第8話:住環境大幅改善
「よしっ、こんなもんかな?」
土魔法を組み合わせて、家を大きく改築した。
フワッとした知識だけで、色々といじってみた。
最近近所に住宅地が増えてきたから、家が出来ていく様子は見てきた。
基礎もしっかりと作った。
湿気対策……いるのかな?
基本、建材は魔法で作ってるし。
何か問題があったところで、魔法で直せば済む話だけど。
まあ、その手間が軽減できたらと。
間取りは4LDK。
とりあえず、リビングダイニングキッチンはそこそここだわった。
といっても、打ちっぱなしのコンクリの建物に近いけど。
材木の加工ができないんだから、仕方ない。
キッチンに関しては、値段が高いからそれっぽい感じにしたけど。
排水の問題とかあるけど、なんとなく筒状の素材で外に流すように。
水道も使えないから、水は汲んでくるか魔法で出す。
蛇口のついたタンクを買ってきてもらって、それを設置しているから雰囲気はある。
IHも使えないから、カセットコンロも買ってきてもらった。
ガスも数本、置いていってもらってる。
サッシをはめて気付いたけど、カーテンレールとカーテンもいる。
照明はLEDランタンをいくつか。
フローリング風のカーペットや、普通のカーペットをそれぞれの部屋に設置して、その上にダイニングセットや棚、ソファ、ベッド等の家具を置いていったらそれなりの家が完成した。
無機質ではあるし、電気もガスも水道も何もないから不便ではあるが。
人間らしい暮らしができるようになった。
陶器の洋式便器も買ったし、水は魔法で出して外に流せるようにしてある。
タンクに魔法で出した水をためてレバーを引けば、きちんと水洗トイレとしての役割を果たしてくれる。
下水の完成が急がれるな。
手付かずだけど。
今度、土魔法と水魔法特化かつ、力もあるゴブリンを育てないと。
下水処理施設が作れないから、川まで繋げるかどこかに溜めるか。
肥溜めで堆肥を作ったところで、それを撒いて育った作物を食べるのはちょっと……
いっそのこと遠くまで流せるようにして、そこで超高火力の魔法で処理するか、ありえないほど大きく広く掘った穴に埋めるか。
長老会の連中の尻を叩いておこう。
ジャッキーさんの持ってきてくれたクーラーボックスのお陰で、食べ物の保管は問題ないけど。
容量が、所詮はクーラーボックスだからなー。
そういえば、マジーンさんのオフィスビルの一室に繋がる鞄があったけど、これ鞄の中に俺が持って入って整理しないといけない仕様なんだよなー。
一度使ってみたけど、手入れたら袋の中にスポンて吸い込まれた。
で、扉があったからそこから出てきたら、袋からポンと飛び出したような感じになった。
他の人は、ちゃんと扉で出入りできるみたいだけど。
だから、倉庫番を置けるってことか。
ここに冷蔵庫を置いてもらってもいいかも。
次の給料から天引きで、買ってもらおうかな?
家の間取りとしては、寝室と書斎、客間を意味もなく一室、もう一部屋は倉庫変わりだ。
リビングダイニングに掃き出し窓を、他の部屋には中連窓を着けた。
追加でいくつかサッシごと持ってきてもらったから、増築しても大丈夫だな。
次からは、給料天引きにするって言われたけど。
さてと……
最近のお気に入りは、階段からこの建物の屋上に上がる事。
一応、ここにも開き戸を着けてある。
普通に鍵差して回すタイプでいいと言ったのに、タッチセンサーの鍵だった。
鍵持ってたら、押すだけで解錠できるタイプ。
電池が切れたら、鍵差して回さないといけないんだけどね。
屋上から集落を眺める。
だいぶ人らしさが出てきた。
そろそろ着るもののことを考えないとだけど、成長速度が速すぎるからな。
レベルが上がったりステータスを伸ばしたりすると、体型が変化するから悩み物だ。
「はは、無理するなよー!」
屋上にいる俺に気付いたゴブリンが手を振ってきたので、手を振り返す。
かなり大きな猪を一人で担いでいたが、俺に手を振るときに片手を離してしまったためにバランスを崩して、よろめいていた。
可愛いっちゃ可愛いかな?
この集落での生活にも慣れて、余裕も出てきた。
確かに楽な仕事ではあるけど、飽きてきてる。
この暮らしに。
娯楽が少なすぎる。
何か趣味でも始めた方が良いかな?
畑で野菜を育てるのも悪くないだろうし。
集落の外にも興味が出始めた。
森じゃなくて、人の住んでる場所。
しかし、俺が行ってトラブルが起きないかという心配はある。
なんせ、ゴブリンロード(課長)だし。
ゴブリン連れていくわけにもいかないし。
一人で町までって、ハードル高すぎるし。
「サトウ様」
「おう、ジソチか。どうした?」
「例のオークがまた来ております」
「俺はいないって言っておいて」
あれから、俺が逃がした雌オークがちょいちょいここに来るようになった。
一人で帰れないとかのたまって、迎えが来るまで置いといてやったのに。
結局、一人で行き来できるようになるとか。
正直、歩く豚とか興味ないから。
「匂いでバレてますよ? オークは鼻が良いですから」
「なんて迷惑な」
流石にオークのステータスをいじることはできないようなので、未来永劫俺がなびくことはないが。
仕方ないので、適当に話だけしてお引き取り願う。
話の内容は、だいたいいつも同じような中身だ。
この集落とオークの集落で協力関係を結びたいという要望から始まって、趣味や日常の会話へと移行する。
あまり遅くまで引き留めると、日が暮れて帰れなくなったとかのたまうから。
最近では、なるべく早く会話を打ち切るようにしている。
ゴブリン達も迷惑そうだから、そろそろ諦めてくれないかな?
***
「ゴブマルもなんだかんだで、優秀だよな」
「勿体ないお言葉で」
俺の目の前で、ゴブゾウとは別の狩猟チームの体調をやらせているゴブリンが頭を下げる。
こいつは俺がこの辺りで獲れた肉を食べないことを知ってから、早々に果実系に献上品を切り替えた。
別に媚を売るとかではなく、純粋に自分たちの採った物を食べてもらいたいとのこと。
その気持ちが嬉しかったので、有難くいただいている。
他のゴブリン達の視線が、凄いことになっているが。
同じような果実を献上したでは芸がないと、他にも俺が食べるものが何かないかと一生懸命探している。
うん、キノコはやめようなー。
なんか、見るからに毒々しい配色してるし。
もしかして、俺になんか恨みでもある?
「とんでもありません。これは、本当に美味しいキノコですよ!」
そういって、目の前のゴブリンが生のままキノコを齧る。
美味しそうな顔してるけど、ステータスに毒と幻覚って出てるぞー。
まあ、毒の影響がなさそうなところを見ると、ゴブリンには効かない毒なのかもしれない。
ただキノコ食べてるだけなのに、お前は本当に楽しそうだな。
目の焦点が合ってないのが、凄く気になる。
これ、食べちゃダメなやつだと思うぞー!
聞いてるかー?
「ロードも、ぜひお召し上がりください」
聞いてないな……
あと、それ俺じゃないぞー?
お前が話しかけてるの、ただの大きな石だぞー。
「おや? あっちから、誰かが呼ぶ声が」
誰も呼んでないからなー?
とりあえず面白そうだから、他のゴブリンに見張らせつつ放置しておいた。
最終的には地面に穴を掘りだして、その穴に向かってずっと会話してたらしい。
で、最後には穴に顔を突っ込んで寝始めたと。
毒とは別の要因で死ねそうなキノコだな。
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