3
不変の法が無くなったのはそれから暫く経ってから。
不変の法がなくなろうと世界は変化し続けようとしていた。
ただ、そんな世界にも変化の中に微妙な不変も現れるようになる。
あれ以来、ちょっとした事で足を止める者が多くなった。ただ、とどまるのではなく、暫くとどまった後、一歩ずつ前へと進むのだ。
俺の連絡を受けたドルフィネは何かを予見していたのか、それとも、それで最後にするつもりだったのか、全てを託す手紙を残していた。
俺がドルフィネについて毒付いたとき、食いついてきたのは彼の息子だったらしい。その息子にドルフィネは表舞台の仕事を譲り、息子はそれが自分の使命だと懸命に働いている。裏の仕事については全てを無に帰したらしく噂も何も全く聞かなくなった。
不変の法が無くなったことで俺の罪も無いものとされ、無罪放免、俺はどこへでも行けと言わんばかりにあるフィルムと引き換えた多額の金とともに街に放り出される。
あの時、ドルフィネが居なくなったことで当然俺の所に、あのクソ真面目な息子が乗り込んできた。信じてもらえるかは分からなかったが俺はありのままを息子に話し、そして写真を現像し渡す。
半信半疑の彼は写真を見て涙を流し、俺をドルフィネの自宅に招いたのだ。
「フィルムと写真をこの金で買う。いいな」
「そりゃ構わないけど、金なんて要らないよ。このことを誰かに喋ると思ってるなら考え過ぎだ。俺は喋らない」
「このようなこと、喋ったところで信じるものは少ないだろうからな、そちらは気にしてはいない。それにこの金は親父がお前にと残していたものだ」
「ドルフィネが、俺に?」
「手紙には謝礼とあった。どういう意味かその時は分からなかったが、今はわかる。恐らく貴様がカメラを使ったことに対しての謝礼だろう。だが、私は貴様がそれほど好きではない。故に何の理由もなしに金を渡したくはないのだ。買い取りの賃金として払ってやる」
「全く、あの親にしてこの子だな。分かった、それじゃ代金としてもらっておくよ。領収書はいるかい?」
「そうだな、一応もらっておこう。……ありがとう」
ドルフィネの家を後にした俺は、暫く街をうろついた。
人が居て気配がそこら中に在る。長年一人暮らしが身に染み付いてしまっているのか、どうも街の騒がしさは肌に合わなかった。
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