「はぁ、アンタ達、なんだか爆弾でも扱うかのようだな」

「失われた過去の遺物で、我々にしてみれば爆弾よりも何が起こるかわからないものだ」

「迷信は信じないんじゃなかったのか?」

「現物がそこに有るのに迷信とは言えないだろう」

「はぁ、全く。そりゃ生きてる人を撮ったことは無いけど、言われてるようなことにはならないと思うけどな。今の時代にあるカメラと変わらないさ」

 チカゲにカメラを渡した防護服の男はチカゲの言葉を聞き、小さく鼻息をフンと響かせる。

「分かるものか。おさめられた人の命で動いているんだ」

 ジャラルミンケースを閉じながらヘルメットの向こうから言う男に、チカゲは少々呆れながらも自分も少し前まではあんなだったのだろうと何も言わずカメラを調整し始めた。

 怯える防護服の男と、心配する黒服の男を部屋の外へと追い出したドルフィネはやれと言葉ではなく顎で命令し、チカゲはファインダーを覗く。

 しかし、彼女がファインダーに舞い降りてくる事は無く時間が過ぎた。

「な? 言った通りだろ」

 カメラを下ろし、ドルフィネの方を見て言うチカゲにドルフィネは頷きながら手を鳴らす。現れたのは複数の警官隊。カメラを取り上げられ、チカゲはため息をついて聞く。

「だから先に言っておいただろう? 勝手に期待して勝手に処刑はないんじゃない?」

「別に貴様を殺すとは言っていないし命令もしてない。早合点するな」

「ふぅん、それじゃ、これはなに?」

「処刑するのではない、貴様を幽閉する」

「幽閉?」

「貴様が会うことの出来るこの私の娘にそっくりな少女を私に会わせるまで貴様を幽閉する」

「会わせる事って……、簡単に言ってくれますけどね、どうしろって言うんだか」

「貴様が捕まえればいい。そして私に引き合わせろ」

「引き合わせろ、ねぇ。支配者って言うのは何でも命令すれば出来ると思ってらっしゃる」

「出来なければ貴様は死ぬ。本来であれば貴様はすでに処刑対象で、この場に居ないはずの存在だ。私の力で生かされているということを分かっておくことだな」

「俺が自ら死を選んだら?」

「それは無いだろう。貴様は幽閉されるが、基本的には自由だ。そして、その生活にはカメラを持つことを許させる。そんな生活の中、貴様が死ぬはず無かろう?」

 企むような嫌な笑みを向けてくるドルフィネに、ため息をつきながらも人に邪魔されず、しかも公認でカメラを弄れるならとチカゲは了承した。

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