性なる伝道師?




 烏真さんの登場から、いろんな事が起こった1日。

 一時はどうなる事かと思ったけど……


「おっ、美味しいです美耶さん!」

「ありがとう。もっと食べて食べて~」

「一華さん? この唐揚げもオススメだよ?」

「ふふっ。一華ちゃ~ん、美味しすぎて食べ過ぎると、知らぬ間にお腹に……」


 晩御飯は、それはそれは大盛り上がりだった。

 いつも明るい食卓に、さらに1人増え……にぎやかさは2倍くらいに跳ね上がっただろうか。


 天女目家のテンションが負担にならないか不安だったけど、烏真さんも笑っていて安心した。


 そして楽しい時間はあっという間。流石に烏真さんも帰る時間が訪れた。


「えぇ~一華ちゃん泊っていきなよ~」

「そうだよ。明日一緒に学校行けばいいんだし」


 なんて姉妹は騒いでいたけど、そこは年長の2人がきちんとしてくれた。

 平日のお泊りは、烏真さんのご両親にも迷惑をかける。けど、今度は事前に予定立てて泊りにおいで? という、姉妹を納得させる言葉は流石としか言いようがない。


 それに、烏真さんも嬉しそうな表情を浮かべていて、


「お邪魔しました! 今度はうちに遊びに来てくださいね?」


 なんて言いながら、帰っていった。

 もちろん帰りは父さんの車。烏真さんは、


「ばっ、晩御飯までご馳走になって帰りもだなんて、流石にご迷惑じゃ……」


 相変わらずの謙遜っぷりだったけどさ? 外は暗いし、女の子1人は危ない。美由と美世ちゃんも同乗し、無理やり連れていた。


 まぁ結局のところ、みんな笑顔になれてよかったとは思う。

 なんて思いながら、俺は美耶さんと晩御飯の片づけをしている。


 ……っと、これでテーブルの上は大丈夫だな?


「美耶さん、これで最後です」

「ありがとう。あとの洗い物は任せて?」

「はい」


 よっと。じゃあ、どうするか……


「そういえば空くん?」

「はい?」


「もしかして結構溜まってる?」

「はっ、はい!?」


 洗い物をしながら、突拍子もない発言をする美耶さん。

いや、溜まってるって決してシモの話ではないだろう。ここは冷静に……


「溜まってるとは……」

「あらやだ。性欲に決まってるじゃない」


ぶはっ! ドストレートにぶち込んできた!

 しかも、チラチラとあの不敵な笑みを浮かべながらの姿は、悪ノリ美耶さんそのもの。

 本来なら伏せるべき部分の話ではあるけど、不思議と美耶さんには話しやすい雰囲気も感じる。それもこの悪ノリ美耶さんの姿のおかげかもしれない。


 まぁあの2人も居ないし、いいか。


「だって、さっき大きくなってたでしょ? 前見た時よりも大分」

「何処見てるんですか。って、まぁ大人の美耶さんにだったら隠す必要ないかもしれませんね」


「当たり前でしょ? 生理現象だし、そういうのは結構大事だと思うもの」

「もしかして、あの2人にもそんな話を?」


「ふふっ。どうかしらねぇ~。空くんのご想像にお任せしちゃう」

「想像しときます」


「幻滅した? このおばさん、なに恥ずかしげもなく、そんな話してって」

「そんな事ないですよ。最初は驚きましたけどね」


 コンドーム発言やら、風呂場突撃された時は焦りまくりましたよ。


「ごめんなさい。でも、私は大事だと思ってる。空くんとかの年齢になれば、遠からず通る道でしょ? 学校の授業は学校の授業。親として、そういう話をするのはすごく大事だと思うの。家族として大事だからこそ話せる内容じゃない? 実際、両親から言われた方が説得力ないかしら」

「それは……確かにありますね」

「私は、美由も美世も空くんも大好き。大好きだからこそ、性についても恥ずかしがらずに言いたいの。そりゃ時と場は選びますけどね?」


 親とそんな話……なんだろう。なんとなく気まずい話題だと思ってたな。実際、父さんとはそんな話した事ないし。

 でも、美耶さんの言う事は、かなり説得力を感じる。家族として大事だからこそ、話せる内容か……


「そうですね。じゃあ今後は時と場を選びつつ、色々ご相談します」

「ふふっ。了解……それにしても、そんなに溜まってるなら2人を襲っちゃえばいいのに」


 えっ? あの……せっかくいい話で締めたのに、台無しですよ!


「いやいや、なんでそうなるんですか?」

「空くんは2人嫌い?」


「嫌いじゃないですよ」

「じゃあ好き?」


「まぁ……好きですけど……」

「じゃあ良いじゃない。好き同士がするのに問題はないわよ?」


「いっ、いや。そうじゃなくて……前から言ってますけど、俺にとって2人は家族なんですよ? まだその……女性として見る勇気がないというか……」

「ふふっ。空くんはやっぱり立派ね? それに確固たる意志も持ってる」


「褒めても何も出ませんよ~? 大体、2人だって好き好き言ってますけど、本心かどうかは分からないじゃないですか?」

「……そうね?」


 んっ? なんか一瞬表情が……


「でも、いずれは2人の気持ちにも応えて欲しいわ。願わくば子どもも沢山……」


 って、気のせいかよっ!


「美耶さ~ん?」

「あらやだ。ごめんなさい? ふふっ。あぁ! いけない空くん! 溜まってるなら、2人居ない今がチャンスよ? 早くお風呂行って、1回でも2回でも3回でも出しちゃわないと!」


「なっ! 何言ってるんですか! そんなに出来るわけないでしょう!」

「若いんだから余裕でしょ~? それにもし倒れても私が居るから!」


「そんなダサい恰好まで晒したくないですけど~?」

「私はそんな姿も見たいけどね~?」


 そう言うと、美耶さんはまたしてもあの笑顔を見せると、お風呂場を何度も指さす。

 ったく……こういう時マジで普段とのギャップがあるんだよな。けど、


『ごめんなさい。でも、私は大事だと思ってる。空くんとかの年齢になれば、遠からず通る道でしょ? 学校の授業は学校の授業。親として、そういう話をするのはすごく大事だと思うの。家族として大事だからこそ話せる内容じゃない? 実際、両親から言われた方が説得力ないかしら?』


 家族か……改めて言われると、嬉しいな。


「じゃあ、お言葉に甘えてお風呂行ってきます」

「はぁ~い」


「とりあえず4回はするんで、美由達帰ってきたら止めて下さいね?」

「任せて……ん? えっ? よっ、4回?」


「えっ? まぁ最高は6回なんで、今ならそれくらい楽勝かと……」

「ろっ! ……まっ、まぁ高校生ならそれくらい当たり前よね?」


 あっ。いつも余裕溢れる美耶さんが少し焦ったぞ? ふっふっふ。勿論嘘なんですけどね!


「お願いしますね? 美耶さん」

「もっ、もちろん! たっ、楽しんできて~!」


 下の話もほどほどにしますよ~? けど、とりあえず……


 今までの分、少しばかりのお返しです!



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