メイジック・イズ・ザ・リアル 2
「こらドブカスども。おいたはそこまでよ」
女性の声が、どこからかした。
「「!!!???」」
誓たちを連れ去ろうとしていた二人が驚いて手を止め、立ち上がる。
すると。
「「うぶえぇッッッ!!!???」」
二人は派手に5メートルほど吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がり、股間を上にしてひっくり返ったまま停止した。無駄にテラテラしたサテンのパンティーをみっともなく晒したままビクビクと
「
ラリアットの少女が蔑みに満ちた声で言うと、その身に纏っていた炎が勢いを弱めていく。
……そうして露わになった姿は、少々不思議なものだった。
声を聞く限りでは二十代後半から三十代前半の立派な成人に思えたが、見てくれは完全に小学生のそれだ。満里奈以上に小柄な体格と幼い顔立ちをしている。青ざめた銀色の髪をサイドポニーに括っており、その瞳は満里奈と同じような
服装の方は船乗りめいた白制服──
その制服の上には警察官が使っているような黒いベルトが巻き付けられており、拳銃やナイフやポーチなどが取り付けられていた。履いている靴はゴツゴツとした黒い編み上げブーツで、これはちょうど軍隊が用いるようなものである。
「う……ぐ」
うめき声が聞こえた。
ゴスロリに先んじてふらふらと立ち上がった黒ギャルは、ぶん殴られた首をさすりながら、
「い、いきなり何すんだよ!! てか誰!?」
「何って、ちょっと魔法が使えるからってイキり散らかしてるガキどもがいたから、大人として教育をしてやろうと思ってね」
「誰って聞いてんだけど!!」
「あらごめんなさぁい。アタシは国際連合直属魔法研究・規制特務委員会“
「ねえ……逃げ、るよ……」
遅れて立ち上がったゴスロリが、黒ギャルの服の裾を摘みながら言った。
「ANNAって……聞いたことあるもの。魔法使いの警察みたいなやつでしょ……」
「はいその通り。魔法で悪いことをする奴らから市民の安寧と秩序を守るのがアタシの仕事。そしてあんたたちは今、魔法使いではない一般市民に危害を加えたことで『現行犯』になったわけ。つまり実力を以て『逮捕』することができるのよ、分かる?」
子供を諭すかのように夏海は語った。
誓はそれを聞いて安堵した……よかった。祈りが神様に届いたのだ。
一方“狩る者”から“狩られる者”に転落した黒ギャルは逆上し、顔を真っ赤にしながらステッキを夏海に向けた。
その先端から
「…………ふっ」
攻撃の対象とされた夏海は、不敵な笑みを漏らすと。
「歯向かわずに大人しくしておけば、無駄に痛い目を見ずに済むのに」
――その碧眼を輝かせ、四肢から再び碧い爆炎を噴き出した!!
炎は素早く彼女の右手に集まっていき、燃え盛る細長い塊と化す。
相手の攻撃が来る前に彼女はそれを振り上げ、ムチのように
そして!!
「ぶっ飛べ!〈ブラスティングウィップ〉!!」
爆、発!!!!!!
炎のムチは地面に当たると同時に炸裂し、黒ギャルたちに強烈な爆風を浴びせた!
二人の身体は呆気なく、サッカーボールのように15メートル近くも吹っ飛ばされていく!
あまりにも圧倒的な威力……黒ギャルたちはボロ雑巾同然の姿になりつつ顔を上げた。
だが夏海が再び右手に爆炎を集め、情け容赦ない二撃目の用意をして見せると、とうとう戦意を失って顔をサーッと青ざめさせ、よたよたと走り去っていった。
「そっちは別の小隊が仕事中だったと思うんだケド……まー
そう独り言ちて二人を見逃し、炎を消して、動けないままの誓たちに歩み寄ってくる。
そして二人にかけられた手錠を素手で破壊して外していく。
「もう大丈夫よ。怪我とかはない?」
「「ありがとうございましたっ!!」」
「いーのいーの、仕事なんだから。それと顔拭きなさい」
夏海は柔和な微笑みを浮かべながら、ポーチからティッシュを取り出して渡してきた。
「ほらこれ使って。お顔がくしゃくしゃよ」
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