第2話 真夜中!

真夜中、ケビンは目を覚ました。眠っているうちに強風と雨はやんでいていたが、まだ停電は続いている。

ケビンはトイレヘ行きたくなってきた。トイレは、2階へ通じる階段の向こうにあるが、行くのが怖い。いっその事、朝までガマンしてこのまま眠ってしまおうかと思ったが、目がさえてしまい、尿意にょういを抑える事ができなくなってしまう。

ハンスはぐっすり眠っていて、起きだす気配はない。さすがにトイレに行くために起こす訳にもいかない。

「しかたない。1人で行こう!」

ケビンが意を決して懐中電灯を片手に廊下ヘ。左側には玄関、階段があり、右側は窓がある壁だけで、部屋はない。その間の廊下を通るのだが、地獄へ通じる暗黒の道を歩いているような感覚におちいる。

やがてトイレのドアが懐中電灯の光を受けてかすかに映る。

懐中電灯を便器の上にある狭い台ヘ置き、用を済ませる。早くここを出て、ハンスが居る部屋へ戻りたいな。

恐怖心を抑えきれないケビンは、なんとか用をを済ませ、洗面台で手を洗おうとしたとき、背後から、コツコツと足音のような音が聞こえてきた。

「ハンスがトイレヘ来るのかな?」

最初はそう思っていたはずのケビンだったが、音源は2階からしているのを感じた。

そして、ピアノをく音が1回聞こえた。

「ハンスが、こんな真夜中に真っ暗な2階で?」

ケビンは首をかしげていると、今度は階段を降りる足音。ハンスだと思いこんだケビンは、足早にトイレを出て階段下で降りてくるハンスを待つ。

「あれっ、ハンスじゃないぞ!」

ぼやっとした懐中電灯の光に照らされたのは、2つ並んだ球体。そしてドレスっぽい白い服を身にまとった、ややふくよかな女性っぽい体。その体は自ら光を放っているようにも見える。

顔のほうは暗闇に隠れて見えなかったが、明らかにハンスじゃない。ケビンのひたいからどっと汗が噴き出した。

「まさか!!!」

ケビンは暗い廊下を一目散に走った。

これほどの恐怖心を感じたのは生まれて初めてだった。

「あの女性は誰だろう? この洋館にはハンスとボクしか居ないはず。あれっ、部屋はどこだろう?」

ケビンは一瞬あせったが、逃げまどう先にドアを見つけ、開けるとそこは談話室。

「しまった。もう1つ先の部屋だ!!!」

半狂乱はんきょうらん状態のケビンはなんとか寝室へ戻る事ができたが、さっきの恐怖体験で胸の鼓動こどうが止まらない。

「んっ、どうしたの?」

ハンスは物音で目を覚ます。

「起こしちゃったか、申し訳ない。ちょっとトイレへ行ってたんだ!」

ケビンは冷静をよそおいながらベッドヘ駆けこむ。

「なぁんだ、トイレだったんだ!」

寝ぼけまなこだったハンスは再び眠ってしまう。ケビンは少し安堵あんどして眠ろうとしたのもつかの間、廊下でやや軽やかな足音と女性っぽい声がしているのを耳にした。

女性の声は若くて大人びている印象。何て言ってるのかはわからない。

ぼそぼそしゃべる声がだんだんとはしゃいでいるような声に変わっていき、少ししたら静かになった。

「ハンスとボクはこの部屋。他には誰も居ないはず。とゆう事は、あの女性は不審者? それとも幽霊?」

ケビンはベッドの上で想像する。どちらにしても怖すぎて、体の震えが止まらない。なかなか眠れず、ようやく眠ったのは、窓の外が少し明るくなった頃だった!

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