名前

瞼が妙に熱い。

ゆっくりと目を開けると、陽の光が僕の顔に、差し掛かっている。

…朝だ。

「変な夢を見たな」

僕は頭を掻きながら昨日のことを考える。

あの夢は妙に本当リアルだった。

不思議なことに僕の頭は少女の事で埋め尽くされていた。

(彼女の事を考えると、顔が妙に熱くなる。)

おかしい、たった一回、それも夢で出会った少女に。

何回も心のなかで唱える。あれは夢なのだと。

だからこの想いも勘違いだ。だって僕は…

「春斗〜茜ちゃんと時雨くんが迎えに来ているわよ。早く支度しないと遅れるわよ」

暫く考え込んでいると、母が僕を呼ぶ声が聴こえる。

「そうだ、今日は入学式だ!」

僕は慌てて、準備をし家を出ると、二人が待っていた。

会ってそうそう、

「春斗が遅いなんて珍しい〜。」

と時雨は物珍しそうに言う。

「早く行こうよ!」

と、茜は忙しなく言う。

ごめんと、僕は二人に謝ると、三人で大学に急いで向かう。

その後、入学式にぎりぎり間に合い、

無事に終わった。


明日から新しい大学生活が始まる。

僕達は胸に期待を膨らませながら、帰路に向かう。

今日も早く寝るよう父に言われたため、早めにベットに潜る。

もしかしたらまた、あの子の夢を見れるかもしれない。

そんな事を思うようになっていた。

(なぜここまで彼女に心を奪われているんだ。)

不思議に思う気持ちもあるが、

会いたいという気持ちが膨らんで、余計に早く寝ようとしている。

僕は瞼を落とす。まるでそれが、合図かのように直ぐに夢に入る

また白い光に、導かれ進んでいく。

白い光に触れると壁一面白の世界になる。

周りを見渡すと彼女はいた。

僕は徐々に、彼女に近づいていく。

「また会えたね。今日も一個質問に答えてあげるよ。」

彼女はニッコリと微笑む。

その笑顔にドキッとしながらも、

「君の名前を知りたい。」

僕は昨日、聞きそびれた質問をする。

「名前か...名前はね華だよ。華やかの華って書いて、華。」

と答える。華か...

(名前はちゃんとあるんだな...)

と呑気に考えると、

「じゃあ今日はここまで、またね」

とまた急に話を終えてしまう。

このままでは、また明日になるまで、華には会えない。

不思議と僕は、華ともう少しだけ居たいという気持ちが湧く。

「もうちょっとだけ、居てもだめかな?」

気付けば華に懇願している。

だけど、その思いが伝わるわけもなく、

「駄目、今日はこれでおしまい。また明日。」

バイバイ…彼女は手を降る。

それが合図のように夢の中で瞼が閉じる。

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