第5話 初めてのゲームセンター 1
数多の機器から漏れ出す電子的な音が入り交じった重低音。
ゲーム機から溢れでる目に悪そうな光が、薄暗いフロア全体を眩しいくらいに照らしている。
人が多い所為か、はたまた密封された空間の所為か、肺に入ってくる空気は少し重たく、喉がイガイガするようなタバコの残り香が毎日通っていたあの頃を思い出させる。
そう、俺たちは放課後にゲームセンターを訪れていた。
「こ、これが全て電子の遊戯か!?」
「あぁ、UFOキャッチャーもアーケード筐体もメダルゲームも全部遊べるぞ」
「すごいな明人!何からやろう!何がオススメだ?」
「シューティングゲームでもやるか?ちょうど二人用だし」
俺は車型のガンシューティングゲームを指さす。
どうやら俺が通っていた頃より新しくなっているようだ。
「あれもゲームなのか?」
「入ってみれば分かるぞ」
俺達は
薄暗い車内は狭い為、お互いの太ももが触れ合うように座り込んだ。
「おぉー!中がこのようになっていたのか!で、この銃で敵を倒せば良いのだな?」
「そうそう、やってみるか神宮寺!」
「うむ!」
俺は固定された銃の引き金を握り、感触を確かめる。
ガンシューティングゲームは散々遊んだ事があるがこのゲームは初めてだ。
もしかすると、相当腕が鈍っている可能性もある。
久しぶりのプレイだし、リハビリがてら気軽にやるのも良いかもしれない。
そんな事を考え、画面を見ると本日のスコアランキングが映し出されていた。
ランキング上位には同じプレイヤーの名前が表示されており、上位を総なめしていた昔を思い出す。
気軽にやろうと考えていたが、どうせやるからには上を目指したい。
ゲーマー魂に火をつけた俺は300円を投入した。
「神宮寺、1位を目指すぞ!」
「わ、分かった。で、我はどうすれば良いのだ?」
「ターゲットに狙いを合わせて引き金を引いてくれ。俺が赤のマーカーで神宮寺は青のマーカーだ。俺が敵をロックオンするから、同じ敵を狙ってくれ」
「分かったぞ!」
画面が切り替わりゲームがスタートした。
「おっ!おお!銃の振動が伝わってくるぞ!」
「あぁ、結構本格的だろ?神宮寺!左の敵!」
「任せるが良い!」
左側から飛び出てきた化物にヘッドショットをお見舞いする神宮寺。
初プレイのはずだが、なかなか筋が良い。
鍛え上げれば、良い射撃手になるかもしれないな。
俺たちは特に苦戦する事なく最終ステージに到着する。
最終ステージはボス戦であり、二人の連携がより強く試される。
大型ボスの中心には『ここを攻撃してください』と言わんばかりにコアのような物が埋め込まれていた。
おそらく、コアを集中的に攻撃してダウンを取らせる仕様だろう。
「神宮寺真ん中だ!真ん中のコアのような所を集中的に狙ってくれ」
「心臓辺りの丸い奴だな?分かったぞ」
コアを目掛けた集中攻撃を開始する。
しばらくすると、ボスが片膝を着きダウンした。
「今だ!撃ちまくれ!」
俺のかけ声と共にカシャカシャと引き金を連射する音が響き渡る。
HPバーがゼロになったボスが倒れ混み、画面に大きくCIEARの文字が浮かび上がってきた。
「よっしゃ!やったな神宮寺!」
「さすが盟友明人だ!我達に敵う者などおらぬな!」
俺たちは狭い車体の中でハイタッチを交わす。
こういったゲームは1人で楽しむのが至高だと考えていたが、2人で遊ぶのも悪くない。
「ランキング4位だぞ!これは結構凄いのではないか!?」
「初めてにしては上出来すぎるくらいだ!1位もそう遠くないな」
「本当か?もう一回やるぞ!もう一回だ明人!」
そう思えたのも一緒に楽しめる相手だったからだろうな。
幼子のようにはしゃぐ少女を見ながら、俺はもう一度銃を握り直すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます