巻き込み事故




「なっ、何してんだよ!」


 突如現れた美人3人。しかもバスタオル1枚という姿に、思わず手で目を覆う。

 目の保養になる光景である事には変わりないと思うけど、さすがに現実世界で遭遇すると何とも言えない感情に襲われる。


 あいつら……しかもなに烏真さんまで巻き込んでるんだよ!


「安心しなよ~お兄ちゃん」

「何が安心なんだよっ!」


「ふふっ。よいしょっと……大丈夫だよ空? ちゃんと水着着てるから」

「はっ、はぁ?」


 そんな姉妹の言葉に、若干の疑問を感じつつ……俺はゆっくりと手のひらを下ろして行った。するとどうだろう、指の間に見える3人は本当に水着を着ていた。


 本当に水着着てるのか。なら、安心……な訳無いだろ! ったく、時と場を考えろよ? ちょっと言っておかないと。


「あのな? 水着着てるからOKじゃないだろ? 大体人様の家で何してんだよ」

「だって、一華ちゃんの許可は貰ってるよ?」


「どうせ強引に取り付けたんだろ? 美世ちゃん」

「ちっ、違うんです! 私、ちゃんと話し聞いて……その上で良いって言ったんですよ」


 そう言いながらも、その顔の赤さと表情には恥ずかしさが溢れる烏真さん。

 いやいや、無理するなよ……


「大体、お前達が水着でも俺は裸なんだ。ちょっと中入って、奥まで行ってくれないか? その間に、俺上がるからさ?」

「その必要はないよ? 空」


「はい?」

「ちゃんと持って来たから! 空の水着も」


 そう言うと、得意げに右手を上げる美由。そしてその手の中には、確かに俺の水着が握られている。


 ……はぁ? なんで俺の水着? 一体どうやって……まさか!


「美由? なんで俺の海パンを?」

「ちゃんとお父さんにお願いして取って来て貰いましたぁ」


 あのクソ親父……


「じゃあそう言う事で、それっ!」

「うおっ」


 って、ブーメランみたいに投げないで貰えます?


「ささっ、空も水着着て着て? これで問題ないでしょ?」

「いや、あのなぁ……」

「いいのぉ? 一華ちゃん泣いちゃうよ?」

「天女目さん……」


 ぐっ! ちくしょう、烏真さんをだしに使いやがって。その顔は反則だろうよ。

 ……仕方ない。裸乱入よりは全然マシか。


「はいはい。じゃあ3人共後ろ見てくれますか? 履くんで」

「「はーい」」

「はっ、はい!」


 …………よいしょっと。


「いいぞ~」

「これで心おきなく……」

「お兄ちゃんと混浴が出来るね? 一華ちゃん?」

「うっ、うん!」


 いやいや。俺としてはかなりびっくりなんだけど……って! 全員ビキニだと!? 水着美女3人ってのも凄いな。


 こうして海パンを履き終えると、3人は既にバスタオルを脱いでいた。しかも驚くべき事に、全員がビキニタイプの水着。その光景は壮観としか言い表せなかった。


 ……並んで見ると、身長は美由が少し大きくて美世ちゃんと烏真さんは同じ位か。

 にしても、美由と美世ちゃんは相変わらず胸もお尻も大きいな。しかもくびれもあってグラビアでも通用しそうな、とんでもない姉妹だ。


 そして烏真さん。まさかのビキニタイプでギャップに驚いた。それに、胸は隣の2人より小さいとはいえ、十分にたわわだぞ? そして特筆すべきは、その真っ白な肌と、とんでもなく長い足。しかもウエストがめちゃくちゃ細くて、そのスタイルが強調されてる。

 しかも若干恥ずかしそうな姿がまた……


「空? なんか鼻の下伸びてない?」

「流石に美女3人の水着姿目の前に……興奮してるんじゃない?」

「えっ!? 興奮……そうなんですか?」


 うっ! いかんいかん。冷静になれ空。そうだ、普通のプールだと思えば良いんだ。変に反応すると、とんでもない事になりかねない。


「何言ってるんだよ。早く風呂入れよ?」


 そう……冷静に……


 こうして思わぬ乱入があったものの、俺は必死にプールと同じシチュエーションだと言い聞かせた。

 いや、正直……2人の水着姿をここまで間近で、しかも長時間見たのは初めてだったし、烏真さんに至っては俺が見て良いのかという罪悪感さえ覚えた。


 けど、そんなのお構いなしに、3人はここぞとばかりに大浴場を満喫している。


「じゃあ背中流してあげるね? 一華ちゃん」

「えっ? いいの?」

「じゃあ、私は美世の背中ね?」


 ……背中の洗いっことか凄いな。


「ふふっ。そういえば……えい」

「きゃっ! みっ、美世ちゃん? そんなっ……」


「おぉ~見た目通り、柔らかくて良いおっぱいだねぇ」

「あっ……くっ、くすぐったいよぉ」


 って、おい! 


「あら? 美世だって……」

「あっ……お姉ちゃん?」


「また大きくなったんじゃないの~」

「はっ……んんっ……手つきがイヤラしすぎっ」


 なんてうらやま……ゴホン! 女子の特権見せつけるんじゃないよ! ……あっ、やべ。美由と目が……


「ほらっ、空が羨ましそうに見てるよ?」

「えっ……えぇ? んんっ……」

「そっ、そんな。私、変な姿見られて……はぁ……一華ちゃん! もう止めてよぉ」


 ぐっ! 何言ってんだよ美由!?


「もしかして、空も触りたい? 良いよ~? ねぇ?」

「そりゃもちろん。お兄ちゃんなら全然」

「はっ、はぁ?」


 ストップ! 烏真さん居るからっ! 変な姉妹関係バレちゃうからっ!


「わっ、私も……天女目さんなら全然……」

「えっ、えぇ?」


 はっ、はい? いやいや何言ってんの? 烏真さん?


「ふふっ。どうする~? 空。3人触り放題だぞ~」


 なっ、何言ってんだ? これはあれだ、この熱気にやられてるに違いない。

 となれば……


「おっ、俺先上がるわ!」


 逃げるが勝ちでしょ!!


 

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