06.休日と・・・

「今日は休んでいいぞ、クロト。・・・そんな、なんで?みたいな顔するなよ・・。毎日冒険者のことを気にかけてくれるのはありがたいが、それだとお前の休む時間が無くなる。今後は毎週1回休め。」

「・・・そうだな、そうさせてもらう。今日は町の散策でもするよ。」



レーガンが言うような気持ちがないわけでもないが、根本的には違う。疲労を感じ無いせいで休むということを失念していた。・・・こういう他人に無関心な感じが出ると魔王なんだなと感じる。まあ元の世界よりそれが少し強くなっただけなのだが。


1度宿に戻り、散策の前にやりたかったことをする。昨日のうちに蝙蝠を捕まえておいた。

・・・牙を出し、蝙蝠を軽めに噛んで自分の血を流す。

眷属化だ。師匠に教えてもらったが忙しくて忘れていた。

・主人の血が眷属の主な食事となる。

・眷属化された生物は魔物となる。

・魔物化した生物は種族ごとに特性を得る。

・眷属とその主人は念話ができる。ただし眷属の知能が低いと会話ではなくその文の意味が伝わる。

これが眷属化だ。


・・・成功したようで、蝙蝠の思念が来た。

なになに・・・『お腹空きました。血をください。』一声目(意味がつたわるだけだが)がこれか。なんか残念だな・・・。

まあいい『やるのはいいがあげたら他の蝙蝠を連れてきてくれ。』というと了承の意が返ってきたので、血を与えた.蝙蝠は10秒ほど血を吸って他の蝙蝠を探しに行った。

・・・蝙蝠の特性は分身だ。蝙蝠が2体になる。ただしその分身ができるのは主人の元へ帰ることだけだ。それでも分身を解けば元の体に分身の記憶は移る。例えば怪しい誰かの元に分身を飛ばしてその誰かの会話内容を分身に聞かせて、分身を解く。それだけで会話内容がわかる。また分身が殺されてもその位置が分かるのでアジトを探すみたいなことができるのだ。


さて、その特性を使ってやることは分身を小さいガラス瓶に突っ込む。それを誰かの懐に入れるそれだけだ。ガラス瓶に突っ込んで持ち歩こう。誰かにあったらその時でいいや。まずは町の散策だ!


「蝙蝠が意外な所で役に立ったな・・・」


忘れていたのだハラルが入り組んでいるということを。そこで蝙蝠!複数の蝙蝠を空に放って街並みを記憶させる。そして記憶を合成させる。これだけで脳内地図の完成だ。初めて吸血鬼王で良かったと思えた。


「さてと、それは良かったんだが・・・あれは迷子か?」


そう、迷子っぽい子供見つけた。見つけたのだが・・・身なりがいいのだ。なんか貴族っぽいということで蝙蝠に街中をまわってもらった。見つけたのは豪華な馬車となにかを探しているような騎士とオロオロしているメイドさん。・・・うん、確定だね。


「君どうしたの、迷子?ああ、俺はクロトよろしく。」

「レ、レイネシア・シー・・・レイネシアです。」


うん苗字名乗りかけたね。しょうがないか。


「どの辺から来たかわかる?分かるなら案内するけど。」

「・・・」

「ああ。俺のことはレーガンが保証してくれる。」


怪しまれていそうだったのでとりあえずギルドマスターの名前を出す。


「・・じゃあお願いします。」


やっぱり知ってたか。


「わかった。来た所の特徴わかるか?」

「・・・噴水があった。」

「うん。そこならわかるな。着いてきて。」


そういって歩き始める。そこから少し話ながら馬車のほうに向かっていく。

・・・

なんかめっちゃ懐かれたんだが。まあいいか。噴水に近づいてきた所で・・・


「レイネシア。これはお守りみたいな物だ。なにか危ない目にあった時はそれの蓋を、開けて。助けに行ってやる」


なんか孫みたいに思えてきたので例の蝙蝠瓶をわたしておく。


「うん。ありがとう!あと私のことはレーネでいいよ。」

「わ、わかった。」


いや少しは疑おうよ。それと1対1のときならいいけど公の場でレーネなんて呼んだら不敬罪とか言って捕まらないかな・・・まあ逃げられるけど。


「あっ、ここまで来たらわかるよ。ありがとう、また今度お礼する!」

「いや、礼はいいよ。気を付けてな。」


レーネは大きく頷くと走って行った。・・・今度会うならまた1対1の時にしてくれ。頼むから。

レーネとあった翌日。

俺はいつも通りギルドに来た


「うん。ギリギリ間に合ったな。・・ん?」


なんかギルドが慌ただしい。人でいっぱいで通れない。こういう時に便利な《影魔法》。影に潜って人の下を進んでレーガンの部屋に行く。こういう時はギルドマスターに聞くのが早い。レーガンの部屋に直接入る。


「・・・クロト、お前はどうやってここに入ってきたんだ。はあ、まあ丁度いいか。下の騒ぎは見たんだろ?」

「ああ、何があったんだ?」

「実は『暁』っていうパーティーが西の森で行方不明になってな。人気のあるパーティーだったから、伏せておこうと思ったんだがな・・・。大分親密な友人がいたようで漏れてしまったんだ。」

「へ~。で、丁度いいってことは俺が行けば良いのか?」

「ああ、頼んでいいか?パーティー情報はその紙にある。」

「りょーかい」


そういって部屋を《影魔法》で出る。ギルドを出て近くの路地裏に入る。


「座標登録しておいてよかった《転移》。」


さてさて『暁』の情報は、人2人、獣人1人、エルフ1人・・・あれ?この間のパーティーか。


『人2人、獣人1人、エルフ1人の4人組を探せ。』とりあえず蝙蝠に探させて、自分は空を飛んで上から探す。今はそれくらいしかできないか・・・。


10分経ったが何も見つけられない。飛んでて見つからないということは地上にはいないのかな?

『洞窟を中心に探せ。』

この命令から5分。やっと反応があった。これは洞窟というより・・木の洞だな。とりあえず入ってみる。


「本当は暗いんだろうな。」


吸血鬼王の視覚のおかげで暗い所も問題ない。・・・足跡がある。自分から入っていったのか。

所々魔物の死骸があるが、人は見当たらない。どこまで行ったんだ?蝙蝠を先行させているがまだ道があるだけだ。


進み始めて10分。


「誰か!助けて!」


悲鳴が聞こえた。後ろということは・・・


「隠し部屋か!」


ミスった。もっと周りに注意を払うべきだった。隠し部屋にいたのは・・・


「トレントか。めんどくさいな。」


ギルドにある資料で魔物のことは調べていたのでだいたいの魔物は分かる。しかし、今回は人がどこにいるかわからないので火の魔法は使えない。となると・・・


『トレントに捕まっている奴の位置を教えろ。』これしかない。迫ってくる蔦を切りながら報告を待つ。


来た。


「生きているのは1人だけか。とりあえず1人助ける!」


ある程度は短剣で深く入れるだろうがで後ろから周り込まれるので迂闊に行けない。ここは《グリーンウォール》だな。これは蔦のバリアなのでそれを応用する。後ろからの蔦グリーンウォールの蔦で絡めとり、前の蔦は短剣で切っていく。見えた!トレントの蔦に捕まっているエルフ。先ほどの悲鳴の後で気絶したようだ。周りの蔦を切ってエルフを取り出していっきに後退する。


「やっと終わらせられる。《ファイヤーボール》!」


ドンッ


何気に今までで1番戦闘時間が長かったかも・・・。


とりあえずギルドに連れて帰るか

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