第三章 激闘!球技大会編!

プロローグ リーダーとしての責任

 働きたくない。そう思っていた時が、私にもあった。


 だけど、それは働くことを楽しいと思っていなかったから。

 私にとって労働はまだ先の出来事だと思っていたし、将来のビジョンだって不明瞭。

 とりあえず今が良ければそれでいいかな。くらいの軽い気持ちで日々を過ごしていたことを思い出す。

 要するに、私は子供だったのだ。配信に手を出したのも、単純にゲームが好きだったのと、人見知りだった自分を直したいという気持ちがあったから。

 もし誰も見に来ないようならそれでいい。そのままひっそりと辞めればいいだけ。

 だけど、もし誰かが私を見つけるようなら……その時のことは、その時に考えよう。

 

 思えば、本当に軽い気持ちだった。

 心構えなんてものはまるでなく、ただ画面の電源を入れてゲームを起動する。配信が可能であることを確認してから、私は少し汗ばんだ手で、愛用しているコントローラーを握り締めた。

 

 それが私――春風真白にとっての、すべてのはじまり。

 あれよこれよという間に人気配信者と呼ばれるようになり、気付けばアイドルグループ『ディメンション・スターズ』のリーダーになっていたどこにでもいる女の子だったはずの私の、シンデレラストーリーの幕開けでもあった。


 苦労性の社長と、癖と個性が強いけど頼りになる仲間たちとの、忙しいけど充実した日々。

 それを私は、確かに楽しんでいたと思う。青春なんて似合わないし、訪れないと思っていた私に舞い降りた奇跡のような日々は、私に自信と勇気を与えてくれた。


 ――だけど、夢というものはいつか必ず覚めるもの。


 楽しかった日々は、とある噂を耳にしたことにより、急激に不安を帯びたものに変わっていった。

 男の子に貢いでいるという、アイドルとしてあまりに致命的な噂話。

 私はリーダーとして、その真相を確かめなくちゃいけない。


 ただの噂話ならそれでいい。だけど、もし噂が本当だったら――私はいったい、どうすればいいんだろう。


 分からない。分からないけど、私は合わなくちゃいけない。そして話さないと。


 件の男の子――葛原和真くんと。絶対に。

 

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