やべーやつにはやべーやつが集まるんだよ!

 とりあえず分かったことがある。アリサは使えない。

 コイツは一見気の強い典型的なツンデレだが、身内には異様に甘いところがあるチョロ雑魚だ。

 多分子供が出来ても叱ることが出来ないタイプだし、むしろめちゃくちゃ甘やかすに違いない。そんなやつに期待すること自体が、そもそも間違いだったと言える。


(とにかくアリサは駄目だ。色んな意味で頼れん。まさかここまで押しに弱いとは…)


 というか、同性の幼馴染に対してですらここまで盲目的で甘甘になるあたり、割とコイツ地雷女なんじゃなかろうか。

 美少女で世話焼きで、なにをやっても許してくれるとか、嵌るやつはトコトン嵌るし、ある意味蟻地獄みたいなもんだぞ。アリサと結婚するやつはどんなに出来た人間だろうと、間違いなくダメ人間に堕ちるだろう。

 隠れダメ人間製造機な銀髪幼馴染の将来が、俺は早くも心配だった。


(しかし、アリサがダメとなると他に頼れそうなのと言ったら…)


 実質一人しかいない。

 俺はチラリと、白いバニーさんへと目を向けた。


「…………」


 彼女―一之瀬は、この場に置ける、唯一と言っていい部外者だ。

 ぶっちゃけ逃げ出したとしても誰も文句を言わない状況の中、一之瀬は今もこの場に留まっている。

 俺にとって救いの女神になってくれる存在は、もはや一之瀬しかいなかった。


(ただ、なにを考えてるか読めないんだよな…)


 相変わらず無表情で、イマイチ考えが読めないが、それでも頼るとしたら彼女しかいないのが事実だ。

 少なくとも、一之瀬を味方につければ数の上で互角になるし、流れを変えることが出来るかも知れない。


(だが、どうする?どうやって味方につければいいんだ?)


 問題はそこだ。

 このカオスな状況で、一之瀬が素直に味方についてくれるのか。それこそが、唯一にして絶対の不安材料だった。


 俺はこのメイドさんとの接点がほとんどないし、さっきまで女子同士で仲良く会話しているところも目にしている。

 素直に頼み込むのがベストなのが分かってはいるが、雪菜が横槍を入れてくる可能性は高い。そのまま懐柔されたら、3対1となり、俺の味方はいなくなる。

 そうなったら、マジで監禁される可能性があるのだ。下手な選択肢は選べない。


(くっ、俺はどうすれば…!?)


 その時、俺の脳裏にある光景がよぎった。

 そうだ、雪菜はアリサに泣きついたことで味方につけた。

 なら、同じ手を使えばイケるのでは…?そう思いついた瞬間、俺の体は既に行動に移していた。


「一之瀬、助けてくれ!このままじゃ俺、雪菜達に監禁されちゃうよ~!!!」


 言うと同時に、俺は無表情なメイドバニーさんの身体に抱きついていた。

 ムギュっと、柔らかい感触が顔面に伝わってきて、密かにニヤけてしまったのはここだけの秘密である。


「なっ!?なにやってんのよ和真!」


「カズくん…?」


 途端、幼馴染達の驚きと動揺の入り混じった声が飛んでくるが、それに構っている余裕は俺にはない。

 こっちだって必死なんだ。だから顔を左右に振り、メイドバニーさんの柔らかさを存分に満喫してしまうのも仕方ないことなんだ。そう、仕方ないことなのである。


「助けてよ一之瀬~!なんでもするから、俺のことを助けてよ~!」


 傍から見れば、俺がやっていることは男としてひどく情けなく、そしてクズな行為に思えるかもしれない。

 だが、これは俺にとっての生存戦略だ。

 人に助けを求める時に、半端なプライドなんてむしろ邪魔でしかない。

 なら全て投げ出して、ありのままの自分をさらけ出し、そして庇ってもらうことが、この場に置いて肝要なのである。

 その過程で、ちょっとだけいい思いをするくらいは、きっと許してもらえるだろう。

 こっちは将来がかかってるうえに、プライドまで捨ててんだからな。文句を言われる筋合いなど決してない。

 などなど言い訳しながら、俺はスレンダーなメイドさんおっぱいに、さり気なくイケメンフェイスを押し付け堪能していたのだが、


「…………本当に、素晴らしいほどのクズさ。救いがたさ。ここまでのダメ人間を、私は見たことがありません」


「ほへ?」


 何故か、一之瀬の身体がぶるりと震える。

 そして、俺の背中に彼女の手が回され、


「ようやく、ようやく見つけました…私の、尽くすべきご主人様を…」


 赤らんだ顔で、そんなことを言われていた。


「…………Why?」


 え、なにこれ。


 なんかよく分からないが、俺、ご主人様認定されたっぽい。


「えーっと…」


 とりあえず…新しく貢いでくれる子、ゲットしたってこと?


「やったぜ!ヒャッホーイ!」


 やはり俺は持っている男!なんか知らんが、俺はメイドさんを手に入れ…


「カズくん?」


 うん、ごめんなさい。マジごめんなさい。そんな目で見ないで下さい雪菜さん怖いんでマジで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る