第9話:冒険者再襲来

「よしよし、良いぞ! 引き上げろ」

「よいしょー!」


 巨大な門が、外壁につけられた。

 門はパーツごとに作って、組み合わせて。

 枠も付けた状態で、植物の蔓でしばって引っ張って起こす。

 で枠を外壁に当て込んで、土魔法で固定。

 なかなか、良い感じだと思う。

 水分を飛ばして、土の部分だけに火を当てて完全に固定。

 ようやく村っぽくなったか?

 外壁の上には登れるようになっていて、弓矢や石をたくさん置いている。

 矢がどうもうまくできないから、まだ石の方がいいかもしれないが。

 真っすぐな棒を加工して、矢羽根を着けて、矢じりは土魔法でって感じだが。

 金属加工とか、できるようにならないと。

 道具を作る道具が作れない。

 そして金属を加工する知識も道具もない。

 ジャッキーさんに、そういった本を買ってきてもらおうか。


「人の住む場所とかに行けば、手に入るか? 茶色いゴブリンとかとなら大丈夫だと思うが……俺が行くのが一番かもしれない」

「サトウ様が行かれなくとも、里から適当に送り込めば」

「正体がバレて、下手に刺激するのもなあ……」


 長老達と、色々と相談したが結論は先延ばし。

 正直、俺がここに飽きただけなんだけど。

 休暇ってことにして、現地を観光しても罰はあたらないと思うんだけどな。

 ジャッキーさんも、17時までしか働いてないわけだし。


***

「敵襲! 人間が来た!」

「数は6! 前衛2後衛3補助1」


 次の日の昼前に、鐘がけたたましくならされて起きる。

 あー、外に出てる連中もいるはずだから、里の中には……

 もらった権限のお陰で、部下のゴブリン達の所在はすぐに把握できる。

 50か……

 とりあえず、前回は石投げまくったら終わったけど。

 威力偵察は必要かな?

 人の強さってのが、まず分からないし。


 外壁に移動。

 なかなか、いい物を装備した集団が6人。

 なんていうかファンタジーの冒険者をゲームや本で見てきたからか、それっぽく見えてるけど。

 普通に考えて武装して村に攻撃を仕掛けてくるって、ただの野盗だよな。


「なっ、なんだこの壁は」

「ゴブリンの巣があるんじゃなかったのか?」

「これ……開拓民の人達がゴブリンの巣をつぶして、自分たちの拠点を作ったんじゃないかしら?」

「でも、前に報告をもらってから2か月も経ってないぞ!」


 なんだろう、建物が立派すぎて困惑してる。

 どうしたものか。


「あー……ここは、ゴブリンの集落で間違いない。中に入れたらすぐバレるから正直に言おう。このまま回れ右して帰ってくれないか?」


 上から声を掛けてみる。

 ザワザワしてるなー。


「なぜ、ゴブリンが俺たちの言葉を喋れる」

「姿を見せろ」


 うーん、とりあえず30匹ほど外壁の上に呼んで、弓や石を用意させて立ち上がらせる。


「これでいいか? このまま攻撃されたくなかったら、帰ってくれないか?」

「っ!」


 その様子を見た集団が、一気に外壁から距離を取る。

 重装備の男が盾を構えて、仲間を後ろにかばっている。

 

「そんなことを言って、背中を向けたら射るつもりだろう」

「えー? 背中向けなくても、いま一斉に矢と石を放って、そのあとずっと石を投げ続けてもいいんだけど? 防げるの?」

「私の魔法なら」

「うーん、じゃあ」


 俺がゴブリン達に違う指示を飛ばす。

 一部のゴブリンが、空中に火の玉を浮かばせる。


「ゴブリンメイジだと!」

「くそっ、こうなったら俺が囮になる、お前らはどうにか逃げ延びてこのことをギルドに!」


 思わず頭を抱え込む。

 そうだよな、こいつら調子乗ってるんだった。

 一応念話で外にいるゴブリン達も集めて、こいつらを取り囲むようにして待機させているが。

 こうなると、捕まえないといけないか……


「それは困るので、もういいでーす! 普通に帰っていいって言ったのに、そういうこと言うなら捕虜になってもらいまーす」

「ふざけるな、行けおま……え……ら……」


 重装備の男がこっちに盾を向けたまま、仲間に指示を出してその場に倒れる。

 茂みに潜ませたゴブリンが、催眠作用のある草の汁を塗った吹き矢を撃っただけ。

 鎧の隙間めがけて。

 失敗したらあれだから、8匹に同時にやらせた。

 全部見事に鎧の隙間に命中してた。

 一発でも当たればオッケーと思ってたのに。

 こいつらテラ優秀。


「ガード!」

「まずい、逃げろ!」

「ガードは?」

「無理だ、あいつを担いでなんか……」

「ギイ?」


 はい、2人目。

 てか、そこでモタモタしてると……3人目、4人目、5人目、6人目と。

 全員が吹き矢で、いい気分で眠りに落ちた。

 簡単だなー。


 さてと、おいお前ら!

 さわやかな表情で、股間膨らましながら女に近づくな!

 捕虜だから!

 扱いは、最初は丁寧にしないとだから。

 そんなガッカリしたような顔をするな。

 多少見てくれがよくなってるから、ちょっと面白い絵になってるぞ。


 仕方ないので、女性陣はメスゴブリンに回収を……いや、そっちじゃない。

 頬を染めて重戦士に近づいてくな。

 手をワキワキさせるんじゃない!

 お前らは女性を確保だっつってんだろ!

 だから、その顔やめろ。

 その程度で絶望するとか、どれだけ欲望に忠実なんだ。

 くそっ!

 別に、こいつら絶滅してもいい気がしてきた。

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