第4話 ゲームセンターに行きたか!


「プリントはちゃんと親に渡すように。それじゃあ帰りのホームルームを終わります。部活動の奴等は頑張れよ~」


 担任教師のかけ声によって移動を開始するクラスメイト達。


 部活動のある者、速攻で帰宅する者、仲の良いグループで集まり会話に華を咲かせている者。

 それぞれが放課後の時間を楽しんでいた。


 そんな集団から離れた一番隅の窓側。

 俺はカバンを整理しながら、隣の席の友人とオタクトークにいそしんでいた。


「やはり今季の覇権はスト始であるな。明人もそう思うであろう?」


「最新話めっちゃ神回だったな。伏線回収完璧すぎだろ」


 最近、放課後の時間は神宮寺とこうやってアニメの話をしている。

 どうやら神宮寺と俺の好みが合うらしく、毎度の事白熱した議論を繰り広げていた。


「時に明人よ。汝は電子の遊戯をも好むと言ったが、それは休息の地にて行うのか、はたまた遊戯の園にて悦楽えつらくを求めるのかどっちなのだ?」


「基本的には家だな。コンシューマーゲームもスマホのソシャゲもどっちもやってるよ。最近は全然行ってないけど、昔は毎日のようにゲーセンに行ってたな」


「な!明人は遊戯の園に行ったことがあるのか!?」


 何故か驚いた表情を浮かべる神宮寺。

 今時ゲームセンターに行ったことがない奴の方が少ないだろう。

 それはゲーマーである俺ならではの感覚で実際には行かないものなのか?


「神宮寺は行ったことないのか?」


「うむ。遊戯の園は禁則の地。我一人の力では不測の事態に対応出来ず心許ない。故にかの場所は避けておったのだ」


 心許ないとは以外だ。

 あの強メンタルの神宮寺であれば、臆する事なく一人で行ってしまいそうであるが。


「久しぶりに行ってみるのも楽しいかもな」


「ほ、本当か!?」


 キラキラとした目でこちらに期待の眼差しを向ける神宮寺。


「ゲーセンに行ってみたいのか?」


「行きたか!......うむ。今後の戦いに備え経験するのも悪くない」


「それじゃ一緒に行ってみるか」


「うむ!」


 両腕を使い喜びを表現する神宮寺。

 まだ行ってもないが、そんなに喜ばれるとこちらも嬉しくなるな。


「あ、明人よ。遊戯の園には何を準備すれば良いのだ?せ、制服で行って悪い奴等に目を付けられたりしないか?」


 喜びとは一転、急に不安そうな顔をする神宮寺。

 制服でゲームセンターに行っちゃダメだなんて聞いたことないが、本当に行ったことがないんだな。


「全然大丈夫だって。多分制服の高校生も何人か居ると思うぞ。財布持ってれば何とかなるって」


「そうか!そうと決まれば早く行くぞ明人!待っている時間も惜しい!」


「分かった、分かった」


 そんな神宮寺に急かされ俺たちは教室を後にする。

 思い返せば友人と放課後に遊びに行くのは高校に入って初めてかもしれない。

 ゲームセンターには何回も行ったことはあるが、なんだかワクワクするな。


 自身の腕を引っ張る少女を見ながら俺はそんな事を思うのだった。







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