ロクでもないやつばっかだなぁ……

「どうします。といっても、断る選択肢なんてないですよね」


 俺が頷き、自分の望み通りの未来が訪れる。そう信じて疑っていないのだろう。

 そんな三下を見て、俺は内心呆れてしまう。


(ったく、伊集院といいこいつと言い、『ダメンズ』の一桁メンバーはどうしてこう周りが見えないやつばかりなのかね)


 『ダメンズ』がそんなやつらを惹き付けるのか、あるいは惹き付けられた結果、こんなふうになってしまったのか。

 ……どっちでもいいか。どうせ深く関わるつもりは全くないしな。こいつらに脳の容量を割くよりも、将来どうやって働かずに生きていくかを考えるほうがよほど有意義に時間を使えることだろう。


「先輩も『ダメンズ』のファンなんでしょう? セツナとアリサに貢がせているのは許しがたいことですが、幸い最推しではないため、僕にとっては許容範囲です。ルリ様を女王様と崇め、踏まれる光栄を身に感じることで先輩もきっと目が……」


「アホか。そんな取り引き呑めるわけないだろ。却下だ却下」


 特に悩むこともなく、俺は首を横に振った。

 三下は知らないだろうが、ルリとはお金を貰える関係を築けているのだ。

 わざわざ下僕なんぞになる理由はどこにもない。


「……何故です。ルリ様の下僕になる以上の幸福などこの世にあるはずがないというのに」


「俺はお前は伊集院と違ってドMじゃないんだよ。下僕になんざなっても、嬉しくともなんともないっつーの。大体、女王様とか言ってるが、ルリはそうなることを望んでいるのか? ルリが目指しているのは世界一カワイイアイドルだったと記憶しているんだが」


 本人がめちゃくちゃ嫌そうにしていたことを知っているだけに、ここはちょっと聞いてみたいところではあった。


「流石に良く知っていますね。確かにそうですが、僕は常々思っていたんですよ。ルリ様のあの無邪気で小悪魔な性格は、女王様に向いていると。ルリ様の可能性を、僕は引き出してあげたいんですよ」


「本人が望んでいなくてもか」


「やれることが増えた方が、後々仕事で活かされることもあるでしょう。アイドルなら猶更ね」


 自信満々に言い切る三下。

……この様子じゃ、いくら口で言ったところで平行線を辿るだけだろうな。

聞くことは聞いたし、三下との会話はここまでとしよう。


「そうか。お前の考えは分かった。なんにせよ、交渉は決裂だ。お前の提案に、俺は乗らない」


「……そうですか。面倒ですが仕方ありませんね。なら、実力で叩きのめしてあげることにしましょう」


「それはこっちの台詞だな。お前は分かっていない。お前の間違いを、俺が教えてやるよ。精々頑張って決勝に上がってくることだな」


 あくまでルリのためと言い張る三下に、俺からかける言葉はもうない。

ならば、やつにとっては酷かもしれんが、相応しい舞台で自分の間違いを思い知らせてやることにしよう。

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