37.悪魔界

悪魔界に通じるゲートは、なんというか気持ち悪かった。

見た目は黒一色で普通といえば普通。ただ、気配というか音が気持ち悪い。ギルドの調査隊は音に関しては何も言っていなかったから、俺が感じる人の音と同じ感じなのだろう。


「まあなんの音かはわからないし入るか」

『主、少しですが中から龍の気配がします』

「どっちのりゅうだ?」

『私と同じほうです』


龍か。少しということは奥のほうなのだろうか。もしかしたらゲートごしだからかもしれないな。


「暗・・・くはないな。身体能力のおかげかな。オロチは大丈夫か?」

『はい、問題ありません。身体能力はそれなりに高いほうです』


そういえばギルドの調査隊は大丈夫だったのだろうか。

まあシュルトのことだし魔道具でなんとかしているだろう。


「そういえばどっちに進めばいいんだ?」

『・・・聞いてませんでしたね』

「とりあえず真っ直ぐ行くか」


・・・

「これで何体目だよ。多すぎだろ」

『これで300体目ですね』

「…数えてたのか」


あれから少し進むと変な芋虫みたいなのに襲われた。これがシュルトの言っていた下級悪魔か。

こんなに数がいるとは聞いてないけど。


「道を間違えたのか、他に原因があるのか」

『後者だと思います。恐らく主の魔力によってきてるのでしょう』

「・・・隠してるつもりだったんだが」

『ええ、普段は隠せています。ただ、悪魔界だと主の魔力が強化されているのか漏れ出ています』


じゃあ全部倒していかないといけないのか。めんどくさいな…。

あ、こうすればいいじゃん。《ファイヤーウォール》

周りを炎で囲えば悪魔が寄ってきても燃えるだろう。


『…こういうサボることに関しては本当に天才ですね』

「だろ?」

『……』


・・・

倒さなくてもよくなったのはいいんだが、ジュージューうるさいな。

下級悪魔には知能が無いのだろうか。なんの迷いもなく突っ込んでくる。


『主、結界がありました』

「お、やっとか。下級悪魔も近づいてこなくなったな」


いつも通り《結界》同士を打ち消すために触れてみると・・・


「ん?普通に通れるぞ」


そのまま入れてしまった。


『主が悪魔王だからでしょう。私は通れません』

「あ、本当だ。打ち消す…オロチ、できるか?」

『できると思います。やったことはありませんが、《結界》の魔法は持っているので』

「じゃあやってみてくれ。すでにある結界と同じ形に展開するだけだ。できるようになっておいたほうが今後に便利だろ」

『わかりました。ただ、魔力が足りなさそうなのでもらってもいいですか?』

「ああ」


張られた結界の大きさのせいで魔力量が足りなかったらしい。

詳しい必要量はわからないので、とりあえず大量に注ぎ込んでおく。


「ん?少し魔力総量が増えたか?」

『…確かに増えましたが、普通の基準でいうと異常な位増えてますよ』

「そうなのか?…わからんからいいか」

『……』


魔力量が多いというのも考え物だな。何か魔力とかを数値化してくれるような物はないのだろうか。

今度シュルトに聞いてみよう。

もしかしたら固有魔法で、異世界お馴染みの《ステータス鑑定》的なのを持っている奴がいるかもしれない。居ても隠しているか、貴族辺りが囲っているだろうけど。

そんなことを考えているとオロチが結界破りを成功させたらしい。


『この結界は自動で張られているようですね。だんだん元に戻ってきてます』

「だな。悪魔界特有の物なのか、人工的…悪魔工的?な物なのかはわからないけどな」

『創造物なら作った者は天才ですね。色々なところが抱え込もうとするでしょうね』

「そうか?直るのが遅すぎる気がするんだが」


魔物とかに破られたら、直る前に入られそうだ。


『結界そのものが硬いので、戦いの最中に全て直すような設計にはしてないと思います。速く直そうとすると、硬度に問題がでると思います』

「長年使えるような設計にしたってことか」

『創造物だった場合はですが』


それもそうか。さて


「やらなきゃいけないのは、悪魔界かどうかを確かめるだったよな?」

『はい、ギルドマスターからの指示はそうです』

「結界破る前にあんだけいたら悪魔界でいいよな」

『いいと思います。それに、目の…』

「目の前の光景のことは何も言うな」


結界を超えた場所はなんというか、もう地獄だった。下級悪魔が大量にひしめいていたのだ。

下級悪魔といってもその姿は大きい芋虫だ。長時間見ていたいものではない。というわけで100階層に《転移》。


「報告に行くか」

『はい』


悪魔界関係はできるだけ断ることにしよう。オロチが感じたという龍の気配は気になるがあの光景は見たくない。

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