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ドルフィネの視線を感じながらもそれを無視しているチカゲは天井を見上げて聞く。
「で、処刑なら何もアンタがここに居なくてもいいだろう? こんな場所で俺に会ってどうするつもりなんだ、アンタは」
「初めは変わり者と話をするだけのつもりだったが、貴様から押収したカメラや写真を見て別のことを聞かなければなんらなくなった」
「カメラと写真を見てだって? どういうことだ?」
「貴様、あのカメラは一体何処で手に入れた」
「……悪いが、その質問に答える気は無い。拷問をしてもいいが、絶対に言わない自信はあるぜ」
「今更貴様に拷問をしようとは思わん。第一、拷問するのであればとっくにしている。答える気が無いならもう聞くまい。だが、こちらについてはどうあっても答えてもらう」
少し声色が低くなったドルフィネの手にあったのは彼女の写真。あの言葉を交わすこともなく、ファインダーを覗けば現れるブロンドの髪の毛を風になびかせて廃墟を跳ねる彼女。
「綺麗だろ? だが、単なる写真だ。それがどうしたんだ」
「そう、単なる写真だ。だが、これは貴様のカメラで撮った変えることの出来ぬフィルムからおこされた写真。つまりは、この時間この場所の事実だ」
「まぁ、そういうことになるけど。それが?」
「問題なのはここに写っている少女だ」
当然、その写真の中で重要とされるのは彼女だろうとわかっていながらも、チカゲはドルフィネに悟られぬよう顔色を変えずに首をかしげた。
「それが? もしかして彼女を、人間を写真に収めたから俺は罰せられるとでも」
「違うな。そうではない」
「じゃぁ、その写真の何が気に入らない?」
「フィルムは見てないが、この写真に記された日時が一番古い。彼女を初めてカメラで撮ったのはこの時か?」
「……あぁ、突然目の前に舞い降りてきたんだ。初めはお化けかと思ったよ」
「そうか。ならば、貴様も要因ということになるな」
「要因? 一体何の話をしている」
「……この写真の少女は、私の娘だ」
「え?」
意外な言葉が飛び出し、ポーカーフェイスを決め込んでいたチカゲも思わず驚きが顔に表れる。自分が少しの憧れと、大きなの愛を傾けていた少女が、影の支配者と呼ばれるドルフィネの娘だと誰が思うだろう。
「アンタ、娘が居たのか。っていうか結婚してるのか?」
「……失礼極まりない男だな。何も私は冷徹だけで生きているわけではない。流れる血は赤い」
言われてたしかにそうだがと思いつつ、驚きはずっと存在し、じっくりとドルフィネを眺めた。
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