淡い期待

る..。は…る…。はると。春斗!

僕を呼ぶ声が聴こえる。重いまぶたを必死に開け、周りを見る。

母がほっとしている様子が見える。

どうやら僕はあのまま床で寝てしまっていたようだ。

「良かった!びっくりしたのよ。キッチンに入ったら、春斗がいて、睡眠薬も転がってるもんだから、死んじゃったかと思ったんだからね。」母は、怒りながらも安心したように言った。

どうやら母の話に寄ると睡眠薬を飲んだ後僕は床に仰向けに寝ていたらしい。

(それは勘違いもするよな。)

と心のなかで苦笑いしながら、僕は昨日の事を考える。

華の顔を見るたびに心が熱くなって行くのを感じる。

やはり僕は…。

(違う…。そんなこと絶対にありえない。)

自分自身に言い聞かせ、準備をする。

鏡を見ると、少しだけ疲れた顔をしていた。それでも水で顔を洗い。誤魔化す。


昨日より早めに出ると、既に二人は来ていた。

「春斗…なんかあった?なんか疲れてるみたいだけど。」

茜は心配そうに聞いてくる。

やはり顔に出てるか。

「いや…。ちょっと考え事してて、でも大丈夫だから」

だが二人に心配させまいと秘密にする。

「気をつけろよ。まだまだ大学は、始まったばっかなんだから」

時雨も心配してくれている。

「あーそうやって、また、時雨は、春斗ばっか甘やかすんだから。」

茜はぷくっと頬を膨らませ拗ねた顔をを見せる。

「何だ。嫉妬してんのか、そうやっても可愛くなんかないぞ。」

時雨は笑いながら、茜をおちょくる。

茜は更に拗ねたのか

「もう知らない!」

と言って、

スタスタと一人で行ってしまう。

二人のやり取りを見て、僕は茜の気持ちに気づいているから、複雑な気持ちになってしまう。

茜は多分時雨のことが好きなんだ…。

「春斗ー。俺たちもさっさと行こうぜ。」

と茜のあとに続く。

僕は軽く、「うん」と返事をし、二人の後に付いて行く。



講義も半ば終わり。学食を食べようと三人で向かっている。

人とすれ違いざま突然女子と肩がぶつかってしまった。

「ごめんなさい。よそ見をしてて、」

聞き覚えのある声をしていた。

顔を上げる人物に僕の鼓動は早くなっていくのを感じる。

「あ…あの!」

僕は声をかけようとしたがそそくさと逃げてしまった。

「何?ナンパでもしようとしてるの?」

茜は呆れたような顔で質問をする。

「違うよ。そんなんじゃない。」

だってあの顔は、

【華に瓜二つだったから】


学食を食べる時、僕はさっきの女の子の話を二人にする。

「ふーん。つまり、夢に出でくる華って子とさっきぶつかった女の子が瓜二つだったてこと?、そんな事あるわけ無いでしょう。

単なる他人の空似よ。」

オムライスを頬張りながら言う。

やはり茜は信じてくれなさそうだ。

「春斗…。お前やっば疲れてんだろ。今日は帰ったら、早く寝ろ。」

肝心の時雨も心配が上回っていて、信じてくれなさそうだ。

「本当だって、僕はっきり覚えてるだから、きっとあれは、華だったんだよ!」

僕は少しだけ声が大きくなっていき、周りの視線が痛かったので、

「だ、だからあの子は華だったんだよ」

直ぐに小声で言う。

「そう言われてもね、にわかに信じがたいのよね。

だって、夢の中でしょ。きっと思い過ごしよ。」

ここまで茜に言われると、あれが華だという自身がなくなる。

(茜の言うとおり、あれは他人の空似だ)

そう思うことにした。

午後は釈然としない気持ちで、残りの講義を受ける


"お願い、早く来て!"

切羽詰まったような声が聞こえた。

「どうしたの?」

「何してるんだ?早く帰ろうぜ。」

二人の僕を呼ぶ声が聞こえる。

「なんでもないよ。」

僕は、気にせず三人で家まで帰る。


「あれは一体…。」

あれから家に帰って、いつもどおり過ごしていた。

しかし、ベットに入った瞬間、あの声の意図が気になりだし、

考え込む。

結局何もわからずじまいで仕方なく、眠る。

(また、あの夢を見るのかな?)

何故か僕は淡い期待を胸に抱いている。

この気持ちに目を背け、瞼を閉じる

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