第7話 貴宅

「依頼内容は猫探しだったと思うんだけど……見つけてきたのが傷だらけの女の子二人ってのはどう言うわけなんだい? 夏樹」


「…ごもっともなことで。俺にもわかんないよ。社長」



 -----あの後。

 唯一は「詳しいことは後日追って連絡するから」と言って、剣柄に何やら話した後で去っていった。まるで台風が通り過ぎた後のようになった廃墟の中に、俺たち三人は取り残されたと言うわけだ。


 怪人と怪獣と怪獣狩り。


 全く立場の異なる、一触即発の関係にある三人が同じ空間にいると言う状況。普通なら戦闘再開の流れなのだろうが……。

 今はお互いがお互いに、あまりに傷つきすぎていた。

 その中で最も外傷が少ない俺は、この状況の帰着点を提示せざるをえなかった。最悪だ。


「二人とも、今から俺の家来ない?」


 これでは誘い文句だ。変態だ。


「…宿無き身としては正直助かるけど、こいつも連れてくっていうのはどうなの? 一応犯罪者だよ?」


 そう言って気を失っている剣柄を指差す引金。


「あー、まあうちの社長は割とそう言うの気にしない人だから。たぶん大丈夫」


「いやそう言う問題じゃなくて……ま、いっか。じゃ、よろしく」


 そんな適当な流れがあり。俺たち三人は仲良く肩を組んで、俺が住み込みで働いている何でも屋-----「バンシー」を訪れたのだった。



「まったく次から次に面倒ごとが増えて困るなあ」


 そうは言いつつ、しかし満面の笑みで応接間のソファーに剣柄を寝かせる社長。安定のワーカーホリック振りである。

 あちこちに転がっているエナジードリンクの空き缶につまづかないように細心の注意を払いながら、俺はその向かいのソファーに腰掛ける。ようやく一息つけるという安心感に、思わずため息が出た。

 …ちなみに引金は現在、入浴中。


「……それで結局、この二人はしばらくここに住むってことでいいの?」


 何やら資料に目を通しながら社長が言う。

 余談ではあるが、この何でも屋の事務所はとある雑居ビルの二階を間借りして成り立っている。故に敷地面積は少し広い程度。部屋に関しては今俺がいる応接間とシャワー室、お手洗い、俺の部屋(6畳くらい)、後空き部屋が一つくらいのものだ。引金にはその空き部屋に寝泊まりしてもらうことになるだろう。


「引金は----今風呂に入ってるやつはそうなると思うけど、剣柄は怪我が治ったら帰ってもらうつもり。色々面倒なことになりそうだし、本人も嫌だろ」


「怪獣狩り、か。噂には聞くけど本当にいるとはね。確かに彼女を長い間匿ってるわけにはいかなそうだ。怪獣狩りと抗争するか国と戦争するかの二択を迫られることになる。…まったくこれじゃ、怪獣にやられる前に過労で死んじゃうな。ま、それはともかく彼女の件は了解した。悪いけど僕は面倒見れないからね。その辺のこと、頼んだよ」


「……おーけー」


 と、会話がひと段落したタイミングで。


「……ここは」


 剣柄が目を覚ました。

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