「何故何故って質問ばかり。悪いけどその質問には俺は答えられないよ」

「質問に答えられない? 自分のことなのに?」

「自分のことであっても、自分でも分からないってことがあるだろう。今の俺はそんな感じなんだよ。それに、爺さんの質問に答えた所で何かくれるってわけでもないんだろう。さっきも言ったけど俺は面倒なことは嫌いだ」

「そうだな、確かに。クイズ番組とは違うからな。君は切り替えしが早いし、逃げ口上も上手いな。上々。わしの質問には答えられてないが、悪知恵の働く頭の回転がいいだけの馬鹿というわけでもなさそうだ」

「言うに事欠いて馬鹿って。これでもシティ中央を五年分スキップした上に主席卒業してるんだぞ」

「ほぉ、それはすごい。では今は少年でありながら大学生ってことか?」

「いや、必要性を感じなかったから大学にはいってないよ。色んな大学やら機関に誘われたけど、どれもこれも自分の利ばかり追ってるような連中で、なんだかうんざりしたからね」

「ほう、では無職浮浪の者か」

「まさか、ちゃんと働いてるよ。言っただろ、俺は気付いた時には一人だったから生活するためには自分で稼がないと駄目なんだ。そこら辺のやる気のない恵まれた連中と一緒にしないでくれよ。ただ、年齢が年齢だからね、今はしがない清掃員だよ」

「全く、色んな意味で無駄使いで生きておるな。いいだろう、それじゃぁ、わしの質問に答えられるようになるとっておきのアイテムをお前にやるといったらどうする?」

「……見返りもなしに初対面に物をやるっていうのか? 怪しさ爆発だな」

「ふむ、歳相応でないのは扱いにくいな。こういう時、もう少し食いついてくるものじゃろうが」

「残念だけど、俺は騙すより騙される方ではなく、騙すより騙されない方を取るタイプだからね。それに、自己責任と自己防衛、何かあっても誰かが何かをしてくれるわけじゃない。それは身にしみてわかってることだもの」

「そうか、では言い方を変えよう。とっておきのそんじょそこらでは手に入らん一品をわしが一方的に自慢したいのだが来ないか?」

「あはは! すごい方向転換だね。一方的に自慢か。そんなに凄い特別な物なの?」

「あぁ、気になるだろう? 見るだけでも見てみないか、というか見ろ」

 老人の誘いに思わずチカゲは耳を傾ける。怪しいと思いながらも特別なものと聞けば興味を持たないわけが無い。チカゲの様子に老人はニヤリと口元に企むような笑いを浮かべた。

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