第3の刺客(無自覚)

 



「ただいまー」


 夕暮れが差し込む時間。俺はいつも通りに家へと戻ってきた。

 登校の時は3人一緒だけど、帰宅となるとバラバラだ。まぁ、2人共ちゃんと部活をしているんだから当たり前か。


 つまり、いつも俺は1人で帰宅。そして家には……


「おかえりなさーい」


 殆どの場合、美耶さんが居る。

 玄関先からでも香る美味しそうな匂い。それは今まで感じた事のない1つだ。


「お風呂用意出来てますからね?」

「ありがとうございまーす」


 そしてお風呂の準備まで。その手際の良さは感心せざるを得ない。




 ★




「はぁー!」


 こうして、俺は1番風呂を頂戴している。というより、基本的に平日はいつもこうだ。最初は父さんや、部活を頑張っている2人に遠慮していたけど……


『気にするなっ! 勉強も働くための糧だからな』

『ほらぁ。だから言ったでしょ? 私が言っても遠慮しちゃって』

『もしかしてお兄ちゃん、私と一緒に入ってくれる為に待っててくれたのぉ?』

『そこまで気を使わなくても……あっ、空の汗の匂い……キュン』


 のっけからヤバい雰囲気漂わせてた人もいたが、そんなこんなで帰宅即お風呂がルーティン化している。


 さて、頭洗うか。


 ゴシゴシ……お湯で流して……


「空くん?」


 ん? その声は美耶さん? なんかあったのかな? 


「はぁーい? すいません、今シャンプー流してる途中で」

「良いのよ~」


 ガチャ


 はっ?


「背中流しに来ただけだから」


 ん? いやいやちょい待ち? 一体何を……


「いや、美耶さんなにを……あっ!」


 いやいやなんの冗談ですか? そんな事を思いながら、シャンプーをあらかた洗い終えた俺は、お湯をぬぐいながら後ろへと視線を向けた。


 しかしながら、その先には……見事体にバスタオルを巻いた美耶さんの姿があった。

 しかも、ものの見事に分かる大きさ。まさかの展開に、すぐさま視線を戻したものの……完全に俺の頭はパニック寸前だった。


 ヤバい、マジかよっ? こんな漫画みたいな展開あんのかよっ! 髪まとめ上げて、いつもとは雰囲気が違うぞ? しかも、位置的に……逃げ場を失った。


「ちょっと美耶さん、一体どうしたんですか」

「うん? 言ったでしょ? 背中流しに来ただけよ?」


「いっ、いや。大丈夫ですって、1人で出来ますから」

「そう……よね? こんなおばさんにしてもらうなんて……いやよね?」


 うおっ! 違う、そう意味じゃない。あぁもう、美耶さんには良くしてもらってるし、ここで変に悲しませたくはない! ただ、現実的に背中とか……


「色々お話しもしたかったの。だから今日だけ……ダメかしら?」


 その瞬間、耳に感じる甘い言葉。

 そして背中に直撃するとんでもなく柔らかい感触。


 あの2人の母親というだけあって、その大きさは見た目だけでも2人以上。

 そんな立派なものが、背中と密着。流石に、俺も男……反応しない訳がない。


「みっ、美耶さんっ?」

「いいでしょ?」


 くっ、これが大人の色気かっ!? なんかクラクラ……って、気をしっかり持て空。

 とりあえず、ここまで来たら今回だけは背中流してもらおう。

 けど、本気で理性と正気を……保てっ!


「じゃっ、じゃあ今日だけ……お願いします」

「ありがとう。じゃあ、ボディーソープつけるね?」


 うっ、なぜだ? 普段と変わらないボディーソープなのに、変な感覚だっ!


「2人の事、本当にごめんなさいね? 迷惑かけてるでしょ?」

「そんな事……ないですよ」


「前から、2人が空くんの事好きなのは知ってたの。でも、まさかあの時の言葉が本気だとは思ってなくて……」

「正式に……再婚が決まった……時……ですか?」


「えぇ。それから私から見ても、かなり積極的な姿に見えてね? 空くんのストレスになってないか心配なの。だから、今日聞きたくて……」


 だからって、この行動はアウトだと思いますけどね!? 美耶さんっ!


「だっ、大丈夫ですよ。俺は父さん以外に家族が出来て……嬉しいです。美由も美世ちゃんも、もちろん美耶さんもです。だから、大丈夫です。むしろありがとうって言わなきゃいけないくらいですよ?」

「そっ、空くん……ありがとう」


 うぅ……だからその耳元で囁くのやめてくださーい!

 しかもギュウギュウ押し付けないでくださーい!


「じゃあ、次は前の方を……」


 はっ? 前って……ダメダメダメっ!


「美耶さんっ! 前は大丈……」

「あっ……」


 その瞬間、後ろから覗き込むように顔を向けた美耶さん。その行動に流石に待ったをかけるべく、俺は言葉を放った……が、それは一歩遅かった。


 俺の視界に捕らえた美耶さん。しかし美耶さんの視線の先は俺の顔に向いていなかった。そう、斜め下。 

 さらに追い打ちをかける、美耶さんの驚いた声。


 自分でも分かっている。自分の息子が元気ハツラツな事は。

 みっ、見られた……


「ごっ、ごめんなさい」

「おっ、俺の方こそすいません」


「うぅん。男の子なんだもん当たり前だよね」

「そう……ですか……」

「それに、こんなおばさんでもここまで反応してくれて……嬉しいわ」


 あぁ……顔熱い。風呂とか関係なしにめちゃくちゃ熱い。

 しかもこの雰囲気、どうすりゃ……


「あぁ……大きい。りくさんと同じくらい……」


 ちょっ!? 美耶さん? なに言ってんですか? てか、陸さんって……


「美耶さんっ!?」

「親子だものね? 本当にそっくり」

「いっ、いや……」


 なっ、なんの羞恥プレイですかっ! ととっ、父さんの大きさとか聞きたくないんですけど? 


「ねぇ、空くん?」

「はっ、はいっ!?」

「私ね? 美由と美世、どちらが……うぅん。どちらも空くんとそういう関係になっても良いと思ってる。それより、むしろそっちの方が安心するの」


 なっ、なっ、何を言い出すんですかこの人っ! どっちも? 安心? それ本心ですか? どういう意味か分かってます? 自覚してます? まさか無自覚?


 とにかく、胸押し付けていう事じゃないっす!


「なっ、何を」

「でもね? せめて高校を卒業するまでは……ちゃんとゴムを付けてくれないかしら?」


「はっ!? 美耶さんっ!?」

「2人の意見は尊重したいけど……高校生活は送らせてあげたいの。もちろん空くんの意見もね? ごめんなさい。わがままだとは思うけど……それだけはお願いできないかしら」


 いやいや、美耶さん? 何言ってんですか? いつもの姿から、イメージがどんどん変わっていくんですけど? 大体、そういう事もしてなければ、そういう予定もないんですよ?


 けど……その口ぶりは真剣だよな? とっ、とりあえず……


「わっ、分かりました」

「ありがとう……空くん。あと、2人は経験ないから……その時は優しくお願いね?」


 追加で何言ってんですかっ! いやもう、ここはおとなしく返事しますけど!


「そっ、そういう予定は無いんですけど……気を付けます」

「陸さんに似て、優しい子ね? 本当にありがとう。それじゃあ、おばさんはこれで失礼するわ。お風呂、ちゃんと温まってね?」


 ガチャ


 ……うおっ! 行ってくれたぁ。いや、背中にまだ感触が残ってるんですけど? まさか美耶さんにあんな事言われるとは思ってもみなかったよ。


 少し、イメージが変わったのは言うまでもないけど。


 にしても、チラッと見ただけでもかなりの大きさだったな。普段の見た目通り、2人よりも大きいよな。

 しかもあの柔らかさ、弾力……ヤバッ。この下半身一体どうしたもんか。


 …………とりあえず、




 1回治めよう。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る