コロコロ表情変わる女の子ってカワイイよねって
「ふぅ、いやースッキリしました。やっぱりストレスってすぐ発散しないと美容にも悪いですからね!」
「はぁ。それは良かったっすね……」
額に浮かんだ汗を拭いながらいい顔をしてソファへと座り直すルリに、俺は呆れた目を向けていた。というか、向けないほうがおかしい。
あれをにこやかに受け止めることが出来るのは、せいぜい伊集院くらいのものだろう。
『ダメンズ』のことは確かに推しているが、それ以前に俺は常識人なのだ。
「同席してるこっちからすると、場所を選んで欲しかったところだったけどな。ファミレスでいきなり叫び出すとか完全に危ない人だったぞ……」
「人はいなかったし、細かいことはいいじゃないですか! 仮にいたとしても、超絶カワイイ現役JKアイドルを生で見れたらお釣りがくると思いますよ。ホラ、ルリってカワイイので♪」
「カワイイで済んだら警察はいらんと思うんだが」
「その時は警察すらルリが魅了すればいいんですよ。カワイイは世界を制するんです! だってこんなにルリってカワイイんですから」
てへっ♪とウインクしながら、舌ペロしてくるルリ。
ライブでよく見せる小悪魔的な仕草だが、それで全てが許されると思ってるなら世の中を舐めすぎだと俺は思う。
「ああ言えばこう言うやつだな……ま、いいや。とりあえずなんか食う? あるならメニュー表渡すけど」
「あ、お構いなく。打ち上げで既に済ませてきたので。それにもう夜ですし、今の時間に食べると太っちゃいますから」
「ああ、なるほど。アイドルだもんな。体重管理は当然ってことか」
納得して頷くも、丁重にお断りしてくるルリに、俺は少し関心していた。
いきなり見せてきたアッパーな一面に多少面食らいはしたものの、目の前にいる女の子は確かに今日ステージの上で歌い踊っていた『ディメンション・スターズ!』のメンバーであることは確かなのだ。
夜の間食をしないくらいのプロ意識は、当然持ち合わせているということなんだろう。思えば雪菜やアリサも、そこらへんはちゃんと気を遣っていたからな。
「そういうことです。もう食べ終わってるみたいですけど、おにーさんも気をつけたほうがいいですよ。いくらおにーさんが面白い人だと言っても、太ったら養ってもらえなくなっちゃうかも……」
「あ、大丈夫。俺、いくら食べても太らない体質だから」
上目遣いでこちらを見てくるルリの言葉を遮って、俺は言った。
アリサにも食事に関しては普段からあれこれ言われてはいるが、生憎俺はなにを食おうと一定の体重を保てるのだ。
だからその心配は無用だと伝えて、ルリのことを安心させようとしたのだが。
「おにーさん、その冗談、面白くないですよ」
「え? いや、冗談ではないんだけど……」
「面白くないです、その冗談」
「だから冗談では……」
「お・も・し・ろ・く・な・い・で・すー!」
一字一句区切るように話しながら、頬をぷっくりと膨らませるルリ。
「そもそも女の子に体重の話をするなんて、おにーさんデリカシーにかけてますよ! こういうのは触れるだけでもタブーなんです! いくらクズだからって、超えちゃいけないラインっていうのもがあるんですよ!」
「ええ、そっちが振ってきたのにそれ言うか……?」
「うるさいですー! というか、叫んだら喉が渇きました! 罰として飲み物注文してください! 食事代は払ってあげますけど、こっちはおにーさんの奢りですからね!」
「まぁいいけど……てかそうくると思って、もうセルフドリンクは頼んでたんだが。なに飲む? 取ってくるぞ」
「あ、マジですか。それは気が効きますね。ルリ的にポイント高いです。ドリンクも奢ってあげちゃいましょう。ウーロン茶でお願いします」
「いいのか。いや、いいけどさ」
なんだろう。疲れることは疲れるんだが、案外コイツ、チョロいのかもしれない。
コロコロ言うことが変わるルリに半ば翻弄されながら、俺はドリンクを入れるべく一度席から立ち上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます