そのうちの2人が酷い状態だったので、俺の家にある空いた部屋で寝かせている。
あ、ギイ達の家はようやく完成したから、そちらに移ってもらった。
嬉しそうだったけど、戻らなくていいのかな?
絶対に、この集落のことを口外しないと約束するなら、帰っていいとは言ったけど。
おそらく大丈夫だと思える程度には、ゴブリン達と仲良くなってたからな。
ジニーが絶望したような表情を浮かべていたが。
結論も出さずに、ズルズルダラダラまだいたりする。
そんなことは、どうでもいい。
それよりも、目の前の問題を解決しないと。
「その我々が、ダンジョンのボスと戦っているとこに乱入してきてですね」
「横取りか?」
俺が、この場にいる2人の人間に目を向けると、ビクッと肩を震わせていた。
「違う! 俺たちはこいつらを殺そうとしただけだ!」
なお悪いわ!
ボスじゃなくて、ボスと戦っているゴブリンを狙うとか。
「そうじゃなくてですね……不幸な行き違いがあったといいますか」
おや?
ゴブマルが人間の方をかばっている、どういうことだ?
「まず、セーフルームでこの人間たちと鉢合わせてしまいまして……そこで、キノコマルが眠茸の粉を撒いてしまって……」
ふむふむ。
なるほど……
エルの怪我が酷く治療するために、エルが上の服を脱がせて直接患部を……
「ちょっと待て。エルって、確か回復特化のゴブリンのエルだよな? 自分で自分の治療をするのに、なんの行き違いあるんだ? 痴女とでも思われたか? ゴブリンなんてそんなもんだろう」
「いや、違います」
違うのか……すぐに、発情する猿みたいなもんだと思ってたが。
「いや、違わないというか……怪我をしたのは人のエルで、治療をしたのがゴブリンのエルです」
言ってる意味がよくわからんな。
もしかして、名前が同じなのか?
「そうです!」
それは不便だな。
「よし、こっちのエルは今からゴブエルに改名な」
俺の言葉に、エル改めゴブエルが小さくガッツポーズをしていた。
嬉しいのか?
いまいち、こいつらの名前に対するセンスが分からん。
なるほど、眠茸の効果が切れて目が覚めたら服がはだけていて、襲われたと勘違いしたエルが暴走して男2人を……
で、とっさに男2人がゴブリンがと口走り……セーフルームにゴブリンがいるわけないだろう! ゴブリンはお前らだ! とさらに火に油を注ぐ結果に。
いや、全然分からん。
証拠を見せようと、ゴブマル達を探していたらボス部屋から戦闘の音が聞こえて、飛び込んだと。
で見つけたとばかりに、ゴブマル達に襲い掛かり……
最低だなお前ら。
ボスと戦っている人に、不意打ちとか。
「人ではないですけどね」
キノコマル、少し黙ろうか?
あとで、ハッピーマッシュあげるから。
結論としては、エルとエミルという姉妹が、ボス部屋のポイズンリザードの毒を受けて危険な状態と。
ゴブエルの魔法で解毒できないらしく、到底人の足だと町までも持ちそうもない。
ゴブリンの集落なら、ゴブマル達が担いで本気で走れば……
いや、なんで助けたの?
別に、放っておいてもよかったんじゃないか?
どうした、そんなショックを受けたような顔をして。
「い……いえ、ロードは人をむやみに害するのを好まない様子でしたので、その助けられるなら助けた方が良かったかと……放っておいても、良かったので」
「人によるけど、不意打ちかましてきて巻き添え食らって毒にかかるようなアホは、遅かれ早かれすぐ死ぬと思うぞー。そんな迷惑な相手を助ける必要あったか?」
「……」
めっちゃ、びっくりしてる。
そんなに意外だったかな?
「そりゃ、助けられるなら助けた方が良いけど、悪人や敵まで助ける必要はないさ……それはそうと、キノコマルの精密鑑定でも、毒の種類とか分からなかったのか?」
「えっ? 魔力による闇属性の呪毒だから、解呪のディスペルとキュアポイズンの重ね掛けで治るっすよー」
ゴブマルがさっきよりびっくりした顔してる。
おーい!
大丈夫かー?
「なっ! なんでおまっ! それっ!」
「えー? だって聞かれなかったっすし、うちもロードと一緒で助かっても助からなくても良いかなって思っちゃったっす」
「おまー! その場で処理してたら、ここまで連れてこなくてすんだのにー!」
「わー! なんすかもー! 叩かないでくださいよー」
ゴブマルが取り乱してるのが面白いから、とりあえず放置しておいた。
ちなみに残念ながらこいつらは、ゴブリンⅨどまりだった。
そして人間4人の世話はギイ達に任せることにした。
あっ、それよりも毒治してきてあげなよ。
ここまで連れてきたんなら仕方ないから、助けてあげて。
てか、視界の中にいる人が死ぬのは流石に、嫌だから。
ゴブエルが慌てて部屋を飛び出したけど、出る前にきっちりキノコマルのお尻を蹴っていた。
「いったー! 皆して酷いっす」
ふふ……相変わらず、こいつは面白くて可愛い奴だと思った。
***
それよりもさらに、大きな問題。
溜息が出る……
ん?
ゴブゾウ達が? さらに人を連れてきた件?
いや、あれはただの変態だし、本人が望んでいるなら別に口を挟んだりはしない。
無理矢理がダメなだけで、別に異種族間の恋愛にどうこういうつもりはない。
ちょっと、歪な感じだけど。
相思相愛っぽいし、真性どMっぽいからいいんじゃないか?
その代わり、何かしらの仕事はしてもらうが。
他の人間と違って、望んできたからにはな。
嬉しそうだな、お前。
俺の言葉に、嫌そうな言葉を口にしつつニヤけた面を見て、ドン引きだ。
こいつは……まあ、そういうやつなんだろう。
そうじゃない。
それよりも、おかしなの。
「ふむ、お主がこの群れのボスか」
顎をさすりながら、偉そうな態度で俺の前に座ってるこいつ。
しゃべる骸骨。
ゴブエモーン!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます