10 最悪な日

 これは人に聞かせるような話では無いのかもしれない。

 原因を話してしまえば至って簡単。


 私のせい。


 それだけの事。



「ゆめって普通に調子乗りすぎだよね」

「有名だからって図に乗りすぎ」

「上から目線って言うか」

「別に嫌いってわけじゃないけど」

「えー?私は嫌いだけどな」

「うん私も正直きらいかなあ」

「あ、そうなんだ。そんな嫌われてるんだゆめって」


 酷く虚しく言葉を並べる人達。

 そんな話は私に届くような声で繰り広げられる。

 しかし、そんなのもの耐えれる。というか耐えてきた。



「あんたのせいで私彼氏と別れたんだけど」


 そんなこと私に言われてもと言いたい。


「可愛いからってふざけないでよ」


 泣きながら言う人。わらいながら吐き捨てるように言う人。


「死ね」


 単純な暴言を私にぶつける人。


 色んな人を見てきた。


 その度、私には傷がつき、痛む。

 そして、応急処置をするかのように、他の人に頼る。

 そんなことの繰り返し。


 でもそんなことで治るような傷なわけがなかった。

 古傷が痛む。そんなことじゃない。

 古傷に傷を重ねるような毎日。


 散々だった。


 そして、私をどん底に落とす出来事か起きたのだ。




 私は放課後、仲の良い友達に遊びに誘われた。

 わたしの趣味はゲームで妹とよくやっていたためそれなりには上手い。

 そのため、ゲーム友達も何人かいて、その人達は私の容姿や友人関係を求めて仲良くなった人達ではなく、私自身を求めてる気がして、私は勝手にその友達には気を許していた。


 遊ぶ内容はもちろんゲーム。

 家庭用ゲームでみんなで遊ぼうという名目だった。


 私は気の許せる友達たちと遊べると言うだけで気分が少し上がっていた。


 家のチャイムを鳴らすと聞きなれたゲーム友達の声。

 ドアの鍵が空き、ドアを開けるとそこにはゲーム友だちたちの姿。


 ──そのはずだった。


 最初から分かっていたはずだったんだ。

 私に普通の高校生が過ごしているような青春は送れない。

 こんな能力とか、こんな容姿のせいで。


 ドアを開けて待っていたのはガタイのいい男子高校生2人とわたしの悪口を言っていた女子2人、そして私のゲーム友達1人。


 そこからはあまり覚えていない。


 思い出したくない。


 気づいたら私はベッドに連れていかれていて、服を脱がされていた。

 なにやら喋っている声と、カメラのシャッター音が入り交じっている。

 視界は涙か何かでボヤけよく見えない。


 強姦いじめ


 私はその時、落ち着いて事実を素直に受け止めた。

 私の下腹部にはじんわりと痛みが残っていて、私の上に馬乗りになっている男には私の腕が抑えられていた。

 身動きが取れず為す術はない。

 女2人は写真を撮るのに夢中でもう1人の男は私の股の間を弄っていた。


 気持ち悪いとか、悲しいとかそんな感情じゃなかったと思う。

 感情は何も感じなかった。

 ただただ何も感じず、時間だけが過ぎるのを待っていた。



 何時間か経った後、私の意識が朦朧としている中、1人の女の子──ゲーム友達が私に言った。


「ごめんね」


 そんなことばその時の私に響くわけが無いのにただただその言葉を連呼していた。

 私はそんな言葉を全く真に受けず淡々と服を来てゲーム友達の家を出た。


 家を出て冷静になった私は色々な事態を考えた。

 私の全裸の写真を良いように使ってくるんじゃないか。

 あるいは、ただばらまいて嫌がらせをするんじゃないか。


 私がどんな悪いことをした?


 生きてること自体が罪なのか。


 私を本当に襲ったのは男でも悲しみでもなく、そんな懸念。

 気づいたら手首には切傷がついていた。

 リストカットと言うやつだ。

 私の腕から出る血を見て私は少し正気を取り戻す。

 正気を取り戻した私はある考えに至った。


 自殺しよう。


 そう思い立って、立っていたのは駅のホーム。

 あと一歩踏み出せば線路に落ち、丁度電車が来れば轢かれることが出来る。


 なのに気づいたら実家の前だ。

 なんだって言うんだ。

 家族なら慰めてくれるんじゃないかって、そんな淡い妄想を抱いてドアを開けたんだ。


 そして私はゆいに泣きついた。


 ──やっぱり私は結が好きなのかもしれない。

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私と妹とそれから姉。 しう @Shiu_41

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