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しかし、どうしてか一人で小さく蹲る少女に声をかけ、面倒な手続きまでして連れて行こうと思ってしまったのだ。
(結局、俺も一人では生きていけないか……)
薄々感じてはいた。
無人島で本当に人の気配すらない中、一人でいると自分がそこに存在しているのか分からなくなるときがある。
自分という存在を確認し合う相手がいないことがこれほど不安だったとは思いもしなかったことだ。真の孤独になればきっと俺も想いにすがりついてしまうのかもしれない。少女の小さな手が改めてそれを教えてくれたような気もした。
「チカゲ、チカゲ!」
のんびりと滝つぼ近くの岩場に寝転がって空を見上げていた俺の名を呼び、さらさらとブロンドの髪を揺らしながらディリアが、ごつごつとした岩場を危うく登ってくる。
「無理するな。俺が降りる」
「平気! これくらい大丈夫だ! そこにいろ」
何度かずるりと足を滑らせ、そのたび俺はひやひやしていたが、何とか手が届くところまでやってきたディリアを俺は無理やり引き上げた。
「で、何のようだ?」
「お腹すいた! お魚とって来るって言って全然帰ってこないじゃないか」
「あぁ、そういえばそうだった」
「全く、チカゲはちゃんと見といてやら無いとどうしようもないな」
ぷくっと美味しそうなふくれっつらを、俺に向けてくるディリアの頭を謝罪の言葉を述べながら撫でる。
あのあと、面倒な手続きは見ず知らずということもあって更に面倒なことになりかけたが、俺がドルフィネの息子の名前を出したことですんなりと終わった。
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