第3話

僕は死んだ。


僕の学校って川向こうにあったでしょ。

ランドセルなら五年背負った。それで、もうすぐ六年目になろうっていう冬のことだったよね。

寒かった。

僕はやっぱり川向こうの友達の家で遊んだ帰りで、一人で橋を家まで渡っていたんだよ。ママの言う通りだ。

それでさ。

車の大きなブレーキ音が聞こえた時、振り返る間はなかったんだ。

だからどんな車に轢かれたか、僕は覚えていない。

ごめんね。

とにかく強い衝撃があったこと。

そして僕が、即死ではなかったこと、それだけは覚えている。

即死なんて言葉をなぜ知ってるのって?

ゲームのプレイ中によく言うのさ。友達がね。

誰が言い始めたのかは分からない。

誰かが何かで覚えてきたワードだよ?大したことじゃないから心配しないでママ。

とにかく。僕はすぐには死ななかった。

生きてたんだ。

声は出なかった。

だけど、生きてることは触れば分かったはずだ。

だから抱き上げられた時、助けてくれるのだと信じてた。

まさか川に捨てられるなんて。


その後のことはもう何も分からない。

ごめんねママ。犯人のことは何も見てないし、覚えてない。

ママ、ごめんね。








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