惑わし
ちゅんちゅん…。鳥の鳴き声に僕は起きる。
少しだけ身体を起こしてカーテンを開けると、朝日が差し込む。
今日は大学が休みなのでもう少しだけ眠ようとまた横になろうとする。
「…見てない」
がばっと身体を起こす。
(いつもなら見るはずなのに、今日は見てない)
何故か残念がる僕の心を不思議に思った。
同時に、昨日の"お願い助けて"の言葉が引っかかる。
(華に何かあった?だけど、夢の中しかいないはずなのに、
助けを必要とする事があるんだろうか?)
いつの間にか頭の中は華のことを考え出す。
だけど、確認するにしても、何も確認する方法がない。
(所詮夢の中だ…。)
そう思うことしかできない。
すると、
"お願い、こっちに来て、早く!助けて…。"
また切羽詰まった声が聞こえる。
(やっぱり華の声だ…。僕の夢の中で、何かが起きている?)
そう考えた僕は行動に移す。
早く夢に行く方法、それは…。
それを実行するために僕は急いで、キッチンにある棚に移動する。
キッチンには母がいたが、それよりも…。
「あっ、あった!」
一睡眠薬ーとラベルが貼られた瓶を持つと、
「…春斗!何してるの!」
母はまた睡眠薬を飲もうとしている僕を叱る。
だけどその言葉を無視し
僕は瓶から何錠か出し、冷蔵庫にある水を取り出すとゴクッと飲む。
「春斗!」
止めようとする母を後目に僕の身体は床に落ちる。
気づけば暗闇にいた。
あの夢だ!入れたのだ。
白い光が見える。
あの光の先に華はいる。
僕は急いで白い光に手を伸ばす。
白い世界に僕は再び降り立つ。
「華?…華、君は一体どこにいるんだ!」
僕はあたりを見渡して、叫ぶ。
だが、華の存在を見つけることはできない。
(どこにいるんだ!)
必死にあたりを見渡す。
「ここよ!あなたの後ろよ!」
華の声に従い、振り向くと華が居た。
「華!大丈夫か?何かあったのか?」
僕は華の肩を掴み、何があったのか問う。
「ごめんね。…ありがとう」
華は、妖艶な笑みを浮かべながら答える。
何を言われているのか、理解に時間がかかる。
言葉を発したくても、言葉が見つからない。
ただ一瞬華の眼が、光ったような気がする。
その眼は僕の身体に恐怖心を募らせる。
華は僕に抱きついてきた。
「私が怖い?ふふっ。それで良いの、それが吸夢の役目だもん。」
華は淡々と自分の正体を明かす。
僕は、自分の耳を疑った。
「吸…夢…?」
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