ヤンデレバニーガールアイドルは、ドクズ幼馴染監禁の夢を見るか
監禁。監禁ね。今監禁って言ったよなコイツ。
うーん、でもさすがに聞き間違いかな?
普通監禁のおねだりなんてしないもんな。うんそうに決まってらアハハハ。
「カズくんのこと、監禁したい!」
おい、こらやめろ。
なんで二度言ったし。なんでそんな晴れやかな表情で、そんなことを言えるし。
俺のささやかな希望を、秒で打ち砕くんじゃない。全然嬉しくねぇンだわ。
「監禁したい!!!」
あらやだ。三度も言いましたわよこの子。
間髪入れずに連呼してくるとか、どんだけワタクシのことを監禁したいのかしら。
ドン引きしすぎて、思わず心の声がお嬢様になってしまいましたわ。それだけ動転してるということですねわかりますわかりたくないですこんちくしょー!
「か、監禁すか」
「うん!私、カズくんのことずっと監禁したかったんだ!」
「は、はぁ。そ、そうなんすか。俺にはよくわかんないけど、すごいっすね」
アカン、声が震えておるわ。
しかも敬語になっちまったし。こういう時は、下手に出てしまうほうが負けると相場が決まってるのに、我ながら完全に気圧されておる。
「だよね!監禁って、お互いにとってすごくいいことづくめだもん!私はずっとカズくんのお世話をしてあげれるし、カズくんは働かなくていいものね。なにより、監禁して閉じ込めておけば、私だけのカズくんになるんだから!」
無邪気な顔で、なんて邪気に溢れたことを言いやがる。
表情から声の調子まで、完全にいつも通りなのが尚更怖いンすけど。なんで素面でそんなん言えるん?
「そ、そっすか。すごいっすね。ち、ちなみに、さっきから監禁って言ってますけど、具体的にはどんな内容であられたりいらっしゃりまするのでしょうか?」
幼馴染への恐怖から自然とへりくだってしまうのは、もはや仕方ないのであった。
「んー?別にそんな大した内容じゃないよ。ただカズくんがいつでも私のそばにいて、いつでも私のことを見て、いつでも私と話せて、いつでも私を必要としてくれる。そんな環境が理想かなぁ」
ふーん、なるほどね。完全に一般的な監禁っすね。いや、一般的に監禁してくるやつがいるとかはしらんけど。
まぁなにはともかく、
「ごめん。それ却下で」
「えー!なんでー!」
「いや、なんでと言われても。俺、監禁とか真っ平御免だし」
「でも、お願い聞いてくれるって言ったじゃない。私、すっごく嬉しかったのにー!」
ぷくーっと頬を膨らませるその姿は、バニーの衣装と相まってなんとも可愛らしいものだ。
これで発言の内容が邪悪でなければ俺だって頷くところだったが、さすがに監禁はノーサンキューだ。
監禁したいと言われて素直にいいよと言えるやつは、よほどの引きこもり気質か佐山みたいなガチ勢くらいのものだろう。
俺は金の次に、自由を愛する男なのである。
「ねぇ、アリサちゃんからもなんとか言ってあげてよ!カズくんったらひどいんだよー!」
そんな俺からノーの返事を突きつけられた雪菜は、隣にいるアリサへと助けを求めていた。
「え?わ。私?」
いきなり話を振られたせいか、目を白黒させているあたり、どうやら会話の流れについてこれなかったようだ。
気にかける余裕がなかったのもあるが、そういや俺と雪菜のやり取りの間、口を挟んでこなかったな。
まぁそりゃそうだろう。俺だってついていけてないし、むしろついていきたくない。
「うん!私が監禁したいって言ったら、嫌だって言うんだもん。ひどいよね!アリサちゃんからも、監禁に同意するようカズくんを説得してよぅ」
「ちょっ、せ、雪菜!?」
そう言って、甘えるようにアリサへと抱きつく雪菜。
幼馴染兼美少女兼バニーガール同士で抱き合う光景はなんとも眼福ではあったが、傍から聴いてるとマジで狂った内容だな。そりゃ理解が追いつかないのもさもありなんですわ。
「アリサちゃん、ダメ?」
「い、いや、さすがに監禁はまずいと思うんだけど…」
お!さすがアリサさん!幼馴染きっての常識人なだけのことはあるな。
そりゃそうだ。いくら幼馴染に甘いアリサでも、こんな頭のおかしい相談に乗るはずがな…
「アリサちゃんも私の言うこと、聞いてくれないの?」
「えっ、いや、そんな…私は、あの…」
「私はアリサちゃんのこと、親友で、大切なお友達だと思ってるよ?」
「わ、私だって雪菜のことは大切に想ってるわよ!」
え?ちょ、アリサさん?
「なら、私のお願い聞いてくれないかな。ダメ?」
「……雪菜」
え、なんで雪菜に上目遣いでお願いされただけで、なんでそんな慈愛に満ちた目をしてるんです?内容ちゃんと把握してます?
「ねぇ、アリサちゃん。お願い」
「……まったくもう。しょうがないわね」
そしてなんで雪菜を叱らずに、俺のほうに振り返るんです?
「ねぇ和真。雪菜もこんなに監禁したいって言ってるんだし、ちょっとくらい監禁されてあげてもいいんじゃないかしら。なんなら、私のお願いも上乗せしていいし。どう?」
いや、どう?じゃねぇンだわ。
お前、雪菜に甘すぎるだろ。
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