波乱の予感
色々ありすぎたゴールデンウィークから、二週間が過ぎた。
二年生に進級してから、正確に言えばとあるお嬢様が転校してきてから俺の周りではとても普通とは言い難い様々なイベントが起きていたが、ここ最近は平和なものだ。
学校に登校すれば、男子はいつも通り『ディメンション・スターズ!』の話題で盛り上がっているし、女子も女子でそんな男子たちを横目で見ながら思い思いの会話を口にしている。
アイドルが通っているということもあり、大半の生徒が『ダメンズ』のファンを公言している生徒の多い学校だが、先日のライブの件もあってますますアイドルたちに対する熱が加速しているようだ。
俺の幼馴染である小鳥遊雪菜と月城アリスはその話題に挙がっているアイドルグループ、通称『ダメンズ』に所属しており、特に名前を耳にすることの多い二人でもあった。
そのたびに俺としても鼻が高い思いをしてきたのだったが、最近では同じ『ダメンズ』に所属している一学年下の下級生である立花瑠璃とも接点が出来、密かな優越感を感じていたりもする。
ただ、このことは誰にも話していない。俺とルリの繋がりを知っているのはそれこそルリと、俺と同じクラスにいるお嬢様のメイドでる女の子だけである。
ま、そのことは今はいい。とにもかくにも、今の俺の生活は穏やかに過ごせているというわけだ。
クラスの騒がしさには多少辟易することもあるものの、それ自体は別に悪いことではないだろう。
現役人気アイドルが所属していることもあって、ひと際精鋭されたドルオタ……もとい、熱意がある生徒が揃っているからな。
他クラスからは羨ましがられることも多いし、我が二年D組は個性的なクラスとして徐々に認知されつつあるようだった。
さて、俺こと葛原和真もそんなD組に所属している生徒のひとりではあるが、俺自身は特に特徴もなく、至って平凡などこにでもいる男子である。
強いて人と違う点を挙げるとすれば、幼馴染がアイドルであることと、その幼馴染を含めた複数の女の子からお金を貢がれていることくらいだろうか。
絶対働かないという目標を掲げる俺としては、将来に向けてその可能性が高まることは有難いというしかない。
もっとも、金はあるだけ遣ってしまうのでいつも素寒貧ではあるのだが。
まぁ俺はまだ一六歳の高校生だし、遊びたい盛りでもあるのでこれは仕方ないことだろう。
俺が遊んで金が飛んでいくことを貢いでくれている女の子たちも許容してくれているからなにも問題ないしな。
将来的にはいくら遣っても湯水のように金が湧いてくる環境を構築したいものだが、そのためには幼馴染たちをはじめとした女の子たちに、これからもますます頑張ってもらう必要があるだろう。
彼女たちのモチベーションアップのためには、俺も努力を惜しむつもりはない。
ただし、監禁されることを除いてだが。目下のところ、悩みの種となっている幼馴染たちによる監禁生活の危機に関してだが、タイムリミットである夏休みまではまだ時間はある。
夏純の一件や同じ『ダメンズ』のメンバーであるルリの存在など、多少希望を持てる要素がないわけではないしな。
とりあえず当面は学校生活を楽しみながら、幼馴染たちによる監禁を防ぐ手段を考えていけばいい。
そう思っていた俺だったのだが……。
「葛原くーん! 先生をだずげでぇ~!」
現在何故か担任であるユキちゃん先生に泣きつかれていたりする。
どうやらここにきて、少しばかり厄介なことに巻き込まれそうな気配に、俺はため息をつくのだった。
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