チアガール衣装のアイドルっていいよね……

「アイドル……ユニット……」


「そう。『ダメンズ』は四人組のアイドルユニットだ。個々の人気も確かに上がっているが、それでも初期はメンバーの仲の良さを売りにしていた時期もあった。決して誰かひとりの人気に頼り、駆け上がってきたわけじゃない。お前も一桁ナンバーなら、そのことを知っているはずだ」


「そ、それは……」


「だが、今のお前はなにをしている? 上北もそうだったが、自分のクラスに推しのアイドルがいるからと、そいつに夢中になって平然とファン同士で対立した。おまけにお互いを煽り合う始末だ。あの時俺がお前らにどれだけ呆れたか分かるか? ……分からないだろうな。分かっていたら、あんなに楽しそうに出来るはずがない」


 ここで俺は一度目を伏せる。


「そもそも、俺は球技大会にやる気なんてなかった。考えが変わったのは、お前と上北のやり取りを見たからだよ。同じアイドルグループ間で、互いの推しのために争うなんて、馬鹿なやり取りを、な」


「ぼ、僕は……」


「『ダメンズ』のファン同士で対立して、一体なんの意味がある? 応援してくれるファンたちが、自分たちのことで争い始めるとか、当人たちからすれば嫌に決まってる。だから俺は、優勝すると決めた。お前らに自分たちがしていることの愚かさを気付かせる。愛する『ダメンズ』のためにな……」


 ふぅっと、息を吐く。呆れたように。

 俺がいかに『ダメンズ』のことを考えていたのかを、態度から伝えるためだ。


「く、葛原……そうだったのか……」


「俺、誤解していたよ。お前、本当に『ダメンズ』のファンだったんだな……」


 クラスメイトたちが感銘を受けている姿も、俺の言葉に説得力をより与えてくれることだろう。

もっとも、冷静に考えれば時系列的に俺がそんなことを考えて球技大会の優勝を掲げたわけではないことは明白なのだが。

 まぁ後でそのことに気付く分にはどうでもいい。今この場でこういう反応をしてくれることに意味がある。クラスメイトたちのアホさに感謝しながら、俺は話を続けていく。


「で、でも! ルリ様が実際にどう考えているかなんて、分からないだろう!?」

「なんだ、まだ足掻くつもりなのか? もう自分が間違っていることに気付いているだろ?」


「うるさい! 僕は、僕は間違ってなんか……」


 なおも足掻こうとする三下。

 だが、これもまた想定内。丁度準備も終わったようだし、最後の仕上げをするとしますかね。


「三下、あれを見ろ」


 俺はグラウンドの外を指差した。


「なっ……!?」


 釣られるように目を向ける三下だが、直後その目は大きく見開かれることになる。


「フレー、フレー! カ・ズ・マ!」


「ガンバレ! ガンバレ! カ・ズ・くん!」


「どちらのチームもガンバですよー! 一番カワイイのはルリですけどね!」


 そこには雪菜、アリサ、そしてルリという、『ダメンズ』のアイドル三人の姿があった。

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