第2話

 文字通り持ち物全てを失ったので、ぼくは競馬場から自宅まで、全裸で帰ることになった。

 情けなかったが、「これも最後の夏休みの思い出だなぁ」と思えば、開放感にあふれて何だかそれっぽくないこともなく、社会人になったらこんなことできないもんなぁと感慨に浸っていたが、どうやら学生のうちでもやってはいけなかったらしい。ぼくはパトロール中の警官に呼び止められ、交番に連れて行かれてしまった。

「競馬場で全部かっぱがれるなんて馬鹿だね〜馬だけに?」

 警官はデスクの上の地球儀をくるくる回しながら言った。

「仕方ないな。本官の着替えのパンツあげるから、それ履いてかえりなさい」

「すみません、必ず返します」

「いやいらないから。でもきみ、そんな無茶な賭け方するってことは、お金が必要だったのかい?」

「まぁ、そうです」

「それじゃ、いい仕事を紹介してあげようか」

 警官は持っていた地球儀の北極あたりを指でぐっと押した。途端に交番の白い壁が左右に割れ、地下に続く階段が出てきた。

「行ってらっしゃい。これを見たからにはやらないとだめだよ」

 警官はぼくに拳銃を突きつけてきた。しかたがないので、ぼくは全裸のまま階段を下りていった。

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