第5話 俺の死


「お前はついてくるな!」


「僕だって盾位にはなれる…」


「魔族に仲間を売った糞野郎に、そんな栄誉はやらない…帰れ!」


「そうだね…ごめん」


此処迄言ってようやくジャミルは俺の元を去った。


『恨んでないか』そう言われれば『恨んでいる』


だが、仕方なかったとも思える…もし俺が逆の立場で、ミルカを返してやるからジャミルを…そう言われたら…心情的には解る。


頭は理解出来ても…心が奴を恨んでいる。


傍に居ない方がお互いに良い…


◆◆◆


俺はもう英雄でなく『復讐者』だ…だから最短でアドレラの住むという古城を目指している。


目につく魔族には問答無用で殺し、魔族が住む場所の井戸には毒を投げ込んだ。


魔族は悪…害虫と同じだ一切の情けはいらない。


『ただ殺す』それだけだ。


◆◆◆


とうとう俺は『悪魔アドレラ』の住む古城にたどり着いた。


「貴様は、英雄リヒトだな! 俺の部下はどうした」


「殺した」


「結構な数が居たはずだが…」


アドレラはおおよそ2メートルを超える大男、青い肌に黒い羽…単純に強い。


「殺した…魔族だからな…」


「お前には慈悲が無いのか…恐らく命乞いした者も居たはずだ…」


「なら、お前に聞く、お前程強ければ、ミルカや俺と充分戦えたはずだ…それがなんで卑怯な方法でミルカを殺した…」


「人間は虫けらだ…殺して何が悪い」


「なら俺も同じだ…魔族に慈悲など要らぬ…貴様は殺す!」


「こい!」


魔剣レイブンで斬りかかるも、固い斬れない。


「その硬さがお前の自信か…」


「ふははははっ斬れぬ、斬れぬ、斬れぬよー-っ、そして死ね」


アドレラの剛腕が俺に迫る…避けた先にクレーターが出来た。


こっちは当たれば確実に死ぬ。


俺はすぐさま斬る体制から体の向きを変え突きに変えた。


狙いは目だ…


「どうだ…目を貫かれた気分は…」


目を突かれてなお動揺しない…此処迄か。


「うぐっ…流石に目は鍛えられぬからな…これで俺は片目を失った…だがお前はもう終わりだ…その体では次の俺の攻撃を耐えられまい」


目を突いた瞬間にアドレラの攻撃が掠った。


掠っただけなのに俺の左手は肩にぶら下がっているだけだ。


「確かに…」


もう手はないな…


「杖よ我が命と引き換えに、敵を滅ぼせ…」


ジャミルが杖を俺が潰したアドレラの目に突っ込んでいた。


「貴様ぁぁぁぁー-っ殺す」


アドレラが引きはがそうとしたが…ジャミルの呪文の方が速かった。


「自己犠牲」


その瞬間ジャミルの杖が閃光し爆ぜた。


ガガガがッガンー――ッ


大きな音と共に辺り一面が血の海になった。


「ハァハァ…妹の仇だ思い知れ…そしてごめん…」



それだけ言うとジャミルは命を引き取った。


下半身が無くなっていたからミルカでも治療は無理だ。


アドレラは上半身が無い、如何に魔族とは言え確実に死んでいる。


「ジャミル…」


「アドレラ様の仇―――っ」


油断した…だが、体は動く…此処で死ぬ気だったから帰りは考えてなかった…


「魔族は皆殺しだぁぁぁぁー――っ」


◆◆◆


左手はもう無い…右手ももう剣は振えない。


どうにか此処迄戻ってこれたな…


俺はミルカの眠っている丘に来ている…花が綺麗だ。


「ミルカ帰って来たよ…今度こそもう離れない…此処でずっと一緒に居るからな」


眠くなってきた…多分、このまま俺は….


◆◆◆


翌日、リヒトの死体は旅人によって見つかった。


その顔は幸せそうに笑っていた…


その場に埋葬され…その場所は『英雄の丘』と呼ばれている。


                   FIN










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「俺の死にざま」 希望無きこの世界で… 石のやっさん @isinoyassan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ