第3話 生徒会 その二

「63年度第一回円卓会議開始!」

生徒会長二階堂栞先輩はノリノリでした。

「まずは6月の体育祭、と言いたいところだが。」

「恒例の生徒会交流会ですね。」結論を言ったのは三橋さん。「まさか本当にやるとは思いませんでした。」

「だからやりますぅって去年話したじゃん。」美里先輩はご機嫌斜め。

「姉さんがいつものようにからかってると思いました。」姉妹って本当にそうなの?

「はいはい、本題入るよ。」これが会長からのサイン。


生徒会の仕事は想像以上に惨烈だった。

早速やらないといけないのは部活関係、人員の確認そして記録。この学校は名門とは言えないけど、大きいではある、だから部活もやたらと多い、計92個、完全によりどりみどり。

現状5人で分担しても、一人19個チェックしないといけない。

そして生徒会交流会、2日1泊の恒例イベント、なんと経費は校長先生が出すらしい。開催時間はゴールデンウィーク。

その次は中間試験。

「今回は特別に、憂也くんと彩花ちゃんは学年トップ15で合格!」と生徒会長が大目に見てやったけど、1年はAからF組、合計186人、つまりクラスでトップ3に入ってくださいと言う意味。彩花は大丈夫そうだけど、私には無理難題だよ。

その後は体育祭、毎年前半一番大きいイベント。

体育祭が終わったら夏休みまで特に予定ないのは助かる。でも期末試験あるよね。


「なんだ、勉強苦手なの?」会長が驚いたような顔して「教えてあげてもいいよ。」

私の顔に気づいたわけね、ここは素直に好意を受けよう。

「教えていただけると助かります。私は勉強得意ではないので。」

「私も少し心細いかもしれません。」彩花も笑顔見せつづ。

こう言うけど彩花は元々成績いいから、ちゃんと勉強すれば合格は余裕だと思う。

「じゃ千里ちゃんよろしくね。」さらっと後輩に自分が言い出したことを投げる生徒会長である。

美里先輩はお手上げのようなため息をついた。

「よろしくありません。」即反対意見出した三橋さん。

言葉の代わりに、会長はただニヤニヤ三橋さんを眺めるだけで時間が過ぎてゆく。

少しの沈黙を破ったのも、三橋さんでした。

「はい、わかりました。」


会議は想像より早く終わった、部活の件について、1年生の私たち3人に任されたのは独立した南館のみ、もって30個で限界。学校は部活のために東西南北館作っていて、独立のは南館、一番大きのは北館、分館2つもついてる。そして次に大きのは東館、そっちは運動部専用、しかもジム自前。南館も分館2つあるけど、校長先生の意向で1つは学校の図書館になった、そうです、「図書室」と言うものははありません。

初日の昼休みは本校舎の一部しか回らなかった、今度捜査範囲広けよう、居心地休み場、見つかるといいな。


会議が終わったあと、三橋さん私と彩花を呼び止めた。

「明日昼生徒会室集合、まず二人と状況把握したい。食べ物持ってきていい。部活の件だけど、栗宮さんは1階、私は2階、3階と以上は笹木さんで、明日もう一度言うからとりあえず頭の隅でも入れといて。」

この人が本当に1年生か不思議だ。


でも不思議に思ったことはここで終わりじゃなかった。

「ちょっとスーパーよってこよう。」と彩花が嬉しそうに言う。

「へー鈴さんに言った?」

栗宮家の買い出し要員は彩花の母親栗宮鈴さんです、彩花の姉である栗宮智花は基本夜勤なので買い出しはしない。長い間にお世話になった栗宮家はもう完全に仲良くなってる、そして鈴さんと智姉になった。

「大丈夫、今日の夕飯は笹木家で食べる。由香里さんも知ってるよ。」

いつ由香里さんとメール交換したのも分からない彩花が私にスマホ画面を見せた。

「そうか、なに買うの?」

「回って見ないと分からないよ。」

聞くまでもないか。


時々、時計の針が一瞬遡るような気のせいあったりしませんか?

何故か買い物の話題になった。

もし過去に戻れる力を持っていたら、私は多分嘘つかない約束はしなかったかもしれない。

中学も友人待ち部じゃなく、普通の部活に入って、もう少し青春楽しめたいかもしれない。

そしていろんなところ回ってみたい、温泉、山、海、もしかしたら海外まで。

目的のないことを考えてたら、気づけばもう晩飯。

由香里さんが今朝彩花に「料理教えてください」とのことだ。

私は別に不味いとか言ったことない、世話になった身だから、全部食べるのは当たり前だ。

とは言え、彩花が教えてくれるなら、こっちにとっても都合のいいこと。

二人の取引はまだ続きがあるらしい、詳しいことは分からない。


夕飯はカレーになりました。

なんとなく、買い物と聞いた時から分かったような気がした。


「いただきます。」

私は料理音痴というわけではない、作れないとこはないが、こだわりや好みはある、でも単純に食えればいいと思った派です。

カレーについて、色が濃いめのほうが好き。薄くなると、何が消えそうでその分食欲も落ちる。

「前より美味くなった。」安全で事実としての評価。


こうやって3人がテーブルに囲んで食事するのはいいことだ。

過去の5年間、栗宮家に行く時以外、私は1人でこの4LDKで食事していた。寂しくかんじたことはないけど、ただ無駄に空間が余るのはげせなかった。いにしえまで遡れば、私が弟や妹のいる未来の可能性を考えて4LDKを建てたわけだ。

今となったら、お姉さんでも悪くないかもしれない、少し不思議に思った。


由香里さんと彩花は先からなにを話しているのがよくわからない、テーブルの向こう側とは言え、ささやくようなわざと音抑えて話している、たまにニヤニヤでこっち見たりする。

食事が終わっても話は終われそうにない、私はそのまま皿などの片付けと洗浄まで移った。


話の内容が全く気にしないのは嘘です。


由香里さんは由香里さんで、顔変わるのはやし、キラキラしてるのに急に暗くなる、身体の動きも豊富。

面白い人だ。

彩花は彩花で、年頃は乙女。先から何を話してるかはわからないけど、明らかに照れてる。

顔にはあんまり表現しないけど、少しは赤くはなるけど、特徴的なのは目、照れる時だけ、目の動きが早くなる。

先からなんが変わった、2人がずっと見つめ合ってるような…

何の話だろう?

由香里さんが指を自分の口に当て、彩花は視線をその指に集中した。

指は口からゆっくり、顎を通して、白い首を渡り、桜色の襟に登る、胸元に向かい、山を超え、腰のくびれに届いて、更の下に沈もうと…


彩花の表情から見ると、多分あそこが終着駅。

まったく、何してるのか。


彩花が帰る時、また由香里さんから手のひらサイズのプレゼントもらった。よく見たら、前回収した箱です、無論、中身健在。

知らぬが仏。



今日の彩花も早かった。朝起きて見たら、由香里さんと楽しくお化粧の話してる。

女の子にとって見た目も、大事だよね!

振り返ると、彩花は中学卒業前まで短髪だった、柔道部入ってたこともあって、短髪のほうが動きやすいでしょう。小学の時最初は男だと思ってた記憶もある。

彩花もだいぶ女の子らしくなった。


昼休みは生徒会室で打ち合わせ。

でも、「テストプリント配られると思わなかった。」

私と彩花はなんとなく三橋さんの左右に分けて座った。

「それ昼飯食べてからでいい、あくまでもあんたたちのレベルを把握するため。」と言いつづ、三橋さんはコンビニで買ったレタスサンドと麦茶を置いた。

私が弁当箱開けた瞬間、彼女の顔は一瞬イラッと見えた。

彩花もそれを気づいたようで「よかったらどうぞ。」と自分の弁当を差し出し、さり気なくもう一膳の箸を渡そうとした。

予備の箸か…普通の彩花なら予備を用意するわけがない。

誰からの進言はもう想像がつくけどね。

「む…」なぜか三橋さんはこっちに目を向けた。

「おすすめはだし巻きたまごです。」

「…ありがとう…ございます…」彼女は箸を受け取った。

彩花は弁当をもちょい三橋さんのところに寄せた。


人がものを食べてる様子をジロジロ見るのは趣味じゃない、でもよく考えたら、これ、賄賂じゃないか。

「どう?」

「美味しいです…」

「よかった。どんどん食べてね、私1人じゃ食べきれないし。」彩花は更に攻めた。

嘘つけ、私より食べれるくせに。

でもー

私は財布から300円出して、勝手に三橋さんの前に置いた。

「交換な。」と、一口食べた弁当を彩花に渡した同時に、サンドを取った。

「え?いいよそんな…」

「弁当はこれ。」私は目をプリントに移しつづこう言った。

丁寧に食事をするのはきっと今の三橋さんみたい食べ方を言っている。彩花もそれに合わせたようにゆっくり食べてる。

逆に私は5分前サンド終わらしてプリントをじーっと見ている。


三橋さんが出したお題は難しかった、そもそも進度外のものが混ざってる。

「栗宮さんは大丈夫ですね、でも笹木さん、これはなんですか。」

語尾は疑問形じゃなかった。

「すいません。」謝れば成績上がる方法知りたい。

「あんたはね、は…」三橋さんのため息は長め。

「新学期早々でよかった、普段は栗宮さんに任してもいいですか?多分そうしてきたでしょうけど。」

その通りです、彩花と同じ学校通えるためにかなりお世話になってた。

「はい、任せてください。」

「あと、来週から私と一緒に予習してください、分からないところも一緒に見るから。時間は放課後でいいよね?」

「「はい。」」

「そして部活の件、再来週まで動かなくてもいいです。体験入部は2週間ありますが、最後ギリギリまで決められない人なんで死ぬほど多いです、今は一回どんな部活あるか確認するだけでいいです、要は生徒会の人として認識されるためもです。」

この人は本当に1年生なんだ。

「あとは、今携帯持ってますか?もし予定変更がありましたら連絡します。」

可愛い星型のストラップか、しかも先月の最新機種。

私と彩花が携帯出した時も、三橋さんはイラッとした。

別にストラップがお揃いで許してほしいけどな。

「連絡先は先輩たちに教えてもいいですか?」

「いいですよ。」

「いいですよ、むしろお願いします。」私も異議なし。

「弁当、ありがとうございました。」わざわざおじぎする三橋さんでした。



今日はとりあえずいいと思って、放課後そのまま帰宅になったが、9時くらいになったら、続々メールが来た。

最初は副会長美里先輩から。

>三橋美里です、よろしくね。

  笹木憂也です、よろしくお願いします。

うむ、普通のメールですね。


約10分後、会長二階堂栞先輩からのメールも来た。

>こんばんは、二階堂栞と申します、よろしくお願いします。

  こんばんは、笹木憂也です、よろしくお願いします。

誰だよ!


ここで終わると思ったけど、時は夜11時、またメールが来た。

>オイッス、岩槻覚です、よろしく!

  笹木憂也です、よろしくお願いします。

本当に誰だよ!

>ああ、知ってる知ってる、彼女にコンドムあげたやつだよね!すーごい!

この人…予想通りヤバそうじゃねえか!

>栗宮ちゃんもすごいよね、でも話しかけても返事くれないし。俺も彼女欲しいな…

彩花はいつも正解を選ぶ。

>そうだ笹木くん、1年生の中ほかに可愛い子いる?紹介してくれない?

おいおい大丈夫か日本高校生代表?!

>できれば髪の長くて、そう!メガネ子がいい。

  すいません、まだそんなに知り合いいません。

>そうか、まだ3日だもんな、じゃな、バイト中なんで。


この時間でバイト?


何を言えばいいのか、何も言わなくてもいいよね。

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