【アネクドート12】少女に性的暴行をした犯人の大人が逮捕され、言い訳した。
【少女に性的暴行をした犯人の大人が逮捕され、言い訳した。
「あの子は喜んでたぜ!」
被害者の少女は否定する。
「わたしは嫌だったわ!」
それを聞いて大人の警察は怒った。
「少女の言う通りだ! 大人の押し付けで子供の意思を捻じ曲げるな!」
一方、すぐ近くでは合意の恋愛で大人が逮捕され、恋人の少女に庇われていた。
「彼を放して、わたしも好きでお互いに愛し合ってただけよ!」
それを聞いて大人の警察は怒った。
「いいや君は嫌がってたぜ! 大人の決定だ従え!」】
正午騎士団が地球を去ると、待ちかねたように世界中で同時多発テロリが勃発した。
アメリカでは少女愛支持者強制収容所で所員が皆殺しに遭い、収容者が解放された。イギリスでは少女愛犯罪前科者に対する排外運動中の市民団体が虐殺された。オーストラリアでは少女愛関連の冤罪被害をもたらした警察や裁判関係者が粛清された。東ヨーロッパでは少女愛者に対する強制断種手術を施行していた病院が爆破され、中東では伝統的な少女愛支持者を弾圧した軍が全滅させられた。日本でも、少女愛禁止強化のお題目で国民を束縛しようとする新法を提唱支持した政党が始末された。
他にも、一日のうちにいくつもの少女愛関係のテロリが続発した。
翌日。
ほぼ全部が
『我々は
声明は語った。
『諸君ら旧人類による少女愛への圧制から自由になるため言論をもって断固抗議してきたにもかかわらず、それを拒否して暴力による弾圧を強行してきた君らに対し、武力によって反抗する新人類ネオテニーの団体である。一連のテロリは宣戦布告だ、貴様らには死滅してもらう』
ロリ大戦以降、最大級の連続テロリだった。
報復的な迫害も強まり、白雪姫の鏡の妨害も虚しく捕まっていたロリシタンにはガス室などで大量に殺戮される被害も相次いだ。便乗する少女への犯罪も発生していた。
悪辣な
「やめろ、おれたちも少女愛支持者だぞ!」
少女たちを襲って捕まり、ロリサイ服を装備した
「ガキとヤってみたかっただけさ、同類だろ?」
「わしらが貫くのは、子供なりの同意を尊重した愛だ」
鉄槌を下すべく直々に駆けつけたアルベルト・プリンスは、騎士団内から歩み出て断罪する。
「子供ながらの同意を無視するという点で、貴様らは旧人類と変わらん」
王子は白雪姫と手を繋ぎ、偽りの少女愛支持者たちは並みの旧人類よりも残酷に皆殺しにされるのだった。
「全くよく似ているよ」
返り血にまみれて、老人は吐き捨てる。
「子供に判断力はないとしつつ、性愛を肯定する子供の判断を大人の押し付けで一方的に拒絶することは許容する旧人類社会。まさに、子供が嫌がっていても〝喜んでいる〟などと決めつけて暴行するこいつらと瓜二つではないか」
あまりに混沌とした状況に、各国政府や世界連合も対応の甘さを糾弾されつつあった。
正午騎士団が地球を去って数日後。
追いつめられた世連と各国政府の一部は矛先をそらすため、やむなく、これまで隠匿してきた
これにより、目論見どおり世連や各国政府への批判が弱まり
何より、
こうした流れは、大多数の国々や世界連合が望まない結果だった。
対策のため、アメリカのニュー・ニューヨークにある旧国連本部、現、世界連合本部の総会議場では、全加盟国による緊急会議が開催される運びとなった。映像音声メディア各種での世界同時生中継を交えたものだ。
この場で、代表たるツーピーススーツの中年女性、世界連合事務総長はみなを見渡せる世連紋章下の演壇から説く。
「少女愛支持者との闘いにおいて、各地で悲惨なテロリが相次いでいます。世連を始め各国政府の対応の遅延も遠因でしょう。ですが諸悪の根源は、少女愛という許されざる思想にあります。ロリテストは論理超能力により助長されているのです、揉めている時期ではありません。どうか一丸となって、少女愛という邪悪を根絶するために立ち上がろうではありませんか!」
彼女を囲むように設けられた上階のバルコニーまでを含む二千近い席で、世連加盟各国代表者たちは一様に起立し、ホールを万雷の拍手喝采で満たした。
爾後。会場裏の廊下に引っ込んだ事務総長は、まだ反響する拍手と歓声の裏で長椅子に座って待っていた異端審問会のトップ、会長の老爺に呟く。
「ひと段落ですかね」
「うまくいくとよいな、わしらとの関係のように」
応じた会長へと、事務総長は自ら唇を重ねる。貪るように服の上から互いの身体をまさぐりながら、回転して女性の方が壁に背を預けた。
その胸を柔らかに変化させていた会長の手は、事務総長のスカート裾から内部へ移る。相手の指先もファスナーを下ろして会長のズボン内に侵入した。
「いかねば困ります」息を荒らげながら、女性は妖艶な笑みで嘲る。「この狂おしいほどの快楽を得られない可哀想な
「奴隷制の時代から続く人の性じゃな。哀れな」
以降、一通りの愛撫を堪能した。
しばらく後。
行為を終えた二人は、舞台裏の長椅子に並んで掛けて、服の乱れを整えながら言葉を交わす。
「されど、こんな事態を光源氏が見過ごすはずはない」
祭服を纏い直して、会長は言明する。
「介入してこぬということは、無事でないということじゃろう。でなければ、アルベルトもここまでの活動はできんはずだしのう」
「ですね」衣服を整えた事務局長も同意する。「少女愛支持者への憎悪は
唐突に、第三者の声が口を挟む。
「難しい話に戻ったようだな、逢瀬は済んだのかい」
廊下奥の晦冥から歩んできたのは、ダークスーツの壮年男性。世連の諜報機関、世界連合情報局の長官だった。
「覗いていたのですか?」事務総長は、恥ずかしげに皮肉る。「趣味の悪い。少女の拷問を楽しむだけでは飽きたらないということでしょうか。貴方のような異常者を重宝せねばならないとは、遺憾です」
「人聞きの悪い。拷問するのは身体が少女なままのネオテニー、元少女の18歳以上で遊んでいるだけだ。外見が子供な相手への殺傷を嫌い精神を病む者もいるのだからな。合法なことが趣味と実益に繋がってるだけの、適材適所ってやつだよ」
「揉め事はやめよ」
異端審問会会長が制する。
「せっかくそろったのだ。有益な対話をしようではないか。例えば最大の懸念事項、〝シュレーディンガーの猫箱〟などについてのう」
シュレーディンガーの猫箱。かの秘密は、エルヴィン・シュレーディンガーのとある思考実験から誕生したものだ。
物質をどこまでも分割していき量子という微小な粒の域にまで達すると、そこでは量子効果が働く。量子は観測されていないときは波の状態で一定範囲のどこにでも存在し、観察されるとその一点で粒となる。大きな物体もこうした粒子で構成されるため、すべからく影響を受ける。
シュレーディンガーはここに疑問を呈した。それが、思考実験〝シュレーディンガーの猫〟と呼称される。
量子効果で毒が発生するか否かが決定される装置と猫を箱に閉じ込めたとすると、内部を観測されないときは毒物が生じたかどうかは確定せず、従って猫は生存しておりかつ死亡してもいるということになる。
こんなものはおかしい、というわけだ。
〝猫箱〟は、それを密かに実験で確認しようとした彼の試みに端を発するという。
結果、解決法の一つとして推測されていた、〝猫が生存している世界〟と〝死亡している世界〟が別々にあるとすればいいという、多世界解釈を彷彿とさせる成果が得られたそうだ。即ち、あらゆる異なる可能性からなる平行世界を見出したのだと。
そして、シュレーディンガーは〝向こう〟から何かを得た。
――ここまでも、これより先も、極々限られた人間しか知らない情報である。
兎にも角にも事務総長の問いを受けて、情報局長官は懐古した。
「シュレーディンガーか。彼も少女を愛したとはムーアが伝記研究で暴露していたが、あんな発明までしていたせいで苦労させられる」
「把握されたのは二〇世紀のはずが、ネオテニーとの戦いであらゆる記録ごと失われていましたからね」嘆いたのは事務総長だ。「ロリテスト大戦で破壊された関連する跡地から資料が再発見されるとは、最悪のタイミングでした」
「あのことを承知しているのは我々を除けば、全能のロリサイで認識した光源氏と若紫だけとされている。彼らのポリシーかなにかの切り札としてか、公表してこなかったのが幸いだが」
「いつ白日の下に晒されるかわかりませんでしたからね」
「そう、ここに到ってはもう遅い。誰も責任を取りたがらんだろう。どのみち少女愛には犠牲になってもらうしかないのだ。大戦で人口も減少し連中には有限空間に無限の生活領域を構築できる超能力もあるが、増えすぎれば不老の人類も管理には不向き。この機会に最後の一匹まで淘汰し尽くせば、処刑する手間も省ける」
「難題は先程も心配したアルベルトたちです。旧人類だけでどうにかできる相手でしょうか」
「光源氏ほどではなかろう」
断じたのは異端審問会長だった。
「こちらにも転リシタンが増えておる、早めに手を打たねば妨害のなくなった
「終わるわけねーだろ」
割り込んできたのは、またもこれまではそこになかった声音だった。今度は情報局長官のものと違って、聞き覚えすらない。
「だ、だだだ誰ですか?」
きょどりまくる事務総長と一緒に会長と長官も周りを見回したが、無機質な廊下をLED照明が浮かび上がらせているだけだ。
見渡せる範囲に、三人以外の人影はない。しばし、総会議場で継続する議論だけが反響する。
唐突に電灯が不自然な点滅をした。
ごく短い暗闇のあと、明かりが戻る。
すると三人の輪に四人目が混ざっていた。いや、そいつと手を繋ぐ小振りな五人目もいる。
ウエットスーツの中年男とビキニ水着の少女。前者は煙草を、後者はロリポップをくわえていた。
――ハンバートとロリータだった。
「ひいぃーっ!」という事務総長のマヌケな悲鳴を最後に、元からいた三人はなす術をなくした。
身動きもしゃべることもできなくされたのだ、まるで金縛りにでも遭ったかのように。
「不幸だが、過去には迫害やらなにやらで滅ぼされた国や民族や思想はあったな」
ハンバートが演説する番だった。
「けど、少女愛のようなもんはそいつらとは異なるぜ。国籍も肌の色も人種も問わねェ、宗教や複雑な思想でもねェ。世界中のどこのどんな人物でも持ちうる恋愛感情っていう単純なきっかけで、誰でもネオテニーになりうるんだ。外見からの見分けもつかねぇし、いくら殺そうが人間がいる限り、一定の割合で必ず生じるのさ」
彼のパートナーが継続した。
「少女愛がなくなる時は、人ができうる限りの思考力を失い人間でなくなったときでしょうよ。膨大な手間と労力と資金を裂いて、人権の理念に矛盾までもたらしてこの迫害を継続するより、少女愛をある程度認めることこそいい社会なのは明白だってのにね」
身長差を補うためにジャンプしながら、ロリータは異端審問会長の頬を口から出したロリポップの棒部分で突っついてからかう。
「どう? 反論ある? あんたちょっとは若い女が好きみたいだし、話させたげる」
「――だ、黙らんか! この変態露出狂破廉恥小悪魔娘めが!!」
顔の動きと発声だけできるようにされた会長は、露出の高い相手の肢体への目のやり場に困りながらも吼えた。
「いずれ科学が発達すれば、ロリ異端者を探知し処理する技術も向上して手間もなくなるはず――もごごごご」
彼の唇をチャックでも閉めるように少女はなぞり、再び沈黙させる。
そして、ハンバートと二人でひとしきり嗤ったあと。大人の方が裁いた。
「人類のためにならねぇ迫害を継続せざるを得ないってか、まさにアビリーンのパラドックスだな。悪法に従う者はやがて人を理不尽に殺す法にも従う。それへの叛乱でこの様だ。だから貴様らこそ、滅ぶべき劣等人種だってんだよ! 旧人類!!」
さらに、情報局長官を睨み付けた。
「あと拷問マニアのサディストくず野郎、てめぇは鏡の国を被害者たちで溢れさせた罪で即刻死刑だ。安心しな、〝これまで自分がしてきた拷問を一瞬のうちに全て味わって死にたくはねぇ〟だろ?」
アビリーンのパラドックスであった。
長官は金縛りを解かれた。
刹那に、この世のものでない悲鳴を上げ、信じがたい形相となって即死した。短時間に彼がどれだけの苦痛を味わったかは、自身と被害者たちだけが知っていた。
――世界連合本部での出来事は、余さず月の
事務総長も異端審問会長も外部に秘話を洩らしたくはなかった。ために、アビリーンのパラドックスで伝えられていたのだ。
月内部の岩石によるドーム状の空間で、スクリーンもなく空中に巨大な映像となって、地球の様相は投影されている。隅にある牢屋に監禁された膨大な数の
やはり、招待は罠だった。
もはや
しかも先客の光源氏と若紫同様の檻に、大人と子供は分けられて隣り合って別々に収容されていた。おまけに、豚箱の外のホール内には数多の鏡騎士団員がロリ彩服を纏った臨戦態勢でいるのだ。
「事務総長の演説には反吐が出たな」
牢屋の真ん前で空中映像に毒づいたのは、白雪姫と手を繋ぐアルベルト・プリンスだった。彼らだけは中世西欧貴族の格好だ。
「最近のテロリを受けて始めて動いたような言い草だった。実際は、少女愛者や容疑者へ秘密裏に違法な拷問や処刑を行っていた公的機関を突き止めたために、大規模な報復をしたのが先陣だというのに。それを受けて取り締まりが厳しくなり、以前から怪しまれていた学園も狙われたんだよ」
彼は
「最終的な通報は、君らをこうして束縛するきっかけ作りのためにわしらが行ったのだがね」
最悪な暴露だった。
いやこの状況では、もはや予感していた者も多かった。証拠に、正午騎士団は怒声を発するのも忘れひたすら絶句していたのだから。
「さて」意に介さず、王子は発表する。「これからハンバートとロリータが人質を連れて総会議場に踵を返し、さらなる反攻を開始する。残存する鏡騎士団も合流してな。くだらぬ会議に出席した各国大使どもを血祭りにあげて、復讐の狼煙を上げるのだ。全世界生中継を通じて、旧人類どもは戦慄するだろう」
「それでどうなるんだ、アル」
呼び掛けたのは、牢獄内で最も前に出ていた光源氏だった。
「おまえたちの世界同時多発テロリがなければ、ここまで事態も悪化しなかったろう!」
「まだ言うか」溜め息をつき、アルベルトは反論する。「裏の醜いやり取りも目撃したろう、最初に我々へ白色テロを仕掛けたのも連中だ。合法的にネオテニーを迫害してきたのだからな。こちらは応戦しただけのこと」
「さっき向こうの部下にも発言させたはずだ」学園長は諦めなかった。「人が人である限りできうる思考には、少女愛を嫌悪する感情もある。彼らをいくら殺しても意味はない!」
「おまえの学園をいただき、改革して対処するさ。全人類に洗脳教育でも施せばいい」
「旧人類が少女愛を悪だと洗脳していることと同等ではないか。方向性が逆なだけだろう。非暴力的な手段を優先すべきなんだ、そうして改善していった前例はある」
「当てはまらんよ。ネオテニーと旧人類とでは、過去の事象と決定的に異なるからな」
強い語調でプリンスは天井を仰ぎ、握っていたボノボの杖を高らかに掲げて宣言する。
「論理超能力だ!」
さらに、旧友を睨みつけた。
「思考実験を現実化できるようになった超能力者なぞ、前例がない。我々ネオテニーは真に進化した新人類なのだ! でなくとも、優遇されてきた同性愛やフィクトセクシャルらとも違う。容認されて遺伝子を残すという生物の基本的目的を達成できるのは我々こそじゃないか!!」
「違うんだ、アル」苦し気に、光源氏は否定しようとした。「ロリサイは、シュレーディンガーが……」
台詞が詰まり、悶えて座り込んでしまう。
隣接する少女用監獄では、若紫が心配そうに岩肌一枚を挟んで大人側へと寄り添っていた。
「口ずさめんのだろう」
憐れむように学園長を見下ろして、アルベルトは看破した。
「その委細を垣間見たのが〝全能の逆説〟を暴走させたきっかけだからな。あのときは、そばにいたからよく記憶しているよ、おまえと若紫は世界を滅ぼしかけた。以来、恐れて才能を制限し、引き金となった真実の記憶も眠らせた」
空中映像を仰視して、彼は続ける。
「奴らも密談していたな。シュレーディンガーがロリサイに関与したところまではつかんでいるが、旧人類は秘密が漏洩しないよう転リシタンまで活用して真相を厳重に隠蔽している。我々でも見通せないほどにだ。よほど不都合なのだろう。おまえにとってもな、キロー。ならば、わしには有益なはず」
数秒待ったが、蹲った光源氏は苦悶しているだけだった。それを再確認してから、アルベルトは空中映像を杖で指すと命じた。
「……もはや、後回しでよかろう。旧人類を根絶やしにさえすれば、万障はなくなる!! 〝シュレーディンガーの猫箱〟も白日の下に曝されるのだ! やれ、我が同志たちよ!!」
向こうで、ロリータとハンバートはだらだらした動作ながら世連事務総長たちを小突いた。おずおずと、怯えっぱなしの事務総長と異端審問会長は総会議場へと歩かされていく。
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