36.奥義

「え?神獣様どこかに行っちゃったの?」

「どこかというか旅に出ただけだろ」


帰ってきた俺はシーアたちにアースフェルのことについて話しておいた。

まあ・・・


「「モフモフが・・・」」

「フェンリルに名前ってあったんだ」

「フェンリル様って旅とかするんだ」


いつも通り衝撃の受け方はバラバラで、微妙にずれていた。

あ、大分前にアベルとアースフェルのことについて話そうと思っていたのを忘れてた。

まあ次にアベルと会った時でいいだろう。


「ねえクロト、どこに行くとか聞いてないの?」

「聞いてないな。そもそも地形とか把握してないだろうし、あいつの性格的に色々な場所をうろつくだけだろ」

「そっか。まあいずれ会えるかな。それぞれの国は大きいけど4つしかないし」

「ん。流石にフェンリルも悪魔がいると言われる別次元とかには行かないだろうし」


そういえば悪魔は別次元から来た存在って言ってたな。


「ん?行くことができるのか?」

「どこかに別次元と重なる所があって、それを見つければ行くことが出来るらしい。でも1か所だけだろうから多分見つからないと思う」

「まあ、どっか山奥とかにあったら見つけようがないな」


行けたとしても何か得るものがあるのだろうか。

そういえば悪魔王は別次元でなるのだろうか。…まあ知らなくてもいいか。

あ、誰か来たな。


「麻紀、麻衣。客が来たぞ」

「「はーい」」


来客は麻紀と麻衣に任せている。何故か2人がやりたいと言い出したし、ああいう無邪気な感じの方が相手にいい感じを与えられるかもしれない。そういうわけで2人に任せている。

少しすると2人が戻ってきた。


「ギルドのお姉さんでした」

「少し焦ってたよー」

「わかった。今行く」


ギルドのお姉さん。恐らくシュルトの使いだろう。焦っていたということは前の迷宮関係でなにかあったのだろうか。


「どこか焦ってる感じだがなにかあったのか?」

「…平静を保っているつもりでしたが、気付かれましたか。私も精進しなければなりませんね」


いや、全くわからなかった。やっぱり麻紀と麻衣はすごいな。俺にはわからない感情的なことに対して大分敏感だ。


「ギルドマスターが呼んでいます。迷宮関係で予想外の事態が発生しました」

「予想外?」

「はい。詳しいことはギルドマスターにお聞きください」


予想外の事態か。予想外ということは何か複雑なことなのだろうか。とりあえずシーアたちに事情を説明して、シュルトの元に向かった。

…地下にあるシュルトの部屋に行くとシュルトは書類に囲まれていた。

レーガンもだがシュルトも相当書類が似合わない。


「ギルドマスター、来てもらいました」

「ああ、クロトか。少しまってくれ。そろそろ終わる」

「わかったさて、

それにしてもこんな書類が必要になるなんて何があったのだろうか。


・・・


「ふう、待たせたな。さて、迷宮で完全に予想外の事態が起きた」

「それはもう聞いた。何があったんだ?」

「100階層に変な門のような物が出てきた。・・・恐らくにはなるが、悪魔がいるとされる別次元に通じていると思う。ギルドの人間が近づいた途端に低級の悪魔が出てきた」


…さっき見つからないだろうって話をしたばかりなんだが。


「ん?低級って悪魔には精霊みたいな階級があるのか?」

「公式の物ではないがな。魔力を測る魔道具があって、それを基準にしている。ギルドの調査隊全員に持たせていた」

「高い物じゃないのか?」

「欠陥品だから1つにつき1回しか使えないんだよ。そのおかげで安い」

「ふーん」


俺に使ったらどうなるんだろうか。正確な魔力量を知ってみたいとも思うが、壊れたらいやだからやめておこう。


「まあいい。で、俺は何をすればいいんだ?」

「入るだけでいい。調査隊も入ることはできたんだが少し進んだだけで結界のような物があってそれ以上進めなかったんだ。お前なら行けるんじゃないか?」

「多分な。どの位まで行けばいい?」


多分結界破りはできるだろう。ただ、中になにがいるのかわからないのだ。下手をすれば悪魔王がゴロゴロいる可能性もある。そうなると考えると正直行きたくない。


「本当に悪魔のいる別次元・・・悪魔界でいいか。悪魔界かどうか確かめてきてほしい」

「確認できたら戻ってきていいのか?」

「ああ、それで頼む」

「了解。じゃあ準備してから行く」


今回シーアたちは連れて行かなくてもいいか。悪魔関係以外が入ったらどうなるかわからないからな。

外に出てから迷宮の100階層に《転移》をする。


「あれ?迷宮主復活してる。あ、ちょうどいいや。オロチ」

『なんでしょう、主』

「あの亜竜を倒すぞ」

『承知しました』


オロチに武器化してもらう。

今までオロチが持っていた記憶の技をたいして使ったことがなかった。

俺が得た記憶は2種類。普段の剣技といくつかのだ。


「《桜蛇おうじゃ》」


一瞬で距離を詰めて、亜竜にオロチを差し込み、そのまま左右しながら亜竜の体を登っていく。

切り口が蛇のようだから桜蛇なんだろうな。ただ、これは本来大人数に対して使うものらしい。普通に使えると思うんだが。そういうと・・・


『それは主だからこそできるのです。普通は亜竜の体なんて登れません』


と言われた。人によってはできると思うんだが、まあいいか。

どうもオロチは桜を司る龍のようだ。全ての奥義に桜という字が入っている。


何はともあれさっさと行こう。

悪魔界はどんな感じなんだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る