これは多分よくいる当て馬枠ですね、分かります
会議室に着くと、既に多くの生徒が着席していた。
どうも俺たちが最後だったらしく、空いてる席がないかと軽く見渡すのだが、終わるより先に猫宮に腕を引っ張られる。
どうやら俺より先に見つけたようだ。目ざといやつだなと密かに感心しながら席に座ると、それを待っていたかのように上座に座っていたひとりの生徒が話し出す。
「さて、皆。今日はよく集まってくれたね。俺は今度の球技大会の実行委員長を務める三年の
よく通る爽やかな声だった。ついでに顔もこれまた爽やか系のイケメンである。
球技大会ということもあってかどことなく体育会系の匂いを感じるが、物腰は柔らかいし、雰囲気は悪くない。
少なくともチョイ悪系の聖よりは人気があるんじゃないだろうか。
そう思い、チラリと横を見るが、猫宮は上北のほうではなく自己紹介を始めた生徒たちのほうに注目しているようだ。
この分だと、猫宮のお眼鏡に叶ったわけではなさそうだな。そんなことを考えていると、あっという間に俺の番がやってくる。
「二年D組の葛原和真。面倒な仕事はやらないんで、楽なことだけにしてください。あと頼まれごとをしても引き受けるつもりは一切ないんでそのつもりで。よろしくお願いしまーす」
我ながら適当な挨拶だったが、まぁこんなもんだろう。
真面目にやりますみたいな雰囲気を最初に出しておくと、色々仕事を頼まれかねんからな。
初っ端の第一印象が重要なのはこの世の常なのである。
「全く、アンタってやつは……」
隣で俺の前に無難な挨拶をした猫宮が頭を抱えていたが、そんなことは知らん。
愛想良くしたって金が入るわけでもないんだ。楽が出来るからしたほうがいいに決まってるのだ。
「え、葛原って、あの……?」
「確か幼馴染の『ダメンズ』を食い物にしてるっていう……」
静観を決め込んでいると、なにやら周囲が微妙にざわついていた。
なにやら俺は注目の的になっているようだが、そんなに見られるとちょっと照れるな。
「そうか、彼が例の……なるほどな……」
気付けば上北もこちらを見ており、なにやら納得ように頷いているが、まだ挨拶は続いているのに委員長としてそれでいいんだろうか。見ろ、今挨拶してるやつとか誰にも注目されていなくてちょっと涙目だぞ。
誰も拍手をせずにスルーとか、トラウマにならないといいんだが。
「さて、これで一通り挨拶を終えたね。今日は初日だし、各クラスの参加者名簿を出してもらって解散といきたいところなんだけど……その前に、俺からひとつ言っておきたいことがある」
まぁそんなこんなでもはや必要があるのか分からない挨拶が終わり、一息ついたところで上北がまた話を切り出したのだが、
「悪いが、大会で優勝するのはうちの三年A組だ。これはもう既に決まっていることだから、君たちはそこまで頑張らなくてもいい。大会を楽しむことを、どうか優先してもらえると助かるな」
爽やかボイスで、そんな聞き捨てならないことを言いだした。
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