監禁しなきゃ(アリサver)
「俺に……?」
思わずそう聞き返してしまったのは、アリサの言葉が意外だったからだ。
昔から素直じゃない幼馴染であることを知っているだけに、こんなにストレートな言い方をしてきたことは記憶にない。
アリサ本人もそう思っているのか、灯りに照らされた頬は赤らんでいる。
「なによ、悪い? アタシにだってそういう時くらいあるわよ」
「悪くはない。ないんだが、わざわざ俺の家の前で待ってる必要なんてなかったろ。連絡くれたら俺の方から受け取りに行ったのに」
気を効かせた言い回しのつもりだったが、俺の言葉を聞いたアリサはむっとした顔をする。明らかに気を悪くしたようだ。
なにかまずいことを言っただろうか? 内心焦る俺の考えを肯定するかのように、アリサはゆっくりと口を開き、
「会いたかったって言ったでしょ。ふたりきりになりたかったことくらい察しなさいよ」
「お、おう。悪い」
これまたらしくない素直な物言いに、思わずどもる。
アリサもらしくないが、俺も大概らしくない。この場に流れ始めた謎の空気のせいなのだろうか。
「アタシだって、たまには素直になるんだから……和真のこと、誰にも渡したくないんだから」
そう言うと、アリサは目をそらした。
最後のほうはほとんど聞こえなかったが、触れないほうがいいと判断する。
いや別に俺が鈍感だからとかそういうわけじゃない。チラッと見えたアリサの瞳が、なんか濁っていたというか、真っ暗だったというか。
とにかく怖かったからである。なんなら今もダークネスなヤンデレオーラを若干放ちつつあるし、スルーするのがどう考えても得策だからだ。俺絶対悪くない。
そんな俺のベストオブベストな対応もあってか、やがてアリサも落ち着きを取り戻したようだ。
ヤンデレオーラが静かに霧散したアリサはふぅっとため息をつき、
「……やっぱ和真って、女の子のこと分かってないわよね。昔からそうだけど、お金にしか興味ないんじゃないの?」
「む。そんなことはないぞ」
確かに俺はお金大好き人間ではあるが、それだけの男だと思われるのは心外である。
「ゲームやバニーだって好きだし、なにより遊ぶことと楽しいことが大好きだ! あとVtuberへのスパチャとかガチャとか色々なことに俺は興味が……」
「もういい。聞いたアタシがバカだった」
指折り数えて好きなことを挙げていると、何故か頭を抱えるアリサ。
頭痛にでも襲われているんだろうか。昼間はライブがあったし、やはり疲れているのかもしれないな。
「やっぱアンタってロクデナシだわ。どうしてアタシ、こんなやつのこと好きになっちゃったんだろ……」
「おい、大丈夫か。家から薬持ってこようか?」
「いい。バカにつける薬なんてこの世にないもの。ああもう、なんで和真がこんなふうになっちゃったんだろ。やっぱり雪菜が甘やかすせいじゃないかしら。いくら養ってあげるといっても、このままじゃますます和真はダメ人間一直線に……」
心配する俺をよそに、ブツブツとなにか呟き始めるアリサ。
顔がいいから許されるが、傍から見ると普通に怖い光景である。
「おいアリサ。早く家に帰って休んだほうが」
今は夜も遅いということもあり、人気がないからいいが、ご近所さんに知られても面倒だ。
だから一度家に帰し、落ち着かせようと思ったのだが。
「監禁、しなきゃ」
「へ?」
アリサがいきなり、変なことを言い出した。
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