第3話 壁になりたい

 私は今、テーブルの上にあるパソコンを目の前にしタスクを消化中。頂いたチョコで頭を無理やり動かしているのだが、全く進まない。

 だから、タスク消化を諦めあるコンテストの小説を読み漁ることにした。


 漁る事にしたんだけど、いつもの荒々しい足音が聞こえ始めてきたぞぉ。この足音の速さは、多分走ってるなぁ。転ばないか不安だ…………。


「ぱぱー-----ん!!!!! ブヒッ!!!」

「あ…………」


 やっぱり転んだ。口から豚が出たような気がしたけど、大丈夫?

 泣くかなぁ、泣くかなぁ…………。


「ふぇ…………」

「やっぱり…………」


 泣くかぁ。小説読むのは諦めっ――……


「あら、さくちゃん大丈夫? 転んじゃったの?」

「しののおねぇー-ちゃぁぁぁぁぁあああん!!!!」


 あ、これは黙っておこう。スマホスマホ…………あ、充電ない(´・ω・`)。


「膝とかすりむいちゃったかなぁ。起きられる?」

「ぐすっ。大丈夫…………。痛い…………」

「うん。起きられてえらいえらい」


 ナチュラルに頭を撫でてあげちゃうんだね。


「しののさんは何でここに居るの?」

「少し貴方のパパに用事があったの」

「あ、そうなんだ!!! ん? しののさんタバコ吸ってる?」

「あぁ、匂いで気づいちゃったのかなぁ。臭い?」

「しののさんだから平気!!!」

「そっか。それならよかった」


 さくちゃんって、人との距離が近いんだよなぁ。パパンは心配だよ。よし、カメラの準備はできた。


「ところでさくちゃん。前みたいに”お姉ちゃん”って呼んではくれないの?」

「お姉ちゃん!!!!!!!!!」

「ふふっ。ありがとさくちゃん」

「えへへ。もっと撫でて!!!」

「いいよ。なでなで~」

「わぁい!!!!!」


 てぇてぇなぁ。


「しののお姉ちゃんの用事って何?」

「んー? それはね…………」


 あれ、耳打ち……。てぇてぇ。でも、急ぎではないのかな? 今は壁になってカメラ回すので精一杯だから。


「なるほど!!! 私も一緒にやってもいい?」

「あ、ほんと? なら、一緒にやりましょうか」

「わぁい!!!! でも、もう少しだけ抱き着きたい」

「ふふっ。どうぞどうぞ~」


 これは。姉妹でいいのかわからないなぁ。これは私の目が腐っているからかな? いや、二人は狙ってやって――さくちゃんはないな。


「えへへ。温かい」

「さくちゃんも温かいよ」

「ぐへへへへへへ」


 …………もっとかわいい声で悶えようかさくちゃん。


「それじゃ、もうそろそろいこっかさくちゃん」

「うん!!」


 あれ、カメラを構えている私の方に振り向いた? どうしたんだろう。もっと二人でいちゃついてくれてもいいのに。


「しののおねぇちゃん!!」

「うん、さくちゃん。せーの!!!」


 え、なになに? 


「「お誕生日おめでとうございます!!!!」」


 パーーーーーーン!!!


 …………ん? え、クラッカー?? それに、おた…………え?


「パパン、しののおねぇちゃんがお誕生日祝いに来てくれたよ!! 私は便乗!!」

「二つ持っててよかったぁ」


 わざわざ来てくれたんだ。


「壁になってないで、こっちで話そうよー!」

「ふふっ。こっちに来て一緒に話しましょう」

「これは少し驚いたなぁ。あ、私は壁で良いので」

「だーめ!!!! 間に挟んでやる!!」

「挟んでやる~。ふふっ」


 あぁ。二人に挟まれちゃった。


「ありがとう、さくちゃん、しののさん」

「うん!!」

「えぇ」


 こんな祝われ方もいいね。


「ところで、なんでカメラ持ってるのパパン」

「家族動画を撮っていたんだよ」

「????そっか!!!!」


 さぁて。しののさんは家族になるのかどうか。今は聞かなくてもいいかな。

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