ヒ〇メルならそう言う!!!

俺が点を取ると同時に響く歓声。

 主に盛り上がっているのはチームメイトたちであるが、外野を見ると女子たちも何人か見に来ているようだ。

 そこには雪菜やアリサの姿も含まれている。嬉しそうにこちらを見る幼馴染たちに軽く手を振ると、倍くらいの勢いでブンブンと振り返してくる雪菜たち。

 あの様子だと、結構な好感度を稼げているだろう。いいところを見せられたようで何よりだ。


「フッ……まぁ当然と言えば当然だがな。流石俺、何をやらせてもパーフェクトだぜ」


 自分の完璧超人ぶりに惚れ惚れする。

 勉強もスポーツも出来るうえ、イケメンで将来養ってもらえることが確定しているとか、あまりにも人生の勝ち組すぎじゃないか? 自分で自分が怖くなるぜフフフ。


「ちょっと待て、あれってオフサイドじゃないのか!? 審判ちゃんと判定しろよ!」


「この大会にはオフサイドのルールはない。したがって、抗議は認められない。得点はそのままだ。プレイを続行する」


 己の素晴らしさに酔っている間、何やら上北が審判に抗議しているようだったが、残念ながら彼らの意見は却下された。

 ま、当然だな。球技大会は所詮学校行事であり、レクリエーションの一種でしかない。

 オフサイドのルールなんて大抵のやつには分からないし、細かいルールはナシにしてスポーツを楽しむことを優先されるのが一般的だ。

 怪我に繋がるような危険なプレイさえしなければ、大抵のことはスルーされる。その程度のことは、事前に把握済みだった。


「マジか……」


「で、でもあのスライディングはないだろ! あれは明らかに危険行為だったぞ!」


 ふむ、スライディングか。確かにあれはちょっと危ない行為ではあった。

審判も同じことを思ったようで、指摘を受けてチラリとこちらを見てくる。

 対し、俺は小さく頷いた。それでこちらの意図は伝わったようで、審判は相手チームの訴えに首を振る。


「問題ない。確かにスライディングはしていたが、足はボールにいってたからな。ほら、早く再開するぞ。時間が詰まってるんだからな」


「ぐっ、畜生……」


 ガックリしている相手チームだったが無理もない。

 あれがセーフなら、今後はあれくらいのラフプレーをしても笛を吹かれることはないも同然だからな。

 それはつまり、さっきと同じプレイがまた繰り返されるということに他ならない。


(ククク……恨むなら、審判の買収すら出来ない自分たちを恨むんだなァ)


 俺はそんなヘマな真似はしない。

 勝利のためなら文字通りなんでもやる男であり、そのためには審判を抱き込むことだって禁じ得ないのだ。

 クラスメイトたち同様、コスプレ写真によってあっさり買収出来たのだから、実に楽な仕事だった。


「さぁて。じゃあゲーム虐殺を再開しようか」


「世のため俺のため、そしてなによりコスプレ写真のため! 悪いけど死んでくれ! 先輩なら後輩の犠牲になるのは本望だよなぁっ!?」


「死ね! ヒ〇メルならそう言う! 葬送のフリーランじゃああああああ!!!」


「シスターが! 巫女服が! 僕たちを待ってるんだよおおおおおおおお!」


見敵必殺サーチアンドデストロイ! 見敵必殺サーチアンドデストロイだ! コスプレ写真ばんざあああああああい!! 『ダメンズ』サイコオオオオオオオオオオオ!!!」


「「「ヒィィィィィィィ…………! こ、こいつらやべぇぞ!? 正気じゃねぇ!?」」」


 殺る気満々のクラスメイトたちの悪鬼のごとき凶相を見て、震えあがる相手チームにもはや勝ちの目は微塵もない。

 最終的に10―1という圧倒的なスコアで、俺たちは悠々と二回戦進出を決めたのだった。


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