気持ち良いマッサージ(真っ当な施術)




 さてさて、一体どうしたものか。


「じゃあ、まずは椅子に座ってくれるかな」


 言われるがまま、椅子に座る俺。


『じゃあ、あとよろしくね。希乃姉~』


 と言い残し、颯爽と部屋を後にした詩乃先生。


 俺は俺で、サン&ムーンの第三の先生が、まさかパンツをガン見してしまった人だという事実に色々と困惑している。


 くっ……なんか色々と有り過ぎなんですけど!? いやいや、落ち着け空。よく考えろ。今一番大事なのはなんだ? 

 そうだ。ぶつかったのは事実だとして、大事なのは目の前の希乃先生が、パンツ丸見えだった事に気付いているかでは?


 今のところ、俺=あの時ぶつかった人だと理解はしている。ただ、それ以上の反応はない。つまり、パンツの事を気に留めてない=俺がパンツをガン見してたとも思ってないと考えても良いんじゃないだろうか。

 とくれば、自分で変に動揺してボロを出す必要はない。あくまで冷静に、至って普通に体を預けるべきだっ!


「じゃあ、まずは簡単に状態確認するね?」

「はい。お願いします」


 こうして何とも言えない心境の中、始まった希乃先生による施術。

 その内容に一抹の不安を感じながらも、俺は淡々と指示に従っていく。


「じゃあ、右腕を横に伸ばしてくれるかな?」

「はい」


 伸ばしたけど、これから一体何を……


「少し肘の部分触るね? ちょっと痛いかもしれないけど我慢してね?」

「えっ? あっ、はい」


 そう言うと、先生は俺の肘を両手で包む様に触れた……その瞬間、


 ぐっ!


 しびれる様な痛みが腕に広がった。


「っ!」

「あっ、ごめんね。結構痛かったよね」


 金属の細い棒で思いっきり筋を押された様な痛み。慌てて肘に目を向けたけど、触れていたのは希乃先生の親指。しかも、その表情は飄々としていて、まるで力なんて入れてないような様子だった。

 なんだ? 力入れてないのか?


「思い当たる部分をピンポイントで触ってみたら当たっちゃった」


 嘘だろ……マジか?


「分かるんですか?」

「テニスやってる人の肘の痛みとなると、大体ね?」


「すごいっすね……」

「ふふっ。ありがとう。けど、久しぶりに再開したんだよね? やっぱりちょっと疲労感があるねぇ」


 肘を優しくさすりながら、そう呟く希乃先生。

 痛みなんて、さっき押された以外では感じなかったんだけど……分かる人には分かるって奴なのか? 


「自分では気付かなかったです。テニスやってる時に痛みなかったですし……」

「一応詩乃から練習に関するメニューは聞いてたから、必要以上の疲労感はないと思ってたよ。実際ピンポイントで触らなきゃ痛み感じないくらいだし……うん。ちゃんと守れてるね」


「本当ですか?」

「うんうん。けど、疲労は溜まるもんだよ。いくら空くんがマッサージとかでケアしてもね? まぁ、そんな時の為の私なのだよ」


 その瞬間、俺は理解する。

 詩乃先生と同じく、この人もとんでもない腕前なんだと。


「流石です。宜しくお願いします」

「まっかせなさい!」


 こうして、希乃さんによるマッサージがスタートした。




「うぅ~ん。確かに詩乃が言うように良い筋肉だねぇ」


「ここ痛くないかな?」


 あの希乃さん? まだ最初ですよね? 椅子に座ったままのマッサージですよね?


「じゃあ、念のため全身ケアするね?」


 腕やら背中やらに、その大きなおっぱい当たってるんですけど!? 胸元から谷間及び、ピンクのブラジャーまで見えてますっ!

 こっ、こりゃ詩乃先生以上だぞ?


「じゃあ上着脱いでもらえるかな?」


 たっ、耐えろ! 俺のテントぉぉ!




 ★




「……でね? でね? ふふっ」


 あれから希乃先生による気持ち良過ぎるマッサージに、俺は完全に骨抜きにされていた。

 そして今、ベッドにうつ伏せになり……先生の話を話半分に聞きながら、背中の筋肉のケアをしてもらっている。


 あぁ……なんかもうどうでも良い感じになってきた。

 ハッキリ言って、希乃先生のマッサージは今まで体験したことのない気持ち良さだ。最初は、男子高校生の脳を破壊するだろう代物の谷間や柔らかさが、同等のレベルで襲い掛かり……悶えていたよ。

 けど、次第にそれを凌駕する気持ち良さ。いや、むしろその大きな柔らかささえ、マッサージの一部の様に気持ち良くなってきた。


 そして、今はうつ伏せ。いくらテントが張っていようと、希乃先生にはバレない。


太陽たいようったらね? ふふっ」


 それにしてもこのマッサージの最中、希乃先生の色々な事を知れた気がする。


 まずこの太陽という人。詩乃先生も言ってたけど、2人の弟さんで今は大学生だそうだ。

 青森にある大学に通っているらしく、しかも希乃さん詩乃さんの母校っていう事もあって、かなり嬉しいらしい。


 そもそも話す表情が柔らかくて……心底弟さんの事が好きなんだろう。その結果、本当は既に終わったのに、弟さんにはまだ海外留学中と言っているらしい。

 そう自分に言い聞かせないと、すぐに青森まで行ってしまうとかなんとか。それも詩乃さんも同様の事をしているらしい。


 どれだけブラコンなんだろうか。

 そもそも、こんな合法ロリ巨乳な姉達が居るなんて、どれだけ恵まれた弟さんなんだろう。


「さてさて、腰も固いなぁ」


 っと、イカンイカン。今はマッサージに集中だ。

 マジ上手すぎるだろう。流石色々な資格を持っているわけだ。


 話の中で、何気なく希乃さんの持っている資格の話にもなった。

 なんでも柔道整復師やら、あん摩マッサージ指圧師。理学療法士や作業療法士といった国家資格はもちろん、その他民間の資格も数多く所有しているらしい。


 どおりで、痛んでる筋を一発で押せるはずだ。


 けど、なんだろう? そもそも女性にマッサージされてるってのが変な感覚なのかもしれない。

 そしてやっぱり、時折ふれる柔らかさ。このままじゃ絶対に仰向けにはなれないな。


 まぁそんな冗談はさておき、まだ施術途中だけど……体が軽くなった気がする。あと全身に血が巡っているように熱くて、活性化されてるのが実感できる。

 流石詩乃先生のお墨付き。多数の資格を持つ整体師さんだ。


「よ~し! じゃあ次は……お尻いくよ?」


 えっ?


「おっ、お尻ですか?」

「そうだよ? 臀部って意外と凝りやすくなるんだよ? それに1人じゃほぐし難い場所だしね」


 いっ、いや……それはそうですけど、お尻ですか? 今から触るんですか? 希乃さんが? 女の人が? 

 そっ、そりゃ正当な施術の一部ではありますけど、なぜか邪な感情が! 心の準備が!


「それっ~」


 出来てないんですけどぉ!?




 

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